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#13.ユニバース【曲紹介・感想】

「主人公は君さ 君だけのストーリー」

夏代孝明氏を初めて知ったのは、halyosy主催のニコニコラボ「Blessing」。第一印象は特徴的声質でこそあったけれど、真っ直ぐでクセがなく爽やかな歌声が魅力の「歌い手」でした。

そんな彼は昨年ついに歌い手の垣根を越え、自らの曲で次世代を担うシンガーソングライターとしてメジャーデビュー。並行してニコニコでの歌い手活動も継続していきました。

そして、ちょうど一年ほど前となる2016年12月。メジャーデビューをして大きく前進した彼にとって、その1年の集大成とも言えるべき作品が動画サイトに投稿されました。そう、氏のボカロP処女作「ユニバース」です。夏代さんの曲で一番好きな曲。ザ・メロディアス。

ノンフィクション

ぐりーんは地元の友達と一緒にバイトをやっているんですが、夜勤なのでどうしても小腹が減りがちで、バイト後には24時間やっているようなお店にご飯を食べに行くことが多々あります。そうすると出てくるのが将来にまつわる話題夢、就職、結婚。あることないこと語り合います。ユニバースはまさにそういうシチュエーションを描いた楽曲で、夏代さんもまた同様の経験を元にユニバースを作ったといいます。

こういった背景とGUMIちゃんの明るくハキハキとした歌声も相まって、曲を聴けばPVがなくてもスッと情景が脳裏に浮かぶんですね。むしろ失礼なことに、普段PVで見ないからどんなPVだったか忘れかけてるんですけど自分でアニメーション作り上げて補完できちゃうような。こういう曲ってなかなか多くないので、その時点ですごいなあと。

「構成」とか 「キメ」とか

この曲を音楽的な視点で語るなら、僕はこのアニメOPさながらの爽やかさと疾走感の理由が説明したい!と思って考えました。それが「構成」とか「キメ」とか。

まず「構成」の話。サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏(ギターソロ)→ラスサビ(転調)→アウトロと、見ての通りド王道な感じになっております。ギターソロ以外の間奏部分はアウトロも含めて全部ほぼ同じフレーズが演奏されています。これだけ見ると単調で面白みに欠けるな、とはなるんですが実際はそんなことはないんです。

ユニバースにおいては、Aメロとサビは1番、2番、ラスト間でメロディが変わりません。1番と2番でAメロの小節数を変える(2番は1番の半分の長さにする)というのもよくある構成ですがそれもなし。この曲展開の早さが疾走感に直結してるのもあるかもしれないですね。それで、今回注目したいのがBメロ

疾走感を持たせるという話をしましたが、Bメロだけは2番の方が倍の小節数になってるんです。聴いてみてほしいんですけど、長さを変えたことの効果もあって2番Bメロがとても印象に残ります。なんというかそこだけメッセージ性とか、色んなものの重みが増しているような。

そしてそれを裏付けるかのように重みがある歌詞の中身。

雨に打たれすぎて笑ってる君を見て僕も笑っちゃった!

対比するためにまずは1番のBメロを見てほしいです。「!」が歌詞に柔らかさを与えてて、可愛いらしいというかなんというか。そして曲中のどの部分よりも、直感的にアニメーションが脳内に浮かぶような情景が描かれているように思います。

「他人は他人で君は君だから 違うとこがあるのが当然なんだ」
「だからこの先にある未来は 当然君だけのものさ」

フォーカスしたい2番の歌詞。カギカッコでセリフ、メッセージ感が際立てられてますね。元々Bメロは歌詞のノーツ毎も長くて、聴き取れるように、はたまた聴き手に伝わるように作られています。

そして、この2番のBメロの内容こそがこの曲を通して伝えたいメッセージを端的に、かつストレートに表現した部分になってます。だからこそここは特に噛み締めて聴いてほしいところになっていて、それが構成にも現れている、というのが僕の考えです。

で、もう一つが「キメ」の話。キメっていうのは、楽曲にメリハリを与えるためにブレイク(リズムやメロディの空白部分)したり、すべての楽器で同一のフレーズを演奏したりという技法です。この曲でもまさに楽器隊のブレイクが楽曲にメリハリを与えています。

◯1サビと2サビの前
◯ラスサビ「大人になっていくんだよ」

の部分がそうです。それぞれ聴いてみてください!この部分が曲の単調さを無くし、メリハリの効いた疾走感を与えてるというわけです!

それからこの曲、地味に音域が広いんですよね。音域が広いとメロディラインに幅を持たせられてサビの勢いも表現しやすくなると思うんです。けれど、落ち着いた低音と突き抜けた高音の両方をしっかり歌い上げられるシンガーはなかなかいない。ボカロだからこそ卒なく歌いこなせるキーなことを実感します。

人に歌われるからこその良さも

つい上でボカロだからこそといったけれど、これに挑戦していく存在が「歌い手」です。夏代さんも含め、歌い手出身のボカロPの楽曲には「歌ってみた」が投稿されやすい傾向にある気がします。ユニバースは曲内容が曲内容なので、人間歌唱によって更に魅力が増すこともあるというのが僕の持論です。

ここではその中からいくつかを紹介させてほしいなと思います!賛否は出ると思うんだけど、こういうのも定期的にやりたい。もちろんいい点もあればもったいない点もあるとは思うんだけれど、この場では褒めしかしないです。

男性

夏代孝明(selfcover)
模範解答。高い歌唱力で丁寧に歌い上げられてます。夏代さんの2ndシングル、弱ペダのOP「ケイデンス」のカップリングとして収録されてるので、メジャーにも流通してる音源でもあります。そりゃ悪いわけがない。

天月
再生数、コメ、マイリスのすべてで本家もセルフカバーも抑えてナンバーワンになっており、高い評価を受けている大手派生。比較的声質が幼めなこともあって、大人になっていく中途で夢を語り合うこの曲のシチュエーションによくマッチしてます。

もるでお
元々歌い手さんじゃなくて、声優さんの声真似に定評がある生主さんみたいですね。そうしたキャリアは歌声にも現れています。声質がいい。天月さんとは違うけど、曲のイメージによく合った歌声です。

無音(むね)
彼もまた折原臨也の声真似を中心にやってる生主さんらしいです。言われてみるとちょっと神谷浩史さんっぽい歌声で、他の人たちとは若干異なるベクトルでこそあるけどイケボですね。

女性

lino
伸びのある明るい歌声が特徴の古参歌い手。Bメロ(特に2番)を力強く歌い上げてくれてるのが聴いててニヤッとしてしまいます。ラスサビも音程にアレンジを加えてて、そういった意味でも個性が出てます。

ミュリ
外国人の歌い手さんみたいなんだけど、日本語がめっちゃ上手くて聴く分には日本人と遜色ないからすごい。歌唱力も高くて、この曲のキメの部分とか丁寧に表現されてるからオススメです。

ギリンカ
こちらも韓国在住の外国人さんらしいのだけれど、流暢に、そしてパワフルかつ個性的に楽曲を歌い上げてる歌い手さん。ハイトーンの抜けも良くて疾走感が更に増してて良きです。

脱線ぐーぅ
聴き始め数秒でわかるけど、ぐーぅさんはコーラスの厚みがとんでもないです。歌声もかなり個性が立ってて、わざとタメたりテクニカルな側面が目立つ歌い手さん。

(ちなみにユニバースに限った話をすれば、僕は夏代さんのセルフカバーとミュリちゃんのバージョンがリスインするレベルで特に聴いてます)

そして、ここぞとばかりにぐりーんも歌を重ね録りして公開できるnanaというアプリで「ユニバース」を歌って投稿してみたので一応貼っときます。

https://nana-music.com/sounds/034b89fa/

文(note)も絵も歌も何も、人に見てもらえばどんどん上手くなるっていう希望的観測で、恥はかきすててやってるんでよしなに(?)

総括

ひとつし忘れてた話を。一見明るいこの曲なんだけれど「叶わない夢ばっか」とか、サビの初っ端で結構ネガティブでリアルなこと言ってるんですよね。それが明るい曲調で補われていると思うんですが、綺麗事だけでなくしっかり現実に向き合った描写も魅力だということを最後に言わせてください!

ちなみに綺麗事を並べまくった曲はそれはそれで割と好きです(笑)

最後の最後に、このnoteを書くに際して見つけたインタビュー記事をば。

夏代孝明 インタビュー アニメ『弱虫ペダル』OPテーマを歌い見えたもの 新シングル「ケイデンス」&楽曲制作について語る

この中で、僕も触れたユニバースの作曲の経緯などについて語られているので是非読んでみてくださいね!

ちなみにぐりーん、年内にvocanoteを感想と振り返りを合わせてこれ以外に3〜4本くらい出したいというバカみたいな野望を抱いてるのでよろしくお願いします!

#vocanote #VOCALOID #曲紹介 #感想 #歌ってみた


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