WHO 『空気経路伝搬病原体の用語案に関する世界的技術協議報告書』 (仮訳)
訳者解説
以下に、WHO ” Global technical consultation report on proposed terminology for pathogens that transmit through the air" APR.18.2024 を訳出します。
この文書は、2020年コロナ禍当初から高まったCOVID-19空気感染論争という科学論争の、一里塚となるものです。
医学界では、ながらく5μmという飛沫と飛沫核を区別する基準があり、季節性インフルエンザをはじめほとんどの呼吸器感染症は飛沫・接触感染による感染症に分類され、1~2mで落下する飛沫からの感染について対策すべきもの、浮遊する飛沫核による空気感染はしないから換気対策は考えなくてよいものとして扱われてきました。さらに言えば、飛沫・接触感染の感染症にたいし換気をしたがるのは瘴気説という非科学的迷信に惑わされることだと笑われてしまうほどでした。
5μm基準は感染対策に直結しています。
麻疹/結核/水痘=飛沫核感染=空気予防策(陰圧室・N95)
他の呼吸器感染症=飛沫・接触感染=飛沫・接触予防策(換気不要)
この強固な2分法の図式が感染症の医学教育と感染対策の土台でした。
しかしこの2分法がコロナ禍で大きく揺るがされ地殻変動が起こっています。コロナは飛沫感染で説明のつかない感染拡大をする。換気が重要だ。ユニバーサルマスクも効果的だ。
「コロナはエアロゾル感染している!」おもに建築学(環境工学)の研究者たちが訴え始めました。建築物の換気を研究している研究者たちは、人間の呼吸器官から排出されるエアロゾルの粒子径は連続的な分布をしていること、そして5μmより大きいか小さいかで粒子の空気中の挙動が一変するなどという事実はないことを良く知っていたのです。5μm基準こそ迷信だったのです。
さて、もう一度5μm基準での図式↓を見てみましょう。
麻疹/結核/水痘=飛沫核感染=空気予防策(陰圧室・N95)
他の呼吸器感染症=飛沫・接触感染=飛沫・接触予防策(換気不要)
5μm基準、いえ、5μmドグマを廃棄したらどうなるでしょう。麻疹もコロナも季節性インフルエンザもRSウイルスも百日咳も、いずれも程度の差はあれ、空気中に浮遊するさまざまな大きさのエアロゾルを吸い込むことで感染する可能性があるもの、と、まず可能性を認めて、個別の病原体の種類やエアロゾルを吸い込む側の人の免疫状態(ワクチン接種済みかどうか)など様々な要因を考慮して感染対策を組み立てなおす必要があります。とりあえず換気はあらゆる呼吸器感染症に効果的です。ユニバーサルマスクも有効なはずです。
これまでエアロゾルの存在に対してまるで盲目であった医学は、さまざまな呼吸器感染症がエアロゾル感染する可能性について、換気とマスクの有効性について、もういちど真面目に向き合ってみる必要に迫られています。
5μmドグマを廃棄すると宣言した今回のWHOの報告は、感染症対策のパラダイム転換の一里塚であると言えるでしょう。
WHO 『空気経路伝搬病原体の用語案に関する世界的技術協議報告書』 (仮訳)
Global technical consultation report
on proposed terminology
for pathogens that transmit through the air
APR.18.2024
https://www.who.int/publications/m/item/global-technical-consultation-report-on-proposed-terminology-for-pathogens-that-transmit-through-the-air
訳 vogelsang7
※翻訳にあたってDeepLを用いマニュアルで修正しました。
訳語対照表
Infectious respiratory particles(IRP) 感染性呼吸器性粒子,IRP
through the air 空気経路
through the air transmission(TTAT) 空気経路伝搬
airborne, airborne tansmission 空気伝搬
direct deposition 直接落下
bloodborne 血液伝搬
waterborne 水伝搬
transmission 伝搬
infection,prevention and control (IPC) 感染予防管理
Technical Consultation Group(TCG) 技術協議グループ
要旨
病原体が空気経路(through the air)伝搬することを表す用語は、科学分野、組織、一般市民によって異なる。コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行時には、「空気伝搬(airborne)」、「空気伝搬(airborne transmission)」、「エアロゾル伝搬(aerosol transmission)」という用語が、さまざまな科学分野の関係者によって異なる方法で使用され、病原体がヒト集団にどのように伝搬するかについて、誤解を招く情報や混乱を招いた可能性がある。
この世界的技術協議報告書は、ヒトに感染症を引き起こす可能性のある病原体の空気経路伝搬に関する用語についてコンセンサスを得ることを主な目的として、様々な分野の専門家の見解をまとめたものである。
この協議は、さまざまな技術分野に理解され、受け入れられる用語を特定することを目的とした。合意されたプロセスは、世界的な機関や団体が承認できるコンセンサス文書を作成することであった。複雑な議論と難題にもかかわらず、協議の過程で大きな進展があり、特に病原体がどのように空気経路伝搬するのか、またそれに関連する伝搬様式を説明する一連の記述語についての合意が得られた。WHOは、コンセンサスが得られなかった重要な分野を認識しており、フォローアップ協議で引き続きこれらの分野に取り組む予定である。
今回の協議で対象とされた病原体の種類と、その結果この文書で使用されることになった記述語は以下の通りである。
・「感染性粒子」として知られる粒子内に含まれる病原体で、感染性粒子が呼気流によって運ばれる際に空気経路を移動し(「感染性呼吸器性粒子Infectious respiratory particles」またはIRPとして知られる)、ヒトの呼吸器管に侵入する(または他のヒトの口、鼻、目の粘膜に落下する)もの、そして;
・感染源(ヒト、動物、環境を含む)を問わず、主に呼吸器感染症(結核、インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)など)を引き起こすもの、また、呼吸器とそれ以外の臓器を含む感染症を引き起こすもの(COVID-19、麻疹など)。
幅広く議論されたこの協議では、(典型的な状況下での)病原体の空気伝播を特徴づけるため、以下の記述語と段階分類が定義された: - 病原体に感染した個体(感染源)は、疾患の感染段階において、病原体を含む粒子を、水や呼気分泌物とともに生成する場合がある。このような粒子をここでは潜在的「感染性粒子」と表現する。
・ これらの潜在的感染性粒子は、呼気流によって運ばれ、呼吸、会話、歌、唾、咳、くしゃみによって感染者の口や鼻から出て、周囲の空気に入る。この点から、これらの粒子は「感染性呼吸器性粒子」またはIRPと呼ばれる。
・ IRPは幅広い大きさ(1μm未満から数mm径まで)で存在する。放出されたIRPは、霧雲として吐き出される(最初は気流から独立して移動し、その後、室内の背景空気の動きによってさらに拡散・希釈される)。
・ IRPの大きさは連続スペクトルをなし、小さい粒子と大きい粒子を区別するために単一のカットオフ値を適用すべきではない。これにより、「エアロゾル」(一般に小さい粒子)と「飛沫」(一般に大きい粒子)として知られている従来の用語の二分法から離れることができる。
・ 多くの環境要因、すなわち周囲の気温、速度、湿度、日光(紫外線)、空間内の気流分布その他が、IRPの空気経路での移動に影響を及ぼし、他の個体に到達した際に活性や感染力を保持するかどうかにも影響を及ぼす。
「空気経路伝搬(transmission through the air)」という記述語は、病原体が空気経路を移動する、または空気中に浮遊することを主な伝搬様式とする感染症を特徴づける一般的な表現である。これは、科学、臨床、公衆衛生界、一般大衆が一般的に理解する特定の疾病が感染する主な伝搬媒体を指し、「水伝搬(waterborne)」や「血液伝搬(bloodborne)」など感染症に関する他の公衆衛生記述と類似している。
「空気経路伝搬(transmission through the air)」という記述語は、空気経路によるIRPの伝播様式を表すために使用される。
「空気経路伝搬(through the air)」の下位分類として、2つの記述語を使用することができる:
・「空気伝搬/吸入(airborne/inhalation)」: 上記のように空気中に排出されたIRPが、吸入によって他のヒトの気道に入り、感染を引き起こす可能性がある場合。この伝搬形態は、IRPが感染者から短距離または長距離を移動した場合に起こりうる。空気伝搬によるIRPの呼吸器組織への侵入口は、理論的にはヒトの呼吸器のどの部分でも起こりうるが、病原体によって侵入口が異なる可能性がある。移動距離は、粒子径、排出様式、環境条件(気流、湿度、温度、設定、換気など)を含む複数の要因に左右されることに留意すべきである。
・ 「直接落下(direct deposition)」: 短距離の半弾道軌道をたどって空気中に排出されたIRPが、他人の露出した顔面粘膜表面(口、鼻、目)に直接落下し、その結果、これらの開口部から人の呼吸器に入り、感染の原因となる可能性がある場合。
空気経路伝搬ではなく接触伝搬(直接接触)を介して(例えば手を介して)、または二次的な物体(媒介物、例えばテーブル表面)に触れることによる間接的な伝搬で、他のヒトに感染しうる病原体、または、経路(例:開放創、鋭利物や針刺し損傷)を介してヒトの体内に侵入する病原体、または、肺を好む環境リザーバーを持つ病原体(例:レジオネラ症、メリオイドーシス)は、ここに含まれる記述語ではカバーされていないが、補足のために参照されている。
この協議は、WHOが主導する世界的な科学的議論の第一段階である。次のステップでは、WHOはさらに技術的かつ学際的な研究を行い、今回アップデートされた記述語の広範な含意を探究したうえで感染予防と管理、またはその他の緩和策のガイダンスを発表する必要がある。
第1章 イントロダクション
あらゆる病原体について、その伝搬様式を理解することは、その病原体の感染を予防し、蔓延を緩和するために効果的で適切な公衆衛生、臨床、感染予防および制御策を開発し、適応させるために不可欠である。
主な公衆衛生および社会的対策には、以下のような複数のアプローチの実施が含まれる:
・症例発見
・分離かつ/または隔離(isolation)
・接触者追跡と支援付き隔離(quarantine)
・徹底した検査
・物理的距離を置く
・手指衛生、マスク着用
・迅速かつ適切な治療の実施
・環境の清掃と消毒
・適切な換気の確保
・医療現場における感染予防と感染管理
・臨床例の管理
これらの対策はすべて、病原体の感染がいつ、どこで、どのように起こるかについての理解に影響され、医療従事者や医療現場のその他の職種を含め、さまざまな異なる環境で、通常「管理の階層(hierarchy of controls)」アプローチを用いて実施される。
病原体の伝播の仕方は複雑で、多くの要因に左右され、さまざまな方法で分類される。伝搬様式とは、古典的な疫学の原則に従ったもので、病原性を持ちうる感染因子が、どのようにして他のヒト、物、環境、水、食物、昆虫、動物に移行するかを指す。この意味で、感染経路は、感染源と感受性のある感染者の間を移動するために感染性病原体が使用する様々な媒体(血液伝搬、水伝搬、媒介動物伝搬、空気伝搬、そして空気経路など)によって単純に分類することができる(1-3)。空気経路感染する様々な病原体について、どのような感染様式が優勢であるかを測定し定量化する方法は、特に新しく出現した病原体については、依然として困難である。
この課題にとって現在の大きな問題となっていることは、病原体の空気伝搬に関する用語が、科学分野間、組織間、そして一般市民の間で大きく異なることである(4)。この問題は何年も前から知られていたが(4-20)、COVID-19のパンデミックの際、世界的な集中的な情報共有が必要とされたため、最前線に浮上した。パンデミックの間、「空気感染」、「空気伝播」、「飛沫」、「エアロゾル」という用語は、異なる当事者によって使い分けられ、この病原体が空気を介してヒト集団にどのように伝播するかを伝える際の混乱を招いた(21)。したがって、「空気感染」、「空気伝播」の正確な意味についてコンセンサスが得られていないことから、分野、機関、病原体を超えて、これらの用語をよりよく統一する必要性が浮き彫りになった。
2020年、WHOのCOVID-19指導部は他の主要な公衆衛生機関と協議し、病原体の空気経路伝搬に関する用語の使用を再評価する必要性に合意した。その出発点として、また、異なる科学分野間で定義に重大かつ未解決の差異が存在するかどうかを確認するために、WHO健康緊急事態計画は、科学部門の迅速審査グループとともに、2021年に病原体の空気感染に関する既存の定義に関するスコープ文献レビューを実施した。このレビュー(原稿準備中)により、「空気伝搬」という用語の範囲には、粒子径の限界、空気中での持続時間、移動距離、拡散方法、その他の特性の違いを含め、かなりのばらつきがあることが判明した。
2021年11月、WHOは、病原体の空気経路伝搬に関する用語の不統一を解消し、記述語や用語に関する合意を得ることを目的として、世界的な技術協議の開催プロセスを開始した。この協議報告書は、使用される用語と記述語の案について、専門家による議論から得られた合意点をまとめたものである。
第2章 目的、目標、範囲
この世界的技術協議プロセスの主な目的は以下の通りである:
・疫学、微生物学、臨床管理、感染予防および制御、生物工学、物理学、大気汚染、エアロゾル科学、空気生物学、公衆衛生および社会政策、社会科学の専門家を含む(ただしこれらに限定されない)様々な分野の世界的専門家を集めること。
・ヒトに感染症を引き起こす可能性のある病原体の空気経路伝搬ついて、一般的な用語と記述語に関する知識を共有し、コンセンサスを得る。
協議の目的は以下の通りである:
・世界のすべての専門分野と専門家が理解し、受け入れ、最終的に実施できるような用語を特定すること。
本協議で対象とした病原体の範囲と、その結果として本書に含まれる記述語は以下の通りである:
・粒子(「感染性粒子」として知られる)に含まれる病原体が空気経路で移動し、これらの感染性粒子が呼気流によって運ばれ(現在では「感染性呼吸器性粒子」またはIRPとして知られる)、ヒトの呼吸器に入る(または他人の口、鼻、目の粘膜に落下する);
・あらゆる感染源(ヒト、動物、環境を含む)からの病原体で、主に呼吸器系感染症(結核、インフルエンザ、SARS、MERSなど)を引き起こすが、呼吸器系および他の臓器系を含む感染症(COVID-19、麻疹など)を引き起こす病原体も含まれる。
注意すべきこと
・空気経路伝搬ではなく接触伝搬(直接接触)を介して(例えば手を介して)、または二次的な物体(媒介物、例えばテーブル表面)に触れることによる間接的な伝搬で、他のヒトに感染しうる病原体、または、経路(例:開放創、鋭利物や針刺し損傷)を介してヒトの体内に侵入する病原体、または、肺を好む環境リザーバーを持つ病原体(例:レジオネラ症、メリオイドーシス)は、ここに含まれる記述語ではカバーされていないが、補足のために参照されている。
・簡略化のため、本文書に含まれる記述語、図、表、その他の文章は、通常ヒトにのみ言及し(例えば、環境由来の病原体により一般的な用語である「感染源」ではなく、「人/個人」)、他の侵入経路(例えば、皮膚や開放創経由)ではなく、ヒトの呼吸器からの感染、およびヒトの呼吸器への感染に焦点を当てている。
・既知のすべての病原体について、起こりうるすべての環境におけるすべての伝搬要因に関する詳細な記述は、今回の協議には含まれていない。
第3章 方法とプロセス
ガバナンス構造と技術協議グループ(TCG)の構成の詳細は、付属書1に記載されている。この世界的技術協議は、段階的アプローチ(付属書2参照)を用い、2つの補完的手法(付属書3参照)を用いた。TCGは、専門家によるエビデンスの提供、バーチャル会議によるオープンな議論への参加、各原案に対する意見書の提出のために選ばれた41人の技術専門家とWHO事務局(付属書4参照)を含む、多機関、学際的なイニシアチブであった。TCGの全メンバーは、その技術的専門性に基づき、適切な性別及び地理的バランスを確保するために選ばれた。専門家のTCGへの招待は、WHOのチーフサイエンティストによって承認され、発行された。WHOの通常の手続きに従い、すべての専門家は利益相反について評価され、秘密保持契約書に署名するよう求められた。どの専門家も、報告すべき利益相反はなかった。選ばれた多様な専門家の間で実質的な意見の相違が生じる可能性が高いことを考慮し、すべての専門家が、口頭での貢献と文書によるフィードバックを通じて、協議の議論に十分かつ率直に、しかし敬意を持って貢献することと、多数の機関が共同で承認し、採用できるような包括的な記述を目指すことが奨励された。
この技術協議は正式に構成されたWHOのTCGではないため、正式な勧告は期待された成果ではなかった。したがって、既知のすべての病原体に関する包括的な系統的エビデンスレビューは行われなかった。その代わり、このプロセスは、非常に複雑なトピックに関する、分野を超えた共通言語の基礎をつくるための困難で複雑な議論の出発点となることを目指した。しかしながら、病原体ごと、学問分野ごと、固有環境ごとの文脈の中で運用し、実施するためには、さらなる作業が必要になるだろう。
オンラインミーティングや文書によるフィードバックで寄せられた意見は、このトピックに関連する極めて幅広い分野に及んだ。これには、IRPの伝搬に関するメカニズム、伝搬様式、環境、病原体固有の特徴、疫学的要因、感染源対策、宿主、その他多くの要因が含まれる。
非構造化ディスカッションによる非公式なアプローチが用いられた。その方が構造化されたアプローチ(デルファイ法、調査、正式な投票など)よりも、意見や感想をより明確にすることができるからである。TCGのメンバーには、強く反対する意見を記録する可能性を提示した。この文書では、「コンセンサス」という用語は、このようなグループによる意思決定方法が協議で採用され、結果として文書が完成したプロセスを表すために使用されている。
第4章 成果
長時間に及ぶ協議プロセスにより、この世界的な技術協議で示された目的に取り組むことが、いかに複雑で繊細なものであるかが確認された。予想されたとおり、専門家が科学的裏付けに関して相互に排他的で正反対の立場をとっていたこのテーマについて、すべての側面でコンセンサスを得ることは困難であった。意見対立の一部はまだ残っており、付属書5にまとめられている。
このような障害にもかかわらず、「空気伝搬」と「直接落下」という下位分類を持つ「空気経路伝搬」という包括的な用語のコンセンサスに到達した。重要なことは、図1が、病原体がどのように空気経路伝播するかについての現在の理解を模式的に示したものであることがTCGで合意されたことである。この図式を説明するために選択されたラベルや用語については、まだ意見が分かれている(論点については付属書5を参照)。図1の概略図を言葉で表現するために、通常の状況下で病原体が空気経路伝播することを特徴づけるために、以下の記述語を使用することを提案する。
4.1 伝搬様式
伝搬様式(表1)には、IRPの形成、放出、移動、生物物理学的または生化学的変化が含まれ、感染個体から離れたIRPが別の個体に向かって移動する際に起こる。さらに、IRPが他の人の口、鼻、目に直接落下し、その人に感染する可能性もある。
感染症の感染段階では、感染者は病原体を含む粒子を水や呼吸器分泌物とともに生成する。このような粒子をここでは「感染性呼吸器性粒子」またはIRPと呼ぶ(24-36)。これらのIRPは、呼吸、会話、歌、唾、咳、くしゃみの際に、呼気流に乗って感染者の口や鼻から出て、周囲の空気に放出される。IRPは幅広い大きさ(直径1μm未満から数ミリメートルまで)で存在し(22, 25, 32, 37-55)、乱流霧雲(肺からの呼気気体と呼気粒子との混合物)を形成しながら空気中を移動する(8, 23)。IRPは霧雲によって運ばれ、霧雲の勢いが十分に弱まり、背景の空気の動きによってIRPが拡散できるようになるまで、濃縮されたままである。
呼気中のIRPの粒子径分布、拡散、およびその後の個人への影響に関わる可能性のある要因は数多くある(図1に図示)。
・宿主: 感染歴、ワクチン接種歴、自然免疫、細胞性免疫、体液性免疫などの宿主の免疫状態。
・病原体の特性: 病原体が空気中に浮遊した後も感染力を維持する能力、および病原体が宿主の気道の表面に落下した後の用量-感染関係。
・粒子径: IRPは空気力学的な大きさの連続スペクトルをなし、小さい粒子と大きい粒子を区別するために単一のカットオフ値を適用すべきではない。このことは、これまで「エアロゾル」(一般に小さい粒子)と「飛沫」(一般に大きい粒子)として知られていた二分法から離れることを可能にする(8、12、56、57)。ただし、通常、大きな粒子に比べて小さな粒子の方が数が多い。
・排出速度: 排出の速度:排出の速度は、排出の力および周囲の状況に関連するその他の要因によって変化する可能性がある(8、12、14、23、55,58-67)。希釈のため、IRPの濃度は感染源(IRPが感染者の気道から出る場所)に近いほど高くなり、感染源から遠く離れてランダムに拡散するにつれて濃度は低くなる。
・重力の影響: 排出された後、より大きなIRPは重力の影響を受けて急速に落下し、最終的には、感染者の気道から排出された場所から通常1~2メートル以内の地面または別の表面に落ちる(13,68,69)。
・排出様式: くしゃみ、咳、大声での歌唱、叫び声など、より強力な呼気(すなわち、総運動量がより大きい)をもたらす活動は、IRPを1~2メートルより遠くに排出することが知られている(8, 12, 23);
・蒸発: 口や鼻から放出された後、あらゆるサイズのIRPは、水分の一部を蒸発させる。IRPは、共通の環境において、様々な速度でサイズと重量が減少する。蒸発速度は、粒子が空気中に留まる時間や、表面に落下するまでの移動距離に影響する。粒子が小さければ小さいほど、空気中に長く留まり、遠くまで移動する可能性が高くなる。
・環境条件: 上記の伝播要因に加えて、IRPが排出される空間の気温、日照、湿度、気流、広さ、居住環境、空間の使用状況が、IRPの感染力、持続時間、伝播速度、移動距離に影響を与える(23~25、29、33、48、54、55、62、66、70~87)。
・IRPの濃度: 発生源からの距離が長くなるにつれて、周囲の空気との希釈が進み、IRPの濃度は低下する。濃度は、換気システムからの周囲気流の影響も受ける。換気が不十分な場合、濃度は時間とともに上昇する可能性がある(88-90)。
IRPは感染者から放出された後、病原体特有の時間枠の中で徐々に感染力が低下する。これは、時間とともに生物の感染力が低下するか、拡散と希釈が進んで任意の位置の空気中の粒子濃度が低くなるためである。その後、IRPが他の個体へ移動し、侵入し、感染する可能性のある様式は、大まかに以下の3つの方法で起こると説明できる(図1および表1に図示)。
1.
i) 空気伝搬/吸入(airborn transmission/inhalation):空気中に排出されたIRPが(上記のように)吸入によって他の人の気道に入る場合に起こる。この感染形態は、IRPが感染者から短距離または長距離を移動した場合に起こりうる(28, 37, 41, 43, 53, 63, 84, 91-96)。空気感染でIRPが呼吸器組織に侵入する入口は、理論的にはヒトの呼吸器管に沿ったどの地点でも起こりうるが、好ましい侵入部位は病原体特異的である可能性がある。移動距離は、粒子径、排出様式、環境条件(気流、湿度、温度、配置、換気など)を含む複数の要因に左右される可能性があることに留意すべきである。
2.
ii) 直接落下(direct deposition): IRPが短距離の半弾道軌道をたどって空気中に排出され、その後、他人の露出した顔面粘膜表面(口、鼻、目)に直接落下し、その結果、これらの開口部からヒトの呼吸器に入り、感染の原因となる可能性がある(38、41、42、47、48、52~54、58、62、67、72、76、84、95、97~106)。
3.
iii)接触伝搬(contact transmission)(補足のため追加): 汚染された表面は、空気中に排出されたIRPが表面に落下したとき、あるいは感染者がまず自分の口、鼻、目に触れ、次に表面に触れたり握手したりすることによって、感染性の呼吸器分泌物を移したときに生じる(25、34、42、48、54、58、72、84、97、98、107、108)。汚染された表面に落下した感染性病原体は、その汚染された表面を触った別の人に移り、その後に自分の口、鼻、目を触る。これは一般に間接的接触感染として知られている。さらに、感染者がIRPを介さず、自分の気道から感染性病原体を直接他の人に移し、その人と直接接触し(例えば、握手を介して)、その人がIRPを直接自分の口、鼻、目に移した場合にも、直接接触感染が起こりうる。このような感染形態は、空気経路伝搬でヒトに病原体を直接感染させるものではないため、本文書で扱う「空気経路伝搬」の記述には含まれないが、補足のためここに記載した(図1、表1も参照)。
4.2 「空気経路伝搬」という用語
「空気経路伝搬(through the air)」という記述語は、病原体が空気中を移動する、あるいは空気中に浮遊する感染症を特徴づける包括的な表現である。これは、「水伝搬(waterborne)」や「血液伝搬(bloodborne)」など、感染症に関する他の公衆衛生上の記述と類似しており、特定の疾病が感染する主な媒体を指し、一般大衆によく理解されている。しかし、媒体だけでは、空気が感染性を維持する時間や距離の要因には対処できない。この表現が公衆衛生の実施に役立つためには、これらの修飾因子が必要であり、これは今後の研究の一部となる必要がある。
「空気経路伝搬」という表現は、上述のように、空気伝搬/吸入または直接落下様式(または同等の記述に合致する他のラベル)のいずれかを介した、IRPの空気経路伝搬を表すために使用することができる。したがって、さまざまな大きさの、短距離や長距離のIRPの伝搬が含まれる。これらの伝搬様式(および、補足となる他の関連する伝搬様式)の概略については、図1と表1を参照のこと。
4.3 曝露と感染との関係
空気経路伝搬による病原体曝露は、感染者の気道から放出された病原体が他の人の気道に到達する物理的現象である。
感染とは、排出されたIRPが気道に入り、呼吸器組織と接触し、その後、感染しやすい人の中で感染性病原体が増殖して初めて起こる事象であるため、曝露は感受性のある宿主への感染の成功を保証するものではない。感染しやすい人が感染するかどうかには、病原体やその中に含まれる粒子の生物学的特性、感染しやすい宿主の免疫反応、IRP中の微生物の濃度、曝露期間、環境要因など、多くの複雑な要因が影響する。本書は、最終的に感染に至る可能性のあるこれらの複雑な要因に関する詳細な情報を提供するものではない。
4.4 IRPの「空気経路伝搬」と感染リスクに影響するいくつかの要因
前述したように、多くの要因が、排出されたIRPの生存率、感染力、病原性、濃度に影響を及ぼし、他者への感染や疾病のリスクとなる可能性がある。
IRPの空気感染リスクを軽減するために、ソーシャルディスタンスをとる、マスク着用、十分な換気または希釈、室内空間の気流パターンなどを考慮すべきである。なぜなら、屋外よりも屋内の方が、周囲の空気中でIRPが希釈される機会が多いため、IRPの伝播は起こりやすいからである。屋内での空気感染リスクを推定することを目的とした最近の取り組みの例として、SARS-CoV-2に関連した「屋内空気感染リスク評価」がある(109)。このリスク評価ツールは、以下のような詳細な関連要素を用いている。
・排出率(感染者が一定時間に吐き出すIRPの数または体積)(41、52、75、77、87);
・除去率(換気、落下、不活性化により一定時間内に空気中から除去されたIRPの数または体積)(42、60、63、77、84、110、111);
・暴露(排出率と除去率の差または比、暴露時間)(35, 44, 81, 110, 112-115, 48, 50, 54, 60, 63, 65, 71, 76);
・投与量(実際に確保され、他人が暴露されるIRPの用量)(25、41、48、50、59、62-65、71-75、77、80、81、83、111-113、116-119);
・結果として生じる感染の可能性とリスク(投与量、曝露された人の感染感受性、結果として生じる疾患の重症度、病原体特有の伝播特性、その他のリスクおよび宿主因子を考慮する)(41、108、120-125)。
特定の病原体、特定の環境における、これらの複雑な要因の相互作用に関する詳細な説明は、本文書の範囲ではない。
病原体によって、空気感染も含めた主たる感染様式、あるいは混合感染様式が異なることに注意することが重要であり、適切な感染緩和策を決定するためには、関連する専門家グループとの詳細な話し合いが必要となる。感染経路だけでなく、病原体の疫学的・ウイルス学的特徴、引き起こされる病気の程度や重症度、医療システムへの影響や負担、その他の要因も議論に含まれる。エビデンスに基づいたガイダンスを作成し、感染予防策や感染緩和策を講じるには、病原体によって異なる経路や環境に応じて、異なる方法をとる必要がある。加えて、病原体の病原性、治療可能性、頻度、宿主に与える潜在的影響も異なる。従って、感染予防管理(IPC)ガイダンスを含む、緩和策に関する病原体や設定に特化したガイダンスが必要であるが、本文書の範囲ではない。
4.5 当面の実際的影響
アップデートされた用語には、粒子径のカットオフ値は含意されず、むしろIRPの粒子径の連続スペクトルが含意される。これらは、様々な技術分野に実際的な影響を与える。例えば、IPCにおける目標は、微生物伝播の防止と制御である。制御には、感染の拡大を抑えることと、感染による罹患率や死亡率を抑えることの両方が含まれる。感染拡大を予防または制限するためには、曝露に対処し、その結果生じる疾患の重症度に応じて介入に優先順位をつけなければならない。つまり、同じ感染様式であっても、感染源、環境、宿主に関連する要因によって、異なる予防・管理対策が選択される可能性があるということである。病原体の伝播について説明する場合、感染源の発生や、濃度、大きさ、空気生物学的特性などの感染性粒子の特性からだけでなく、感染リスクに影響する要因から逆算しなければならないことを明確に理解しなければならない。
この協議の過程では、短距離空気感染のリスクを軽減するために、すべての環境において、すべての病原体に対して、また、このような感染様式が知られている、あるいは疑われる感染や疾病のリスクレベルがどのような人であっても、完全な「空気予防策」*1(現在知られているもの)を使用すべきであるという提案はない(126)。しかし逆に、状況によっては「空気予防策」を必要とする場合もある。やたらに「空気予防策」をとるようなことは、リスクの比較考量にもとづく感染予防アプローチでは明らかに不適切である。疾病の発生率、重症度、個人および集団の免疫、その他多くの要因を含むリスクのバランスを考慮する必要があり、平等性とアクセスに関して世界的な影響が生じるため法的、物流的、運用的、財政的影響も考慮する必要があるからである。
さらに、「直接落下」という新しい用語は、既存の「飛沫感染」様式に似ているが、特定の粒子径の指定はない。この感染様式に関する更なる理解が進んでいく途中では、この様式で伝搬することが疑われる、または知られている病原体については、呼吸器性粒子の直接落下を防ぐために、現行の「飛沫予防策」を引き続き使用すべきであるが、その病原体がもし空気伝搬ないし吸入の様式でも感染する場合には、その間、職員は感染のリスクを負うことになる。同様に、「接触」伝搬様式による感染については、「接触予防策」として知られる既存の予防策を引き続き使用すべきである。
*1 患者の空気感染隔離室への収容、医療従事者による適切な個人防護具(PPE)の使用(N95マスクを含む)、患者の搬送や移動の制限、適切な場合には患者にマスクの着用を求めるなどである。
最も重要なことは、協議中の議論は入手可能な最善の科学に基づくものであったが、健康上の不公平を最小化し、PPEを入手する能力に関する不都合な結果の可能性を回避するために、入手可能性、アクセス、手頃な価格、その他の現実と科学的洞察とのバランスをとることが重要であることに同意したことである。
空気経路伝搬をはじめとするすべての感染様式に関する用語の導入には、さらに実証的な学際的研究と、エビデンスに基づく検討プロセスが必要となる。伝搬様式に関する用語は、医療現場だけでなく、教育現場、交通機関、職場など(ただし、これらに限定されない)における現行の対策や勧告にも影響を及ぼす可能性がある。特定の病原体への感染対策や、病原体に非特異的な衛生習慣のような感染対策、また感染様式がその時点では明らかでない病原体の感染対策への影響を検討するためには、多くの多様な専門分野の知見をまとめる必要がある。
4.6 主要な研究課題と次のステップ
物理科学的研究では、感染リスクを低下させるためにとりうる介入策を考案するために、空気経路での粒子の動きを理解することの重要性が強調されてきた。しかし、特定の病原体に対する感染と緩和策の介入効果を測定する研究は、臨床試験やその他の研究タイプを計画・実施する能力が、病原体自体(およびその特性)、病原体が伝播する環境、最終的に病原体に感染する個人に関する要因の不均一性に大きく影響されるため、困難である。緩和策の評価には、十分に計画された調査研究が必要である。
感染予防の指針は、特に緊急事態において医療専門家や科学者が考慮すべき幅広い要因に依存している。しかし、感染メカニズムや感染予防策・戦略に関する確かなエビデンスを構築するために、学際的な研究をさらに計画・実施する必要性があることは明らかであり、緊急の課題である。今後の研究には、動物モデル、ヒトでのチャレンジ実験、その他の観察研究および介入研究の研究デザインが含まれるべきである。
次のステップとして重要なのは、ここで述べた定義を、より広範なエビデンス蓄積やリスク評価プロセスにどのように適用するかを検討すること、より広範なIPCや臨床研究、疫学的エビデンス蓄積、将来のIPC対策、さらには工学、物理学研究、エアロゾル科学に情報を提供することである。行動科学的研究は、IPCや公衆衛生対策の受容、採用、行動を実現するために重要である。
第5章 結論
この世界的な技術協議のプロセスは、多くの影響力を持つ経験豊かな専門家たちによる協調的な努力の賜物であった。このようなデリケートな問題や用語について、ある程度のコンセンサスを得るために直面した困難にもかかわらず、進展はあった。WHOは、提起された懸念や合意されていない点を認識し、今後の作業において、これらに対処していく。
感染性呼吸器性粒子」という用語でコンセンサスを得たこと、粒子サイズの厳密な二分法から脱却したこと、いくつかの影響因子により、より小さなIRPが短距離でも長距離でも伝播する可能性があることを受け入れたことは、すべて大きな成果である。空気伝播または直接落下様式のいずれかを介した空気中のIRPの伝播を表す包括的な用語として、「空気経路伝播」という表現を使用することを考慮すれば、非常に複雑な問題を単純化できるが、医療従事者や一般の人々に理解されるためには、特定の啓発と訓練が必要である。
このように専門用語の使用が変化することは、その及ぼす影響を伴う。従って、この文書に含まれる記述は、さらなるエビデンスの検討、緊急かつ詳細な議論、そして提案された変更を病原体ごと、分野ごと、および/または状況設定ごとに実施するための関連資金を伴う学際的研究の出発点とみなすべきである。
参照文献
(略)
付属書5. 議論のまとめ
全会的な合意事項
グローバルTCGの議論、及び協議期間中のグループ管轄区域内の他者とのやり取りの結果、以下の問題に関して意見が一致した。
・ IRPの大きさは連続スペクトルをなし、小さい粒子と大きい粒子を区別するために決定的なカットオフ値を適用すべきではない。大きさの連続スペクトルを認めることで、「エアロゾル」(一般に小さい粒子)と「飛沫」(一般に大きい粒子)として一般に知られている従来の用語の二分法から離れることができる。
・感染者の気道から放出された後、空気中を移動する乱流霧雲の中でIRPがどのように排出されるかについては、コンセンサスが得られた。IRPの軌跡は、呼気の勢いや量だけでなく、周囲の気温、湿度、気流の大きさや速度、空間内の分布など、いくつかの環境条件を含む多くの要因に影響される。これらの要因は、IRPにおける病原体の生存率および感染力と相まって、感染確率に寄与する。
・IRPの伝播リスクを軽減するためには、屋内空間における適切な換気と気流パターンが重要であるとの意見で一致した。
・病原体によって伝搬様式が異なること、あるいは異なる伝搬様式が混在している可能性があることに同意した。さらに、病原体は、その発生頻度、病原性、治療可能性、宿主や社会への潜在的影響において様々である。つまり、感染予防策や感染緩和策は、病原体や環境ごとに異なる調整が必要なのである。したがって、IPCガイダンスを含め、感染緩和策に関する病原体や環境に特化したガイダンスが必要である。すべての病原体について、すべての感染様式に対する緩和策を一つのカゴに入れ、「1つのサイズですべてに対応する」アプローチを適用しようとすることは、正しくないか、現実的でないという認識が示された。
・上記のように、さまざまな感染シナリオを考慮して緩和策を調整する必要があるにもかかわらず、「空気経路伝搬」という、より一般的で広範な用語を使用することで、病原体が空気を介して感染するという全体的な概念に言及し、本文書で概説した IRP の空気伝搬/吸入および直接落下による伝搬様式を網羅することは、特にこれらの複合的な概念を一般市民に説明しようとする場合に、有用な記述語であることに、全員ではないが、大半が同意した。
コンセンサスが得られていない領域と影響に関する懸念事項
本グローバル技術協議の結果として提示された(そして上記に要約された)既存の用語のいくつかの改訂 は、他の分野でのこれらの用語の使用に大きな影響を及ぼす可能性があることが認識されている。
もし、ここで認識されているように、小さいIRPが短距離でも長距離でも感染する可能性があるのであれば、そしてもし予防原則が適用されたり、あるいは異なる病原体の頻度、罹患率、治療法(これは国々の間でも国内でも大きく異なる可能性がある)に応じて選択的に予防原則が適用された場合、リスクに効果的に対処するためには、フルの「空気予防策(airborne precautions)」(現在そう呼ばれているもの)を適用して、専用の病室などの有無にかかわらず、N95マスクの使用など相当なIPC対策を、疾病の危険にさらされているすべての人に適用する必要が生じるかもしれない。これは法的、物流的、運用的、財政的な帰結をもたらし、公平性とアクセスに関して世界的な不都合な結果を生じることになるであろう。
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