ヒーローインタビュー #3(終)
うさぎは、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていました。果たして本当にこの道で合っているのだろうか。常に不安なので、たくさん道を尋ねました。そこで知り合った動物たちと、あるときは踊り、あるときは飲み明かしました。競走のことを忘れているような感じさえありました。これで本当にゴールまで辿り着けるのでしょうか。
かめは、脇目も振らずに歩きました。最短ルートを外れることなく、アクシデントに見舞われるでもなく、全てが順調でした。予定のポイントで休憩し、予定の宿で泊まりました。体調を保つため、酒は飲まず、早めに寝ました。誰も邪魔はしませんでした。
こんな具合ですから、世間では誰もが、かめが勝つと思っていました。
「そりゃあ、かめさんが勝つでしょうよ。」
「そうだよ。あれだけ準備しているんだもの。さらに、うさぎさんはちゃらんぽらんときている。昨日なんか、東の山の屋台街道で朝まで飲み歩いたそうだよ。」
「なんだいそれ。面白そうだなあ。」
「一昨日なんて、南の森のハンモック横丁で、とりさんたちの歌を聴きながら一日中寝ていたそうだよ。」
「なんだいそれ。気持ち良さそうだなあ。」
「それでもやっぱりかめさんが勝つでしょうね。」
「当然だね。」
十日後、先にゴールしたのは、やはりかめでした。頭でずるずると引きずるようにしてゴールテープを切りました。やっぱりね、というような観衆の顔には、予想が当たったにもかかわらず、どこか悔しげな、残念そうな様相がありました。
半日遅れでうさぎが到着しました。おそらく二日酔いなのでしょう、ふらふらとゴールテープを切りました。かめのゴールからしばらく時間が経っているにもかかわらず、多くの動物たちがうさぎを待っていました。
その後、かめのヒーローインタビューが始まりました。ゆっくりとした口調で話し始めました。
「みなさんの、温かい声援に、支えられて・・・」
「それにしても、うさぎは一体どこをほっつき歩いていたんだろうな。」
「さあね、本人に聞いてみようよ。」
「・・・ええ、本当に勝てるのか、途中で、不安になったときも・・・」
「お、あそこにいるみたいだ。やけに動物だかりができているな。」
「僕たちも、土産話をちょっと聞いてこようよ。」
「・・・ええ、やはり、諦めない気持ちが・・・」
かめのヒーローインタビューは定刻に予定通り終了しました。うさぎは、杉の木の下で動物たちと飲み明かしました。