第765回「豊田英司の"今日のベトナムニュース解説"」「観光用のゾウ」の過酷な境遇
本日の記事:
「ダクラク省、明日から象乗りサービスを休止」
原題:
" Daklak suspends elephant ride service tomorrow "
記事リンク:https://english.thesaigontimes.vn/daklak-suspends-elephant-ride-service-tomorrow/
【本日のポイント】
(1)ベトナムの中部都市ダクラク省では観光サービスとして長年人気の「象乗り」サービスを廃止していくこととなった。
(2)象は飼育化での繁殖が難しく、また、捕獲や飼育の過程での「残酷な方法」にも非難が集まっており、このような措置に至ったと推測されます。
(3)長年、象乗りサービスで生計を立てている人々はベトナムにはたくさんおり、また観光地の人気サービスでもあるので、完全な廃止ではなく、「もっと象に優しいサービス」の形を模索し、切り替えていく計画があるそうで、人間と自然動物の共存の難しさがあります。
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【解説】
アジアゲートベトナム代表の豊田です。
さて、今日の記事について。
ベトナム中部の代表的な高原地域であるダクラク省ののBuon Don 観光センターは、今日2月10日から「象乗りサービス」を停止する、と発表しました。
「ん?雨かなんかで川が増水した?それとも観光客が戻ってこないから採算性?」
とか思って記事を読んだら「動物保護」の観点からだそうです。
同省は地元の象の生息数を保護するため、象乗りを段階的に廃止する計画を持ち、地域のサービス提供組織がそれらに従ったものだそうです。
ダクラク省といえばコーヒーの産地であるバンメトートが有名で、夏の避暑地でもあり、結構、観光旅行に行く日本人の方も多いので、FBのアイコンで「象乗り」の写真、使ってる人もいますよね。
私は「象乗り」の経験はないんですが、まぁ、その場所に行って勧められたら、乗ることにやぶさかではないかな、くらいの感じではあったんですが、下記の記事を読んでしまったので、多分、一生、「象乗り」することはないでしょうね。。。
The truth about elephant riding(「象乗り」サービスの真実)
(Animals Asia)
このサイトはアメリカの動物保護団体が特に「アジアの動物虐待」にフォーカスして、その防止、廃止を訴えているものです。
この記事では、まず冒頭に
「毎年、世界中から観光客が東南アジアで休暇を過ごす際に、「象乗り」を楽しみますが、これを絶対にやってはいけない理由を説明します。」
と、ガツンときます。
「象乗り体験は動物虐待や野生動物犯罪を助長し、アジアゾウを絶滅の危機に追いやっている」
として、その実態を記載しています。
まず、私、これは知らなかったんですが、飼育下での象の繁殖というのはむちゃくちゃ難しいそうです。ベトナムでは、40年間飼育下での出産に成功したゾウはいないとのことで、調べてみたら、こんな記事がありました。
飼育歴134年でついに成功! 上野動物園に「ゾウの赤ちゃん」が誕生するまで
なので、そもそも「飼育すること」自体が、象の数を減らしてしまう原因になるんですね。
そのため、観光客向けの象の大半は、野生から密猟されたものであるのが実情だそうです。
そして、密猟された象を観光用に「従順にする」ためには、人間を恐れさせなければなりません。
そのために行われるのが、「“クラッシュ(破壊)”」と呼ばれる方法です。
人への絶対服従を理解させるため、捕らえられた小象はすぐに四肢を縛られ、餌も水もなしに手鉤や刃物で暴力を受け続けるの洗礼を受けます。
ゾウは頭の良い動物なので、数日から数週間も続くこの方法で、小象は精神的・肉体的恐怖で完全に精神を「破壊」され、一生、人間に逆らえなくなるそうです。
完全に「トラウマ」になってしまう、ということです。
ひどい、、、、
これを知ってしまったら、もう「象乗り」はできないですねぇ、、、
バンメトートでは今年3月10日から14日まで開催されるコーヒーフェスティバルでも、恒例の象のパレードを行わないことを発表しています。
ダクラク省では現在、37頭の象を保有していますが、1980年代には500頭を超える象がいたそうで、その数は激減しています。
日本でも捕鯨問題は大きな問題ですし、そもそも、世界中の多くの野生動物をハンティングし絶滅に追いやったのは新大陸における欧米人であって、象を使った観光サービスで生計を立てている人々もいるので、きれいごとばかりでいいのかな、という複雑な思いはしないでもないんですが、やはり、こういう実態を知ってしまったら、少なくとも私は象乗りサービスを使うことはないでしょうね。。。
以上 豊田英司
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