【「メリハリのある評価」の”落とし穴”】
【「メリハリのある評価」の”落とし穴”】
ベトナム人事労務コンサルティングのアジアゲートベトナム代表の豊田英司です
人事評価制度のご相談でよく言われるのが
「もっとメリハリのある評価制度にしたいんですよ」
という言葉です。
これはもう少し解析度を高めた言葉にすると
「人事評価の良い人と悪い人で得られる報酬の差額を拡大したい」
ということです。
もっと解析度を上げれば要するに
人事評価のA、B、Cの違いによる昇給、昇格、賞与、手当などの差額を拡大したい、ということです。
で、この前提としては
「人間は、努力による金銭的な見返りが大きいほど、やる気を出す」
という仮定です。
で、まぁ、これはいいんですが、もう1つの仮説をみなさん、意識的にか、無意識的には、すっかり忘れてしまってます。
それは
「格差が拡大するほどに、人はその”評価”について非合理的に怒りを覚える」
ということです。
難しい書き方しましたが、要するにジャンケンポンで十円もらえるかどうか、だったら、誰も文句言いません。
でも、ジャンケンポンで一億円がかかってたら、負けたとしても
「0.01秒、後出しだった!」
「そもそも、グーとチョキなら、グーが勝ちとは誰も言ってない!説明不足!」
とか、意地でも、文句を言い出します。
これが人の性です。
こうなると、経営者側はどうするか?
「じゃあ、成果を出したか出してないかをできるだけ定量化(数値化)して、文句を言わせないようにしよう」
こうなります。
でもですねー、「目標の定量化」は大きな落とし穴があるわけです。
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(1)決めた目標数字が「高すぎたor低すぎた」(=上下のずれ)
(2)経営環境の変化で目標がずれてしまった(=左右のずれ)
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(1)の場合、よくあるのが、当初は10人に1人くらいしか達成できない目標だったのに、だんだん熟練してきて10人中9人ができるようになってしまって、会社が大赤字になるようなケース。
(2)の場合は技術進歩などによって実際にはA製品の方が売れやすいのに、インセンティブついてるのがB製品なので、営業がそればかりを売ろうと頑張るようなケース
こう言うことが多かれ少なかれおきますが、「定量化」による報酬差の拡大を進めてますので、当然、急に変えたら、今、調子のいい従業員は「ふざけんな!」となるので、変えられない。
目標が「会社としての最大利益化のために貢献する」程度の抽象度なら、すぐに変えられたものが、なまじ定量化=数字化して、報酬差を拡大してるために、「ひくに弾けない」状態になるわけです。
そして、報酬差が拡大すれば、当然、悪い評価になった人が「反論」することも増大します。
ですから、人事考課にも時間も手間もかかり、当然に揉めるので従業員の雰囲気も悪くなるし、そもそも、マネジャーたちも、「あー、また、いやな人事考課の時間かぁ、、、」で気分は滅入る、生産性は下がる、となります。
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「人事評価や、それに連動した報酬を拡大すればみんなやる気になる」
という前提を信じている方は多いですが、こういった「反動」も踏まえて考えれば、先に手をつけるべきことは、人事評価を定量化することや、報酬差を拡大することよりも
「会社の期待と、本人の成績に差がある場合に、いかに納得させられるか」
という評価コミュニケーションを強化するために、人事考課の回数/時間の増強、人事考課時のトーク方法の訓練や「型」の習得、など、
「コミュニケーションのインフラ」
を整えることが先であって、それもなしに、評価や報酬の差を拡大すれば、それに伴う「怒り、妬み、憎しみ」の本流にインフラが耐えられず、決壊して大洪水になって、会社が水浸しになってしまいます。
そう言ったことも踏まえて、「メリハリ」のある人事評価制度を慎重に検討する必要があろうかと思います。
以上、少しでもお役に立てば幸いです
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(アジアゲートベトナム代表 豊田英司 )
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