世界石巡礼ブログ 韓国
🔴2009/04/02 釜山の海岸寺院
釜山港の観光マップを見ていると、海岸の寺院の写真が目に飛び込んできた。 海東龍宮寺と呼ばれたお寺で、波が打ち砕ける海岸の奇岩怪石の上に建立されているらしい。 また、東海に昇るご来光の光景が非常に有名だという。私は急遽、海東龍宮寺へ行く事にした。
釜山の地下鉄で中央洞から海雲台へ、そこから181番のバスで30分ほどで海東龍宮寺の入り口に着いた。 満開の桜並木道を登っていると何台もの観光バスが私達を追い越してゆく。かなりの観光地のようだ。 丘から少し下ると、大きな駐車場が現われ、参道には露天商が並んでいた。 洞窟状のトンネルを潜り、階段を少し下りてゆくと突然岩場に建てられた海東龍宮寺が現われた。
海と岩と寺院、なんとも不思議なバランスを持った光景だろう。 境内には、あちらこちらで五体投地をしながら礼拝している人々の姿を見かけた。 韓国の人達は仏教に対して篤い信仰心を感じさせる。人々は、お寺から少し離れた海沿いに歩いていた。 そこは、ご来光を迎える場所で、東の太陽が昇るところに「日出岩」と彫られた岩が置かれていた。
人々はご来光を遥拝する場所で熱心に祈りを捧げていた。 お寺の背後に奇妙な石積みがあった。まるでストゥーパを思わせる形をしている。 しかし、期待していた奇岩怪石はそれほど見当たらなかった。
海東龍宮寺を後にしながら石段を上がって、再度振り返ってお寺を眺めた時、この光景と似ている光景を思い起こした。 そう、それは高知県の足摺半島にある竜宮神社である。
東の海からやってくるご来光が、龍宮との関係性があるとすれば、海東龍宮寺の遥か海の東にある日本との関連性を暗示させるものがある。韓国から見れば日本は、まさに日いづる国にある。
光州にて 郡司拝
🔴2009/04/04 月出山の佛子
4月3日、全羅南道にある奇岩の山で国立公園になっている月出山を登拝した。
早朝6時に起床、月出山登山口までタクシーで移動し、7時に登山を開始する。 麓に大きな寺院がありそこから登山道が始まっていた。次第に、道は険しくなってゆく。 あるポイントで、狭い道を選んだ結果、ルートを間違えてしまう。 しかし、そのお陰で瞑想道場で修行する僧侶と出会うことができた。 僧侶は、道場に案内しお茶をご馳走してくれた。 筆談で分かったことは、彼は37歳、佛子になって14年目。この小さな道場に一人で住みながら1000日間の修行をしている最中とのこと。 これまでに一年間が過ぎたという。驚いたのは、一日のほとんどを瞑想を続けていて睡眠時間は1~2時間程度だという。道場の周囲には、奇岩が起立していて何とも素晴らしい環境に道場を造ったものだと感心した。 別れ際に僧侶がいつも瞑想している岩と一緒の写真を撮らせていただいた。
その後、岩場のアップダウンを繰り返しながら、月出山を西から東に向かって縦走する。陽石や岩山の存在に圧倒されながら、ようやく天皇峰(808m)に辿り着くことができた。 この山は、自然の造形美はもちろんのこと、岩の博物館といった印象を強く感じた。
モンゴル出発前夜 ソウルにて 郡司 拝
🔴2009/04/06 仁王山の霊場
全羅南道からソウルに入った翌日、私はソウル市街の北西にある仁王山(808m)を目指した。
4月5日早朝、 地下鉄の独立門駅で降りると、リュック姿の中高年の姿が目立った。 この仁王山は、山全体が花崗岩の岩山で登山者達にとって人気のスポットのようだ。 ただ、この山は韓国軍の施設があるらしく登山ルートのポイントごとに若い兵士が監視をしていて、どこか物騒な印象を受けた。 仁王山山頂から下山し、麓の道を北に少し歩くと石窟庵入口の看板を見つけた。 これはと思い、私はさっそく入り口から急な石段を上がって行った。一度、山頂から下山してまた登るのはかなりこたえた。 しかし、途中に巨岩が見えてくるとなぜか元気になっている自分がいた。 三角状の石積みが現われ、しばらくすると巨岩が重なってできた岩屋が現われた。
岩屋の入口には「仁王山石窟庵」とあった。岩屋のスペースは畳6畳くらいはあるだろうか。 洞窟の中を覗くと、いくつもの仏像が安置され花の装飾がきれいに施されていた。 ちょうど、僧侶がご祈祷をしているらしく、二人の女性が読経のもと礼拝を繰り返していた。
読経はまるで謡のように聞こえて何とも心地よい。 このような岩屋信仰は、日本とも共通するものを感じる。 しかし、岩の隙間に現代風のアルミのドアがあったり、僧侶の岩内の住居にテレビや冷蔵庫が あることに、どこか違和感を感じた。 こんな、岩屋の中までオール電化にしなくても・・・・。 ウランバートルにて 郡司 拝
追伸:ソウル発券で予定していた世界1周チケット購入を断念することにしました。 その理由は、世界1周チケットにはあまりにもルールが多く、それのルールに従うために、必要のない フライトや行程を組まなくてはいけないということ。この旅の計画をそのチケットのルールに合わせると いう本末転倒な結果になりそうだからです。今後のスケジュールは旅の中で、随時ご報告します。
🔴2009/04/18 江華島のドルメン、舞踊公演
4月10日、モンゴルから再び韓国に入り、江華島(カンファド)へ向かった。 江華島は、ソウルから北にバスで約70分の処にあり、古くは軍事的要衝で開国を迫る西欧列強や日本との戦いの舞台にもなっていた。また、古代より人々が住み、高麗時代には都が置かれ歴史的な遺跡が多く高麗人参の栽培地でも知られている。 ここにはユネスコの世界遺産に登録された支石墓がある。支石墓とは、石で造られた古代の墓でコインドルまたはドルメンとも呼ばれている。ドルメン好きな私としては、どうしても江華島の支石墓を見たかった。なぜなら、江華島のドルメンは韓国で最も大きい支石墓があるからだ。江華島バスターミナルからタクシ-で支石墓を訪ねることにした。タクシードライバーに、大きなドルメンまで頼むと10分ほどでその支石墓に連れて行ってくれた。さすが、世界遺産に登録されているだけあってドルメンは整備された公園の中にあった。
狭い駐車場には、何台もの観光バスが停まっている。ドルメンは公園の外れにあり近づくとその大きさに驚く。 高さ2.5m、長さ7.1m、幅が5,5mの石組みが、フェンスの中に佇んでいるのだ。しばらくドルメンを撮影していると、石に触れたいという衝動が訪れ、思わずフェンスの中に入ってしまった。
ドルメンの穴を潜りながら石に触れると、ひんやりとした石肌が伝わってきた。 この石の遺構を造った人々と奈良の石舞台を造った人々は、仲間だったに違いない。 そんな事を思いながら、江華島を後にする。
その晩、我々は世宗(セジョン)文化会館で韓国を代表するコリオグラファーで舞踊家の金梅子(キム・メジャ)さんの舞踊公演を拝見した。
金さんとは、12年ほど前に行われた伊勢・猿田彦神社のご遷座祭で行われた「おひらききまつり」をご縁に出会い、沖縄の調査ツアーにもご一緒させて頂いていた。「おひらきまつり」では、「日巫女(イルム)」を拝見し、シャーマニックな踊りにとても感動した。
昨年11月に東京で行われた故・宇治土公貞明猿田彦神社宮司の「お別れ会」で金さんと久しぶりにお会いした。その後、これまで出版したいくつかの本を韓国に贈ったところ、金さんからソウルでの舞踊公演のご招待の知らせが届く。その頃、ちょうど韓国に滞在を予定していた。 その公演は、亡き宮司のお別れ会の時、細野晴臣さんと環太平洋モンゴロイドユニットの演奏を金梅子さんが拝見した時に、韓国での公演のコラボレーションを発案されたという。 世界石巡礼中に、韓国で金梅子さんの舞踊公演と、細野晴臣さん、鎌田東二さん、三上敏視さん達の演奏を一緒に拝見できるとは夢のような体験だった。 金さんのソロ、群舞、演奏のコラボレーションが心地よいハーモニーとなって内面的な世界へと誘ってくれた。 その夜、出演者の方々と同席させていただき、夢のような楽しい宴を過ごさせていただく。特に、金さんの師で釜山大学のある教授の方と出会い、岩とシャーマニズムの関係を聞かせていただいたことは印象的で、また韓国へ来なければならない・・。
仁川からフェリーで青島へ、中国の新幹線で泰山 泰山にて 郡司 拝