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小説『君と未来の話をした』
2、3日おきに君と長電話をする。話せていなかった間の出来事、誰かに話したいちょっとした面白い話、周りの人に打ち明けられないような暗めの悩みの話。
君とする話は些細なことでも楽しいことへ変わっていく。電話している時間はいつだって不思議な気持ちでいっぱいになる。
今この瞬間も、30秒前まで溜息をついていたことが、嘘のように晴れていきどうでもよくなってしまった。君との会話には言葉に表せない魔法の力がある。
「一緒に住みたい」
君の口から出てきた言葉のような気がするけれど、はっきりと覚えていない。その真偽は別に問題じゃない。同じように思っている気持ちが自分の心の中にあることを知っていたから。
「住みたいね」
洗濯担当は君。美味しいごはんは用意する。掃除は二人でやって、ゴミ出しは任せる。二人分のコーヒーを淹れるから、君がミルクと砂糖で甘くして。
どちらの口から出てくるのもただの妄想。けれど、二人の未来図であってほしいと願うもの。
「ふわぁ」
欠伸をする君の声が聞こえる。
「眠そうだね」
「うん、眠い」
「寝るか」
君の手を取り二人でベッドに向かっていく。電話越しに話した二人の未来は、今現実になってここにある。声だけでしか判断できなかった君の存在は、目に映る姿と、手から伝わる体温と、この二人で住む生活空間が本物だと伝えてくれるようになった。
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