私の車はドコデスカ?(車にまつわる話2)
広い駐車場に車を止めたら、そこを離れる前に駐車場の番号を普通は確認するものだ。東のAとか5FのBとか。
私はしなかった。
あの日、私は初めて一人で遠くまで車を走らせた。片道30分の道のりは、私にとっては冒険だった。無事に到着した嬉しさと緊張が解けた膝をガクガクさせて、ヨロヨロと店内に入って行った。
一人の時間を満喫して、そろそろ帰らなければと駐車場へ戻ろうとして真っ青になった。
私は、どこに車を止めた?
額にじわーっと汗が滲み出てくる。次男の幼稚園バスが家の前に到着するまでに帰らなければいけない。早くしないと。
その商業施設は屋内に4フロアー、それと屋上が駐車場になっていた。何階に止めたのかも覚えていない。
1階ずつ端から見て回る? ーいやいやとんでもなく広いぞ、この駐車場。警備員さんに事情を説明して一緒に探してもらう? ー警備員さんってどこにいる?
ぐるぐる歩き回りながら考えた。パニックになりかけた頭をどうにか落ち着かせて、車を降りてからの行動を思い出してみた。
ぼんやりと映像が頭に浮かんできた。色が出てきた。駐車場の店内入口付近の電気の色だ。ピンク色。他のフロアーに行って気が付いた。どうやら階によって色分けしていることがわかった。
自分が駐車したフロアーがわかっただけでも、少し安心材料が増えて、もう一段階落ち着くことができた。
思い出せ。思い出せ。どこに止めた?
店内入口付近は混んでいたから少し離れた所にとめた。はず。刻々と迫るお迎え時間。焦る気持ちを抑えながら、ぐるぐる駐車場を探し回る私。
あー。なんてバカなんだろう。フロアーも、番号も確認しないで車を離れるなんて。いつも夫に連れてきてもらって自分では何もしていないからだ。今頃そんなことを反省しても始まらない。とにかく見つけないと。
薄暗い駐車場の中は、排気ガスのにおいが充満している。焦る気持ちとぐるぐる歩き回ったせいで気持ち悪さが限界に近づいてきた。その時、見慣れた青い車が視界に入った。
あった!
運転席に座って、シートベルトを締めると大きく深呼吸してからエンジンをかけた。
家の駐車場に車を止めるのとほぼ同時に幼稚園バスも到着した。お迎えにはなんとか間に合った。危なかった。
あの駐車場の灯りが色分けされていなかったら、私はどうしていたのだろう。今思い出してもぐったりする私の愚かな記憶。