これはあなたの物語である カタシロという作品のはなし
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TRPGって、台本がないからこそ、自分が生きてきた人生の全てが稽古と同義じゃないのかなという話です。
先日半年前、とあるお歌を出させて頂きました。これはカタシロRebuildという舞台の主題歌なんだけれど、この舞台が、ひいては元となるシナリオが本当に心の底から好きで、お歌を出したことを機にそれについて少し語ろうと思ったのでこれを書いています。
この舞台はクトゥルフ神話TRPG(以下CoC)を元に作られた舞台です。ダイスをころがして進めていくゲーム。シナリオがあって、その内容をプレイヤーは知らずに、手探りで遊ぶもの。
近年のシナリオはすっかりノベルゲーム気質なものになっているような気がしていて、つまるところ〝稽古のない演劇〟、のようなものになりつつある、気がしています。これは主観ですが。そこを軸にして演劇にしちゃうの、すごいな~!とおもうわけです。
そもそもぼくはまだまだ初心者で、こんな高邁な精神を掲げてこれについて論説できる人間ではありません。はじめて10面ダイスを振ってから1年たったかな程度の新参者(この記事を書き始めた時はそうだったんです。いまはもう少し経ちましたが、赤ちゃんであることに変わりはございません)ですので、そこだけは御容赦くださいませ。免罪符。
CoCを教えてくれたのは同じメイドで同期の恋戌くろえちゃんで、彼女のキーパリングは本当に物語に入り込めるので(すごすぎる)いちどめのセッションを終えたその時からしっかり魅力に取り憑かれたのでした。すごいんだよ。尊敬しかありません。という、身内ベタ褒め選手権はさておき。(気になる子は聞きにおいで。こっそり好きなところたくさん教えるけど本人には内緒ね。恥ずかしいから)
色々なシナリオを回ってみて、たくさんの人と交流して、セッションの経験を重ねていくと、やっぱり歯痒い部分も出てきてしまいます。ああこの時もっと魅力的な言葉選びが出来ていたらなあとか、言葉に詰まってしまって語彙力のなさに頭を抱えたりだとか。無論、ある程度のところまでは仕方が無いとわかってはいるのですが、それでも……と、思ってしまいます。
語彙、欲しいなあ。書き言葉はともかくとして、喋る時に出てくる言葉は自分のものにできている言葉しかありません。いくら引き出しに入っていたとて、奥底でホコリを被っていたら意味がないわけです。今まで読んできた本も、定期的に整理整頓をせねばなあと思いつつどんどんと積み重なっております。1冊本を読み終えると2冊積読本が増えるのってこの世のバグですか?
閑話休題。
一般的にCoCは、自身が動かす分身の「キャラクター」を作成してゲームに挑みます。他システムでもそうですね。無類の冒険好き、ちょっとナイーブな薄倖少女、重火器の達人の刑事……そんな様々な探索者と呼ばれる自機を作成してシナリオに立ち向かうわけです。
でも舞台カタシロRebuildは違いました。あなた自身で来てくださいねと、衣装もなく稽古もない中でぽーんと壇上に出されてしまう。
ぜったい怖いよ。面白く出来なかったらどうしようって思っちゃうもん。でも違った。
どの回にも違った面白さとドラマと、たくさんの物語がうまれていて、純粋にすごいと思った。あれは出演者の人生そのものなんだと、遅れてそう脳が解釈した。
人生そのものですよ、あんなの。価値観、人との関わり方、判断基準、それら全てを引っ張り出してしまう凄みがあの場所にはあった。なんて残酷なことをするんだろう!役という服を着られずに丸裸にされるんだから。すごいよ。
最後の決断について。あれはぼく、どちらも正解でも不正解でもないと思っています。結果はどうであれ、その思考に至ったプロセスに物語が産まれるわけです。物語とはいつだって、得てして道中に付随して産まれる。だから一日目にどう答えたかとか、二日目に何を約束したかとか、そういうひとつひとつが輝いていくわけです。
あとね、あの作品のNPCである医者が大好きでたまらない。愚かでがむしゃらで、どこまでも一生懸命で仕方ない。ダメだとわかっていてももう戻れないところまで来てしまった、そういうヒールがたまらなく愛しくて……だから欲を言うならお医者さん側の物語も欲しいですね。最近そちら視点のお歌もリリースされましたので、興味がある方は是非。
たった1時間と少しの舞台の裏に何十年の人生があるから、あれだけ厚みのある物語ができるんだろうな。そう考えたらやっぱり、台本がないからこそ、出演者の歩んできた道が説得力になるんだと思えて仕方がないわけです。
やっぱりもっと本を読もう。勉強もして、映画も見よう。インプットしないとアウトプットできないし、作者より賢い物語は産まれないから。
オススメの映画、本、教えてください。