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あなたも標的かも?無法地帯と国際詐欺拠点~対抗策は知ることと考えること~
ミャンマーの巨大詐欺拠点「KK園区(KK Park)」に現地の武装勢力「国境警備隊(Border Guard Force:BGF)」が突入して外国人らが開放されたそうです。ただしこのBGFもKK園区を警備していたという話もあり、BGFはシュエコッコという近隣の詐欺拠点を本拠地として活動していると言われていますから、近隣諸国政府(主に中国)からの圧力に屈してアジトのひとつを明け渡したに過ぎない、という見方が妥当でしょう。
去年のNHK番組解説記事に、非常に分かりやすくまとまったものがあったので上の通り紹介します。ミャンマーの軍事政権は近年、民主派勢力との内戦が継続して弱体化しており、国境付近までその武力統治を十分に行きわたらせることができていないようです。BGFはミャンマー軍と敵対しない代わりに、地元で独自の武力統治をすることに目を瞑ってもらっているということらしいです。
ただ、武人だけではビジネスは大きくならないのが世の常です。この無法地帯に目をつけたのが違法オンラインカジノの大経営者である佘智江(シャチコウ)でした。佘智江とBGFはその知能と暴力をフルに活かして詐欺拠点を作るわ豪華な歓楽街を作るわやりたい放題です。
佘智江はこの都市開発を中国政府が全世界規模で投資を進める「一帯一路」の一環だと吹聴していたのですから、これには中国政府もお冠です。中国国内でも特殊詐欺の被害は甚大であり、3月5日の全国人民代表大会において特殊詐欺撲滅の成果を示さなければならないこともあって、中国政府がミャンマー軍とBGFにアジトを潰すよう圧力をかけたのだろうという見方がされています。全国人民代表大会(全人代)はワンマン企業の社員総会のようなものですから、業績に傷があっては社長も激オコでしょう。
今回のKK園区摘発は大捕り物のように報じられていますが、KK園区の他に中国との国境にも多くの詐欺拠点があり、まだ所在も分かっていない拠点も多いそうです。先述のシュエコッコに関しても今回の捕り物では触れられていません。つまりKK園区は氷山の一角であり、詐欺組織側はたくさんあるカードのうちの一枚を捨てて中国の溜飲を下げようという、予定調和を目論んでいる可能性もあるでしょう。
ミャンマーの詐欺拠点で詐欺に加担している人たちは、その多くが嘘の求人で騙されて集められ、拉致されて強制的に詐欺行為をさせられているようです。詐欺の業績が上がらなければ殴られ蹴られ、最終的には臓器を抜いて捨てられるという話もあります。
日本でも同じような詐欺組織の話はありますが、ミャンマーの方が国を跨って活動している点でより規模が大きく、よりシステマティックであると考えられるでしょう。日本人の男子高校生も拉致されて詐欺行為をさせられていたようです。ニュースになっていないだけで、他にも拉致された日本人がいてもおかしくはないと思います。
この事件は決して対岸の火事ではありません。最近ではフランス人女性が病床のブラッドピット詐欺の被害にあった事件がありましたし、ベストフレンド詐欺を狙うメッセージや、有名人を使った詐欺広告も毎日のように飛び交っています。
詐欺組織は世界規模で不特定多数をターゲットにしており、その詐欺の多くが「大手SNS」を介して、「著名人」や「大手企業」、「公権力」など「権威」を詐称して行われるため、騙される人が後を絶ちません。一度ロックオンされればカモリストに登録され、何度もターゲットにされる可能性すらあります。
「自分もターゲットにされているかもしれない」と気を付けるとともに、「自分が話している相手は本当に存在するのだろうか?」を常に想像することが大切だと言えるでしょう。実際にお金を送る前に一呼吸おいて、周りの人に相談することも忘れてはいけないと思います。
そして、無政府地帯や独裁地域では私たちの想像も及ばないようなことが起きていることを知っておくこと、知ろうとすることは、21世紀を生き抜くための根本的な知恵として重要だと言えます。例えば、北朝鮮の中では本当は一体何が起きているのか?情報は乏しいですが、可能な範囲で調べてみてもよいかもしれません。