#19.ミルククラウン・オン・ソーネチカ【曲紹介・感想】
────わたしの、ちっちゃな戴冠式
事の発端は、ぼからんまとめ掲示板で過年度の10選が実施されたことでした(14年10選はこのnoteを投稿した6日から行われているようです)。2016年頃から人口を増やし、17年、18年と盛り上がる内に板内企画を多々実施してきたまとめ掲示板のこういう動きを僕個人にとっても過去の曲を振り返るいい機会として重宝しています。
というわけで新年度お初です!ぐりーんです!今2014年10選を組むと、当時ハマってたな〜って曲と、今でもずっと聴いてるな〜って曲、あの時は知らなかったな〜って曲、色々あって面白いです。その中から今回は、当時延々とリピート再生していたユジーさんの「ミルククラウン・オン・ソーネチカ」のvocanote!
久々の今回は原点回帰、雑談色強めで進めていきますね!
生まれた小っちゃな戴冠式
初めてこの曲を聴いたときの衝撃は忘れられません。いわゆる2013年までのメインストリームだった高速なメロディー、意味深な歌詞の要素は持ちつつ、どことなく穏やかで可愛らしい雰囲気をたたえており、新たな時代の到来すら感じさせたと言っても過言ではありません。
意味深な歌詞についてですが、簡単に僕の解釈を伝えておくと「アルビノであるがゆえに虐められてしまった女の子の歌」だと思っています。
◯「ミルククラウンを戴冠される」=アルビノとして生を受ける
◯「お姫様にでも取って代わらせて」=特別な存在(お姫様)ではないのに、どうして
曲題や曲中に登場するソーニャ(=ソーネチカ)はドストエフスキーの「罪と罰」の登場人物であるソーニャを意識してるものだと推察されます。簡単に作中のソーニャの生い立ちについて調べてまとめたものを以下網掛けに記します。
極貧な家庭に育ったソーニャは生活費を賄うためにと、神経症を抱えていた継母に強要され18歳にして売春婦になります。自らの処女と引き換えに3万円を手にし、なんとか家族は家を追い出されずに済んだわけです。
その後もアルコール中毒だった父の事故死、親友が強盗殺人をしてしまう場を目撃するなどの不幸に遭い続けた彼女。自殺にすら追い込まれかねないような不幸の連続を、彼女は神への信仰心をもって乗り切っていきます。
こうした世間の不条理に苛まれつづけるソーニャに、アルビノの少女は自分を重ねていたのではないでしょうか。だから愛の教典、聖人の名文句に向き合いますが少女にはちんぷんかんぷんだった。名文句がどんなものだったかは想像の域でしか語れませんが、少女にはそれは綺麗事、虚構に感じられたのかななんて思います。
色づいてく花が今日、微笑んだって
歌詞解釈のお話はこの辺にして、次は少し音楽的なお話をしましょう。
これは共感を得られるとは思ってないことなのですが、この曲は日は差し込んでるんだけど雲が空を覆う、そんな明るい日に俄かに降り始める雨に降られながら聴くとめちゃくちゃエモいです。高校時代に一度だけその経験があって、路地を駆け抜けながら、なんというか神聖なものに触れた気分になったんですよね。みなさんも是非(実践して風邪引かないでね)
軽く優しいコードギターの音色とこれまた軽いクローズドハイハットの音色から始まるイントロは、ピアノとバスドラを加えお洒落さを増し、スネアの入りを合図に激しさを増します。この緩急が美しい。後ろで鳴ってるキラキラとしたSEもとても綺麗です。
Aメロの雰囲気はこの優しいイントロの雰囲気に近しく、ピアノフレーズとギターの柔らかい音色が印象的。
(1番の)Bメロはカッティングがもたらす爽やかさもさることながらベースラインの主張も激しくなります。不安定で今にも爆発しそうな心内を察します。
サビのギターは歪んだオクターブで、バッキングに徹するスタイルに変わります。ピアノがメインになるので、激しさも増しつつ、そのお洒落さは健在です。
間奏や後奏は、そこだけに特有の鍵盤の音作りと印象的なフレーズで可愛らしさを表現。思わず聞き惚れてしまうような感じです。
2番でBメロ(Aメロの最後も含む)がまるで別展開になっているのも注目ポイント。「堂に入った〜」からの高速パートでは正に「吐いて捨てるほどありふれた無垢な感情」を吐露していく様相が感じ取れます。これについては、Cメロも似たような印象を受けます。心の叫び、少女の想い、浮世への嘆き。
上手に笑うための方法をこそ、教えて?
流れるような心地よさと、かわいらしさ、それでいて感じられる哀愁の秘密はコード進行にもあると思います。
サビの最初の4小節の進行は
E → G#m → A → Am/C
となっていますが、最初の二小節によってカノン進行に類似した(本来のカノンであればE→Bと進むのですが、G#mとBは同じ音を用いる平行調の主コードなので類似している、という理屈です)心地よさが付与されているような印象を受けます。
それ以降は順次階段を上り下りするようなコード進行であるクリシェが展開され、ベースラインが変化していきます。これが目まぐるしいサビの展開の印象にピッタリとハマっていきますね。
そして同じように目まぐるしく変化し、前を向こうとするも不運に見舞われつづけるソーニャの半生に自分の姿を見た少女の心情もまた、クリシェの如く上に下に移ろっていくのだと思います。それでいて滑らかで、一つの流れとして成り立っているのもまた人生のようですね。
「大げさ」ってつぶやいて
僕自身、アルビノの人間にお会いしたことはないですが、よく聞くのはアルビノはアルビノであるゆえに紫外線などから生体機能をもって身を守ることができず長生きできないという話です。「美しい」というイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、アルビノは生まれながらに「お姫様」なわけではない普通の人間なんですよね。そんな心情を浮かべて歌われたミルククラウン・オン・ソーネチカ。フィクションだとは思いますが、そこには実際にありうる過酷な現実が見透きます。
そういうものとして改めてそこにある「不条理な世の中」とそこに向かう少女の「ちっぽけさ、儚い美しさ」を感じ取ってみてくれれば幸いです。今回は深入りしませんでしたが、「宗教性」の観点などを持つとまた違った聞こえ方がするかもしれませんね。
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