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ペットシッターサービスの現状と将来性~開かれた動物福祉への第一歩~
ペットシッターサービスとは
私は家で猫2匹を飼っており、泊りがけで出かける際にはペットシッターサービスを利用しています。ペットシッターとは、飼い主の代わりに自宅へ訪問し、ペットの世話をしてくれる専門のサービスです。今回は、ペットシッターサービス市場の動向について説明します。
ペットシッターサービスの国内市場規模
一般社団法人ペットフード協会の調査(2023年)によれば、ペットを飼っている人の割合は26.5%(p.38)ということですから、ペットを飼っている世帯数は約 5,600万世帯 × 26.5%=約 1,480万世帯と推計できます。
また、J-Net21の調査(2024年)によれば、ペットを飼っている人(244名)のうち、「ペットシッターを利用したことがない」が204名、「過去に利用したことがある」が23名、「週3回以上利用」「毎週利用」「月に何回か利用」「不定期だが必要に応じて利用」が合わせて17名とのことです。
この17名はペットを飼っている人の7%(17÷244)となりますので、1,480万世帯のうち7%の103万世帯が1回平均約 3,000円のペットシッターサービスを年に平均10回利用すると仮定すれば、103万世帯×3,000円×10回=約300億円という市場規模が想定されます。
平均単価と平均利用回数はラフな推定ですから、この市場規模推計はあくまで目安の数値にすぎませんが、現時点ではまだ小さな市場であると言えるでしょう。
ペットシッターサービスのプレーヤー
ペットシッターサービスはカバーエリアが限られるという事業特性上、中小や個人事業者が多い業界です。その中でもフランチャイズ展開により事業規模を拡大している日本ペットシッターサービスや、ペット関連のテクノロジーと組み合わせて幅広くサービス展開している株式会社ラニマルなどは比較的大きな事業者と言えるでしょう。
また、ペットシッターの代替サービスとしてはペットホテルがあります。ペットホテルはペットのトリミングサロンや動物病院が付随サービスとして提供していることも多く、ペットシッターサービスと競合する面もあると言えるでしょう。
ペットシッターサービスの将来性
前述のJ-Net調査(2024年)によると、ペットシッターサービスの今後の利用意向として「あまり利用したくない」と「全く利用したくない」の合計は67.8%、「どちらとも言えない」は27.6%、「どちらかと言えば利用したい」「ぜひ利用したい」の合計は4.6%とのことでした。
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その結果を性別・年齢別に分解したのが上のグラフです。60代以上の利用意向は低い一方で、20代女性の利用意向は比較的高い水準を示しています(「どちらかと言えば利用したい」「ぜひ利用したい」を合わせて20%)。
調査によれば、利用に積極的な層からの意見としては「旅行などで家を空ける時に利用したい」「なるべく自分で面倒をみたいが、単身なのでやむをえず不在にする場合などには利用したい」「仕事や学業に集中するため」などの声があり、一方の消極的な意見には、「価格が高い」「他人を家にあげるのは抵抗がある」「大切な家族を他人に任せるのは不安」「よくない噂も聞く」「そもそもどんなサービスを提供してくれるのかわからない」などがあったようです。
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現代の日本では人口が減少する一方で単身世帯が急増していますから、不在時や仕事が忙しい時期にペットの世話を代わってもらえたり、ペットの世話に関する疑問点や不安を相談できたりするペットシッターサービスのニーズは高まっていくことが予想されます。特に比較的抵抗感の低い若い世代に受け入れられていく余地は十分にあるでしょう。
しかし反対に中年以上、特に高齢者の抵抗感は高い傾向にあるのも事実です。したがって業界の拡大のためには、ペットシッターサービスの安全性と利便性、そして専門性を分かりやすく世間に周知していくことが重要であると言えるでしょう。そのためには、終活や動物福祉の取り組みと合わせて事業を展開していくことが有効かもしれません。