【”勧誘”系の行為を行う従業員への対応について】
昨今、急にご相談が増えている内容として、いわゆる「自己啓発セミナー」や「マルチ商法」的なものを社内で広めている、入会か購入を勧誘する従業員がいて困っている、というものがあります。
日本や海外で四半世紀も人事マンをやっていると、日本でも海外でも「これ
系」の問題には何度かぶつかってきました。
「これ系」というのは、まぁ、別に個人でやる分には「ご勝手に」で、法にも触れてはいないんだけど、社内でどんどん勧誘をするのは、やはり遠慮してもらいたい、、、的なものですよね。
これ系の問題は、こちらが強く出ると「私の自由だ!」的に話か、「わかりました」と納得したふりをして、会社にバレないように「地下活動化」するか、になってかなり厄介なものです。
こういった問題に会社としてどう対応するか、については個別の事情はあると思いますが、経験上、「4つのポイント」がありまして、これさえ抑えておけば「大問題には発展しにくいかな、と思っています。
今日はそれについて話したいと思います。
(1)「思想信条、社外活動の自由」については尊重する
これは、「宗教」「自己啓発」「スピリチャル」「マルチ商法」、その内容や行為自体を「非社会的」「異常」などという方向からは責めない、ということです。
これは「思想信条の自由の尊重」というのもありますし、「これ系」の方は、そういう反対に対する「カウンタートーク」は磨き上げられているので、あまり意味がないというのもあります。
極端な話、「地球のためには人類が滅亡することが最善だ」とか言い出しても、「なるほどね。”あなたは”そう思うのですね(=私は同意するかどうかは別ですけど)」で通すしかありません。
(2)「困っている人がいる」「困った状況になっている」という事実ベースで話す
じゃあ、野放しにするのか?という話になりますが、これは、攻略ポイントとしては、とにかく事実として「就業中に、会社が仕事として依頼・規程していない行為(セミナーの内容を布教する、など)や、それについて、苦情を述べている従業員がいる(それが正しいかどうかは別。とにかく、事実、苦情を述べている人がいる)という「事実」を軸に「会社としても困っている」が本筋であろうと思います。
「困ったことになっている」「ルールとは異なっている」ことを事実ベースで淡々と伝え、そこに善悪の価値観や好悪の感情を入れないことが大事です。
(3)「あなたはどうすべきと思いますか?」を繰り返す
そして、こういう「空中戦」的な交渉は「先に選択肢を提示」した方が明らかに不利になります。
上述のように
「このような事実(規則と違う行為や苦情を言っている人間の存在)がいるのですが、あなたは自分自身でどう思いますか?」
という「問いかけ」を中心に対話すべきです。
問題の従業員が「私はどうすればいいですか?」と聞かれても、とにかく、
「まずはあなた自身が、この会社の社員としてどうすべきか、という意見や希望を教えてください」
ということで、先方に先に発言をさせる、先方が自分自身で決めた、という方向に持っていくべきです。
それで、「私は何も悪くない。この会社の従業員の何名かが不愉快に思って会社を辞めても、これを広めることによって救われる人がいるのだ!」という具体的な話が出てくると会社としても、「それは会社としては問題である」という「ツッコミどころ」が出てくるので、そこが出てくるまで、とにかく相手中心に選択肢を決めさせる、ということです。
(4)「あなたなしでは生きられない」ではないことを「暗に」示す
で、交渉上、大事なのは、いくら重要性の高い従業員の方であっても、こういう交渉において、相手が
「会社は絶対、自分を解雇できない。相手はちゃぶ台をひっくり返せない」
と思われてしまったら、絶対に有利には働きません。
かといって、これは「最後の切り札」ですので、出してしまったら終わり、でもあります。揚げ足も取られますし、下手すると「会社による解雇をちらつかせた脅迫だ」と言い出す可能性もあります。
ここは
「あなたの思想や行動については自由だが、我々は従業員個別の利益を優先して考えなければいけない苦しい立場でもある」
的な感じで、暗に「そう(=解雇)したくはないが、せざるを得ない時はこちらも、どんな被害があろうとも、その覚悟がある」
と示すのが交渉のテクニックといえます。
(まとめ)
とにかく、この「4箇条」を守って、問題の従業員と話をするしかないと思います。
こういう「それ系」の問題は、本当に上記の4箇条の1つでも踏み外すと、「弾圧だ!」「個人思想への介入だ!」とか、むちゃくちゃややこしい問題に発展するのでお気をつけてください
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以上、少しでもお役に立てば幸いです
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(アジアゲートベトナム代表 豊田英司 )