M-1史に残る最高の漫才十選

最初に

言わずと知れた漫才の祭典、M-1グランプリ。年に一度の本大会も、今年ついに第20回大会を迎える。この節目を記念し、一つの総決算として、歴代の決勝戦で披露されてきた数ある漫才の中から筆者の思う名作ネタを10本紹介しようと思う。本記事を通してM-1や漫才に少しでも興味を持っていただき、是非ともM-1グランプリ2024も楽しんでいただきたい。

本編

以下では選んだネタを時系列に沿って紹介する。ひと組あたり1本までとし、逐一選考理由を述べていく。では早速、いってみよう!

笑い飯『奈良県立歴史民俗博物館』(2003年)

2002年大会から2010年大会まで9年連続で決勝進出を果たし、間違いなく前期M-1の主役であった笑い飯。ボケ・ツッコミが目まぐるしく入れ替わりながらショートコントの連続で展開されていく彼らのネタは唯一無二。特に本ネタは場面転換が多かったりスピード感に優れていたりと、混沌とした面白さを極めている。

ブラックマヨネーズ『ボウリング』(2005年)

2005年大会、ブラックマヨネーズは2本の傑作ネタをもってして、大会史上初となる決勝初進出での優勝を成し遂げた。吉田(ボケ)の屁理屈に小杉(ツッコミ)が正論で対抗する構図の中で、しばしば立場の逆転が訪れる。最後にはむしろ吉田が正しいような気さえしてくる。この年2本目に披露した『格闘技』と並び、屁理屈と正論の応酬に頭を揺さぶられる傑作。

チュートリアル『チリンチリン』(2006年)

前年披露した『BBQ』やこの年の1本目に披露した『冷蔵庫』は大喜利要素を含んだしゃべくり漫才であったが、それとは打って変わって、本ネタは徳井(ボケ)の独白に対し観客に同化した福田(ツッコミ)がツッコむ形で進んでいく。それがあまりにシリアスで、劇的で、だからこそ滑稽で笑ってしまう。劇場型漫才の最高峰。

オードリー『引っ越し』(2008年)

若林(ツッコミ)の話に対し春日(ボケ)がズレたツッコミを行い、さらにそれに対し若林がツッコむという、オードリーの代名詞であるズレ漫才。脈絡無くズレた正しさを押し付けてくる割に、ツッコみ返されるとすんなり受け入れてしまう春日の得体の知れなさが漫才を成り立たせており、彼らにしかできないネタ。

パンクブーブー『万引き犯』(2010年)

前年に上質なコント漫才で圧倒的な優勝を収めたパンクブーブーが2010年に披露したのは、叙述トリックをふんだんに取り入れたしゃべくりネタ。笑いは裏切りから生まれるという話もあるが、想像だにしなかったしょうもない真実が次々と明かされていく本ネタはまさに裏切りの連続。特に初見では笑わずにはいられない。

和牛『花火大会』(2016年)

和牛は本ネタで準優勝を収めて以降、大会から身を退くまで毎年、優勝候補だと目されるようになる。そんな彼らにとっての狼煙である本ネタは、水田(ボケ)がデートで花火大会に行くという設定のコント漫才。セリフによってコント世界が構築されていき、キャラクターが立っていくさまはコント漫才のなんたるかを知らしめる。

ジャルジャル『国名分けっこ』(2018年)

笑い飯と並んで唯一無二という言葉がよく似合うのがジャルジャル。そんな彼らからは「アメ」「リカ」や「イギ」「リス」のように国名を二人で分けて言っていく本ネタを選んだ。意味不明なルールを課す福徳(ボケ)に、それを必死に守りぬく後藤(ツッコミ)という形でボケ・ツッコミがかろうじて設定されていることで、彼らのネタの中でも漫才としての強度がひときわ高い名作。

ミルクボーイ『コーンフレーク』(2019年)

681点というM-1史上最高(平均)得点を記録した、泣く子も笑う怪物ネタ。本ネタは駒場(ボケ)がコーンフレークに関するあるあるとないないを交互に言っていき、内海(ツッコミ)が独自の理屈を交えてそれらを膨らませていくという構造。あるあるの精度、理屈のあまりのこじつけ感、そしてそもそも大の大人がコーンフレークかどうかを必死に考える様子など、もはや全てが面白い。

マヂカルラブリー『つり革』(2020年)

「漫才か、漫才じゃないか論争」を引きおこすきっかけとなった問題作。しゃべくり漫才がもっぱら正統派として扱われるように、言葉のやりとりという聴覚的な面白さを重んじる漫才だが、近年では動きによる視覚的な面白さを取り入れたコント漫才の人気も高い。本ネタは聴覚的な面白さを半ば捨て、代わりに視覚的な面白さを極めているという点で非常に斬新であり、漫才の一つの到達点かと思われる。

ロングコートダディ『マラソン』(2022年)

本ネタの大きな特徴として、ネタの主要部分にツッコミが存在しないことが挙げられる。片方の演者がある動きを行い、もう一方の演者がそれに説明を与えることで、大喜利の回答的にボケが単独で成立する。大喜利型漫才の最高傑作としての選出。

最後に

さて、いかがだっただろうか。様々な種類の面白さを紹介したいと考えたところ、このようなラインナップとなった。「そのネタ入るの?」「あのネタ入らないの?」など、是非とも忌憚無き意見を賜りたい。

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