声優は稼げるのか?

声優という仕事は好きな人間にとって、とてもやり甲斐のある仕事です。
ですが、人間やり甲斐だけでは生きていけません。
生活していくにはお金が必要。
声優の懐事情はどのようなものかご存知でしょうか?

私の知る限りの情報なので、偏りはあると思います。
「こういう人がいるんだ」くらいの感覚で読んで下さい。
専門学校入学辺りから順を追って書いていますが、なり方も一通りではありません。

声優を目指し、専門学校に入った段階では勿論声優として稼ぐ事は出来ません。
それどころか、専門学校の学費を稼ぐ為にアルバイトや他の仕事をしなければならない人が殆どでしょう。
専門学校を出て、事務所の養成所に入ります。
この段階も専門学校と同様の状況です。
養成所生に仕事を振ってくれる事務所もありますが、その仕事だけでは食べていけません。
ですが振ってもらった仕事やオーディションで結果を出すと、養成所期間を短縮して事務所に入る事も出来ます。

そして事務所に入ったら、声優の仕事だけで生活出来るようになるのか?
残念ながら、生活出来るようになる人は殆ど居ません。
これは何故かというと、事務所に入りたての時は基本的に仕事は少ないんです。
先輩がいる現場や、事務所がキャスティングをしている現場に入れてもらって経験を積み、徐々に仕事を増やしていく人が殆どです。
作品のオーディションに合格して事務所に入った人も、最初の数ヶ月はギャラがほぼないと思います。
一般的な職種であれば、働いた月の翌月にお給料が振り込まれます。
しかし、芸能関連の仕事はギャラの振込に2~6ヶ月かかります。
事務所に入って毎日現場があったとしても、翌月のギャラはほぼありません。
ギャラの振込にアニメ・吹替えは3ヶ月、ゲームは早くて3ヶ月、普通は6ヶ月かかると思っていた方が良いでしょう。
ナレーションの仕事は個人的に振込時期にバラつきがある印象です。翌月の事もあれば数ヶ月経ってから振込まれる事もありました。

金額としてはアニメ・吹替えは1回の収録で1万円ほど、ゲームはバラつきがあり数千円~数万円(台詞数や媒体、制作会社によって大きく変わってきます!)です。
サラリーマンのように平日毎日仕事があったと仮定すると、毎日1本の収録ならば月収20万円、毎日2本以上ならば月収は40万円を超えます。
更に作品によってはデビューから数ヶ月で大金を手にする事が可能です。
歌ったり踊ったりステージに立ったりする作品や、有名なゲーム作品であれば、最初のギャラが数十万~数百万円になるかもしれません。
「声優稼げる!」と思った方、マカロンよりも甘い考え方です。
デビュー1年以内でそんな事になる人は全体の1%もいないでしょう。
ほとんどの人はデビューから数年、アルバイト生活を強いられます。
更に言うと、アルバイトもクビになるかもしれません。
突然オーディションや現場が入る事があるからです。
とは言え、1週間ほど前には決まっている場合が多いのですが、2~3日前や、前日にスケジュールをきられる事もあります。
運悪くそういった事が短期間で重なると、「こういう事が続くと厳しいから辞めてくれないか。」となる訳です。
こちらの事情に対し全面の理解があるか、バイト時間を自由に選びキャンセルする事が出来るようなバイト先でなければ生活さえ困難になる訳です。
デビューから数年間は基本的に貧乏だと想定して下さい。

さて、アルバイト先に恵まれ、自己研鑽を怠らず、積極的にコミュニケーションを取っていたマネージャーさんが推してくれたお陰もあって、少しずつ現場に出て、少しずつ自分の事を覚えてもらえたとします。
アニメと吹替えが半々、たまにゲームの仕事もあるとしましょう。
順調に行けば現場に出始めて数年以内に声優として生計を立てられるようになります。
しかし、声優は人気商売。
自分と似た系統の芝居・声質で、自分より若い人もいるでしょう。
そこで枷になってくるのが、継続年数です。
声優業界にはランク制度というものが存在します。
色々な事務所があるので必ずという訳では無いのですが、デビューから数年で声優はジュニアランクを経て、ランカーになります。
耳にした事がある方も多いかもしれませんが、ランカーになるとギャラが上がります。
サラリーマン的に言うなら昇給です。
ですが声優はサラリーマンではありません。
昇給=収入が増える、という単純な図式にはならないのです。
アニメだろうと吹替えだろうと全ての仕事は予算が決まっています。
予算内でやり繰りする為には、無駄遣いは出来ません。
重要な役にはお金をかけ、物語の背景となるモブにはお金をかけません。
ランカーになった時点で、モブの仕事はほぼ無くなります。
特に吹替えの現場は兼役が多く、新人が番組レギュラーとして多くの役を担当します。
ギャラが高くなってしまった為に、番組レギュラーから外される・入れないランカーが出てきます。
メインキャラやゲストキャラに配役されれば良いのですが、そうでない場合は仕事数が半減します。
吹替えの現場は番組レギュラーとして安定して出番がある為、アニメのレギュラーより収入も安定します。
ランカーになりギャラが上がる事で、逆に収入が不安定になる人が出てくるのです。
ランカーになるまでに地位をどこまで確立させるかで、声優としての将来設計が変わってきます。
ランカーになり仕事が減り、他の仕事を始めたり、廃業する人も多く存在します。
人によって事情は違うでしょうが、収入が大きく関係していると思います。

そしてランカーになって仕事があったとしても、新しい世代の台頭や時代の変化による需要増減など、次々と問題が襲ってきます。
常に自分を更新し続け、自分が生き残る道を探し続けなければならないのです。
その割に声優という仕事はさほど儲かりません。
儲けたい人は素直に別の仕事をした方が良いでしょう。

「普通のサラリーマンくらい儲かるならそれで良い」と思う人もいるでしょう。
しかし声優はサラリーマンと違って有給もなければ、定時もありません。
収録の為に夜遅くまで台本を読み込み、映像を何度も観て、役作りの為に資料を漁り、身体作りの為にトレーニングをしているその時間は無給です。(ステージに立つ為の歌や踊りの稽古はギャラが発生します。)
病気や怪我をしたら仕事を他の人に取られます。
身体が弱い人には向きません。
喉や身体が弱い人は声の使い方や体質の改善が必要不可欠です。

長々と書いてしまいましたが、「声優は稼げるのか?」と聞かれたら、「稼げない訳じゃないけど、稼ぐのは難しいし、稼ぎ続けるのは困難を極める」というのが私の回答です。

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