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【出産・育児をする女性スタッフの定着率向上のための施策案】


ベトナム人事労務コンサルティングのアジアゲートベトナム代表の豊田英司です

ベトナムでは管理職に占める女性従業員の割合は日本に比べて明らかに高く、出産前後、および育児中の女性従業員にとって働きやすい会社にする、ということは今後、ベトナムで良いスタッフを確保する上で非常に大きなポイントになるかと思います。

正直、私がベトナムに来た10数年前はハノイやホーチミンのような都市部ですら、給与に対して家賃が安かったので、子供が小さい時には田舎に住んでいる両親を招いて面倒を見てもらう、というようなこともできました。

しかし、もはや、ベトナムの都心部の家賃は急増しており、三世代同居をするような広さの家を持つことは容易なことではないので、「田舎の両親、呼び寄せ作戦」も使いづらくなってきました。

と、いうことで、ベトナムにおける女性従業員の採用力向上、離職率低下のための人事施策として、実際に行われているもの、現在、検討をされているものとして以下のようなあるのかな、と思います。


(1)柔軟な勤務形態の導入


出産後の女性従業員に対して、リモートワークやフレックスタイムなど、柔軟な勤務形態を提供する。

これはベトナムでは、相当、効果があるだろうな、とは思います。

この話をすると「ホワイトカラーならともかく、作業員では、、、」という話も出てしまいますが、まずはホワイトカラーからトライしても良いのかな、と思います。

ただ、ベトナムの場合、日本のようにフレックスタイム制度を導入するための法的な整備がされておらず、就業規則で定められた時間とは違う時間で出社、退社していると、労働監査などで「きちんと時間外手当を支払っていない」というようなトラブルになりかねませんので、実際の導入に関しては注意が必要です。

(2)復職支援プログラムの導入

「復職支援」というと大袈裟ですが、簡単なところで言えば、出産・育児の経験がある先輩スタッフが、初めて経験する女性従業員に、出産前後〜育児中の仕事の進め方やキャリアについて相談に乗ってあげる、というレベルからスタートでもいいと思います。これによって、会社としても、それぞれ個別の事情を早めに把握できるので、対策を立ててあげることもできますので「そんなこと、早めに言ってくれれば対応したのに」というような理由での離職を減らすことにもつながります。

出産後に、会社に相談もせずに、「どうせ、会社に相談しても対応してもらえないだろうから、、」と転職や離職をしてしまう女性従業員もいます。

従業員と経営側では、情報も裁量権も違いますので、経営側からすると、

「それくらいのことなら対応可能だし、過去にもやったことあるよ」

という話が結構あったりします。

まずは妊娠、出産、復職をする女性に対して、必ずコンタクトしてお話を聞く体制を整えることは離職防止に大いに有効かと思います。

(3)社内託児所や保育補助の提供


社内託児所の設置や、外部保育施設を利用する場合の費用補助。

まぁ、社内託児所に関しては、ベトナム政府が推進しているように見える割には、実際に実施しようとすると

「工業団地内で、別の用途の使用許可はできない」

とか規制が厳しかったりして

「なんじゃ、そりゃー!」

となった実例も見ております。

ですので、この「企業保育所」については、現在のベトナムで、どこまで現実味があるのか?は、なんとも言えないところですが、こういった直接的な支援はもし実施できれば極めて効果が高いと思います。

(4)産後の健康支援・メンタルヘルスケア


出産後の女性は、身体的・精神的なストレスを抱えることが多いため、産後の健康診断やカウンセリングサービスを提供し、従業員が健康を維持できるようにサポートします。
日本では、かなり導入されている事例もあるようですが、ベトナムでは精神科医の人数が少ないのでほとんど、このようなメンタル面でのサポートや、その支援は行われていないと思います。

ただ、上述のように、先輩社員がマンツーマンで定期的に相談に乗ることで、離職を防げるケースも見てきておりますので、「出産後、定期的に話を聞いてあげる」ことを施策と行うことには意味があると思います。

(5)受け入れる側の上司やチームの出産育児への理解度の促進


これは、今までの話とは逆に出産、育児をするスタッフの所属する部門の上司やチームメンバーに対して、出産後の従業員に対する理解を促す研修を行い、女性従業員が復職後に職場で適切にサポートされる環境を整えます。

これは、今、日本でも「子持ち様」などというキーワードが話題ですが、「子供を持ってる人とチーム組んだら、残業できないから仕事をこっちに振られて最悪!」的な話はベトナムでも、ないわけではないです。

こういう「子供を持つお母さんをみんなで応援すること」というのが会社的にも社会的にも意義があるんだよ、ということを一緒に働く仲間の中でも意識を上げていくことも大切かと思います。

(6)育児休業制度の拡充


育児休業は公的には6ヶ月ですが、これに付加的に会社として数ヶ月、休暇を与える、というアイデアはいくつかの会社様から提案されたことはあります。

ただ、これを話すと、ベトナムの人事部員の多くは

「それですぐに退職したら、休暇を与え損だ!」

という話が結構出て、大体ぽしゃっているなぁ、、というのが実感としてはあります。

まぁ、これはもう、そういう近々での効果とは別のところに狙いがあるので最後は「企業方針」レベルの大きな話なんだとは思います。

海外留学や福利厚生の話は、「それを与えて、すぐに辞められたら、会社は大損」敵な負の側面の話が必ずつきまといます。
しかし、これを採用時にきちんとPRすることで、採用力強化になる、という面もありますので、ここは企業として、何に重きを置くか、という話かと思います。

(7)キャリアパスの再設計


出産後にキャリアの変更をする、というのは日本ではよくある話ですよね。
一番多いのは営業から事務職への変更などですよね。

まぁ、これはベトナムでは、職種間の異動がそもそも少ないので、ちょっと効果は低いとは思いますが、実際にあった例としては、女性の人事マネジャーが、お子様が生まれた後、

「子供との時間を多く取るために一般スタッフとして勤務させてほしい」というお申し出があり、基本給などの条件面も話し合って、以前よりも低い条件で合意した事例はありました。

ちょっと特殊なケースとは思いますが、一案として加えておきます。
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以上、少しでもお役に立てば幸いです
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(アジアゲートベトナム代表  豊田英司 )

◇質問、連絡等ございましたら下記までご連絡お願いします◇
Email:toyoda@asiagatevn.com

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