抹茶とわさびと経験値
家族旅行での出来事。長男はまだ小学校低学年だったと思う。
旅先のホテルでの夕食は、ブッフェスタイルだった。
「自分が食べられる分だけ、好きなものを取ってきていいよ」と言って、
トレーを持たせて、送りだした。
しばらくすると、ほくほくとした顔で長男がテーブルに戻ってきた。
お皿に緑色で丸いものがこんもりと盛りつけてあった。
「あれ?抹茶アイスなんてあった?」
「あっちにあったよ」
長男が言う「あっち」に目をやる。
あっちは確か、お刺身なんかが置いてある場所。
!!!!!!
まさか!
「それ、もしかして!わさびじゃない?」
がっかりした、長男の顔。
かわいそうにと思いながらも、私と夫は大笑い。
確かにマグロのお刺身の横に大量のわさびが置いてあった。
しかも、なぜかアイスクリームディッシャーもわさびの横に置いてあった。
もしかしたら、配膳をする人が置き忘れていったのかもしれない。
アイスクリームディッシャーを使ってまで大量のわさびを取りたい人は、よほどの激辛好きでもない限り、いないだろうから。
息子よ、あの時は大笑いしてごめんね。
そりゃ、あの緑色は君が好きな抹茶のアイスクリームにそっくりだよね。色だけじゃない。表面が波打つ感じも似ているよね。横にアイスクリームディッシャーまで置いてあったんだもんね。うんうん、勘違いもするよね。
大人は経験値があるから、マグロの横にあったら、それはわさびだと判断するけど、あの時の君にはまだ経験値の蓄積が少なかったんだよね。
笑ってごめん。
「食べたかったね。抹茶アイス」って、もっと共感してあげればよかった。今ごろになって言っても遅いね。
それにしても
お皿を下げるとき、ホテルの方はどう思っただろうか。
丸くこんもりと盛られた大量のわさびの食べ残し・・・。