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経済産業省発行「SBOM導入手引 Ver 2.0」の導入ガイド: セキュリティ強化の第一歩

背景と目的

現代のビジネスにおいて、ソフトウェアは不可欠な要素となっています。企業の運営やサービス提供において、ソフトウェアの役割はますます重要になっており、その管理が重要視されています。特に、ソフトウェアの品質やセキュリティを確保することは、企業の信頼性を高めるために欠かせません。 1

しかし、ソフトウェアの脆弱性を悪用したサイバー攻撃が増加しており、これに対する対策が求められています。脆弱性管理の課題は、ソフトウェアの複雑化とともに深刻化しており、企業は迅速かつ効果的な対応が求められています。特に、サプライチェーン全体での脆弱性管理が重要です。 2

このような背景から、SBOM(Software Bill of Materials)が注目されています。SBOMは、ソフトウェアのコンポーネント情報を可視化し、脆弱性管理を効率化する手段として有効です。SBOMを導入することで、ソフトウェアの透明性が向上し、脆弱性の特定と対策が容易になります。 3

本手引は、SBOM導入に関する基本情報を提供し、導入プロセスを説明することを目的としています。具体的には、SBOMの作成方法や運用方法、ツールの選定など、実践的なガイドラインを提供します。これにより、企業は効果的にSBOMを導入し、ソフトウェアのセキュリティを強化することができます。 4

SBOMの概要

SBOMとは、Software Bill of Materialsの略で、ソフトウェアの構成要素を一覧化したものです。これは、ソフトウェアの各コンポーネントやそのバージョン、供給元などの情報を含むリストであり、ソフトウェアの透明性を高めるために使用されます。 3

SBOMは、ソフトウェアコンポーネントとその依存関係を示すリストであり、機械処理が可能です。これにより、ソフトウェアの構成要素を自動的に解析し、管理することができます。標準化されたフォーマット(SPDX、SWID、CycloneDX)を使用することで、異なるツール間での互換性も確保されます。 5

SBOMを使用することで、脆弱性の特定と管理が容易になります。例えば、ソフトウェアの各コンポーネントに対する脆弱性データを迅速に取得し、対応策を講じることが可能です。これにより、脆弱性が見落とされるリスクを軽減し、セキュリティの向上が期待できます。 6

SBOMは、ソフトウェアのライセンス情報を明確にし、管理を効率化します。各コンポーネントのライセンス条件を一目で確認できるため、ライセンス違反のリスクを低減し、法的なコンプライアンスを確保することができます。 7

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導入プロセス

SBOMを導入するための環境構築は、まず適切なツールの選定から始まります。これにより、ソフトウェアのコンポーネント情報を効率的に収集し、管理する基盤が整います。 8

SBOMの作成と共有は、ソフトウェアの透明性を高め、脆弱性の早期発見を可能にします。これにより、企業はセキュリティリスクを迅速に特定し、対応策を講じることができます。 3

運用・管理フェーズでは、SBOMを活用してソフトウェアのライセンス管理や脆弱性管理を行います。これにより、管理コストの削減とセキュリティの強化が期待できます。 9

各フェーズは、SBOMの効果的な導入と運用において重要な役割を果たします。特に、環境構築から運用までの一貫したプロセスが、ソフトウェアの安全性を確保します。 10

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導入のメリット

SBOMを導入することで、ソフトウェアの脆弱性を迅速かつ効率的に特定し管理することが可能になります。これにより、脆弱性の見落としを防ぎ、セキュリティリスクを大幅に軽減できます。例えば、2021年に発生したOSSの脆弱性問題では、SBOMがあれば迅速に影響範囲を特定し、対策を講じることができました。 3

SBOMはソフトウェアのライセンス情報を明確にし、管理を容易にします。これにより、ライセンス違反のリスクを低減し、法的な問題を未然に防ぐことができます。特に、OSSの利用が一般的になっている現代において、SBOMはライセンス管理の重要なツールとなります。 1

SBOMを活用することで、開発プロセスの効率化が期待できます。ソフトウェアのコンポーネント情報が可視化されるため、開発者は迅速に問題を特定し、解決することができます。これにより、開発遅延を防ぎ、開発期間の短縮が可能となります。 9

SBOMの導入は、脆弱性管理にかかるコストを削減し、全体的な運用コストを低減します。ソフトウェアのコンポーネントを把握することで、脆弱性の管理が効率化され、対応にかかる時間とコストを大幅に削減できます。これにより、企業の運用コスト全体が低減されます。 11

導入の課題

SBOMツールの選定とその使用方法の学習には、時間と労力がかかります。多くのSBOMツールが海外製であり、問い合わせ窓口が英語であることが多いため、疑問点や不具合の解決が難しい場合があります。 1

SBOMの精度は、使用するツールの性能に依存します。正確な運用には深い知識と情報が必要であり、これが不十分であると効果的な導入・運用が進まないことが挙げられます。 12

異なるSBOMツール間での情報共有が難しい場合があります。SBOMツールが既存のツールやシステムとの連携ができない場合、効率的な運用や一元管理が難しくなるため、事前の確認が必要です。 13

SBOMを使用しても、脆弱性対応の判断が難しい場合があります。適切に運用ができるオペレーション、対応できる人材がいないと、検出漏れが発生したり、過度な運用負担が生じる可能性があります。 14

付録と参考資料

SBOM対応モデルは、ソフトウェアの部品構成を可視化し、脆弱性管理を効率化するためのフレームワークです。これにより、企業はどの範囲までSBOMを適用すべきかを明確にし、推奨項目や要求項目を具体的に示すことができます。 15

取引モデルでは、SBOMに関する契約事項が詳細に示されています。これには、委託先との契約における要求事項、責任、コスト負担、権利などが含まれ、既存のモデル契約書と組み合わせて活用することが想定されています。 15

チェックリストは、SBOM導入時に必要なステップを網羅的に示しています。これにより、企業は導入プロセスをスムーズに進めることができ、脆弱性管理やライセンス管理などの重要な目標を達成するための具体的な手順を確認できます。 8

用語集には、SBOMに関連する専門用語の解説が含まれています。これにより、企業内の関係者が共通の理解を持ち、効果的なコミュニケーションを図ることができます。例えば、脆弱性管理やソフトウェアサプライチェーンに関する用語が詳しく説明されています。 16

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