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だったらランドセルは赤にする!と言い出した長男の話

「ランドセル、この色がいいなぁ」
そういって、息子はカラフルなランドセルの写真が載っている広告を指さした。
鮮やかなエメラルドグリーン色のランドセルだった。

それまで、ランドセルと言えば、男の子は黒、女の子は赤だったのが、ちょうど長男が入学を迎える前年くらいから、様々な色のランドセルが売り出されるようになった。

本当は、「いいね。その色」と言ってあげたかった。
が、我が家は転勤族。次に行く学校でカラフルなランドセルがOKなのかどうかわからない。

幼稚園時代を過ごした土地の小学校は大丈夫なようだが、入学する学校は、違う土地になりそうなことは薄々わかっていた。だから、息子にはかわいそうだけど黒を勧めるしかなかった。

毎日のように説得した。

なぜ自分の選んだ色じゃだめなのか、腹を立てる長男。
しまいには、テーブルにドンッと手を置き、

だったら、ランドセルは赤にする!

と、言い出した。

やれやれだ。
自分の要求が聞き入れてもらえない気持ちから言い出したこととは言え、よりによって「赤」。おかしいやら切ないやら、私の気持ちは複雑だった。

そうやって親子で揉めているうちに本当に夫が転勤になってしまった。

「行く先の学校でこの色(エメラルドグリーン)のランドセルがいいかどうかわからないし、だからと言って赤を買って、後から「赤じゃないほうがいい」って言われてもお父さんもお母さんも困るよ。それに、6年間同じ学校に行けるかどうかわからないから、黒にしておこうよ」

息子は、本当に渋々黒のランドセルを買うことを受け入れた。

転勤先の社宅には、同学年の男の子のМくんがいた。Мくんにはお兄ちゃんがいて、我が家も男二人兄弟だったのですぐに仲良くなった。

入学式の日、真新しいピッカピカの【黒い】ランドセルを背負った二人。
スキップするかのように二人とも足を弾ませている。

Мくんが言った。
「やっぱ、男は、ランドセル、黒だよな!!黒が一番カッコいい!な?」

即座に長男も続いた。
「う、うん!!!」

揉めに揉めたあの日々は何だった・・・。


見出し画像はメイプル楓さんの作品をお借りしました。
ありがとうございます。

最後までお読みいただきありがとうございます。
また、次のnoteでお会いしましょう。




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