<vol.21> GeoScore × GeoMPCで実現する“確かな場所”と“プライバシー”の両立
日常生活からビジネスシーンに至るまで、GPSや衛星測位(GNSS)を使った「位置情報」の活用が当たり前になりつつあります。暗号資産(仮想通貨)の世界でも、AML/CFT(マネーロンダリング防止)やユーザー認証、利用制限などに位置情報を取り入れようという動きが盛んです。しかし同時に、「*どこ*にいるか」というデータはきわめてプライベートであり、一度流出すれば監視社会への懸念やプライバシーリスクが高まりかねません。
ここで脚光を浴びるのが、「GeoScore」と「GeoMPC」という二つの技術です。前者は「場所ベースのユーザー信用度や安定度をスコア化」する仕組み、後者は「位置情報をマルチパーティ計算で秘匿しながら必要な演算結果を得る」暗号技術。本記事では、この二つをどう組み合わせることで「確かな場所」と「プライバシー保護」を両立できるのか、具体的に探っていきましょう。
1. なぜ「確かな場所」と「プライバシー」が両立しにくいのか
1-1. 位置情報がもたらす価値
AML/CFT強化
取引所やDeFiプラットフォームで、ユーザーが国内外どこにいるかを正確に把握できれば、制裁対象国からのアクセスやマネーロンダリングを未然に防止しやすい。リスク判定
国内ユーザーなら手数料や出金制限を緩和する、海外や危険地域が多いなら警戒度を上げる、など動的な信用評価が可能に。エリア限定サービス
地理的イベント(リアル会場にいる人だけがNFTをミントできるなど)をオンラインと連携して展開できる。
1-2. プライバシー侵害リスク
しかし、位置情報をそのまま集約すると、「誰がいつどこを移動したか」が運営やハッカーに筒抜けになる可能性が高い。
監視社会: 取引所やサービスがユーザーの行動を詳細に知りすぎ、恣意的に利用する不安。
データ漏えい: ハッキングで座標ログが流出すれば、個人の生活圏や行動ルートが全て晒される。
結果として、ユーザーは「利便性を得るにはプライバシーをあきらめる」 か、「プライバシーを守るためサービスを使わない」かの二択を迫られがちでした。
2. 「GeoScore × GeoMPC」の発想
このジレンマを解消するのが、「GeoScore」 と 「GeoMPC」 を組み合わせるアプローチです。
GeoScore:
ユーザーの位置情報や行動パターンを一定期間追跡し、「この人は普段どこで行動するか」「危険地域への訪問が多いか」などを分析して「スコア」を算出。
例:スコアが高い=安定した居住地域+通勤ルートがはっきりしており、リスクが低い/スコアが低い=短期的に移動が多い、何度も海外を行き来しているなど。
GeoMPC:
位置情報を複数ノードで秘密分散し、どのノードもユーザーの生座標を知らないまま 幾何学的演算だけを行う仕組み。
例えば「半径何m以内か?」「国内外か?」といった結果だけを合意し、ユーザーの座標自体は漏れないようにする。
こうして場所ベースの信用評価(GeoScore)がユーザー行動を丸裸にしなくても実現できるわけです。
3. GeoScore×GeoMPCがもたらす具体的メリット
3-1. 行動リスクを“場所”で把握、データは秘匿
取引所やDeFiがユーザーにGeoScoreを求めても、従来なら「居住地情報」や「GPSログ」そのものを提出させるしかなく、プライバシー問題が深刻でした。
GeoMPC:ユーザーの座標を分割し、運営ノードが暗号計算で「この人の安定度は何点」と数値化する → 取引所が受け取るのは“スコア”だけ。
結果:スコアに応じた出金制限緩和や優遇を適用可能。ユーザーは居場所を一切見せずに信用をアピールできる。
3-2. AML/CFTとユーザー体験を両立
GeoScoreが低い=海外や危険地域への頻繁な移動が多いユーザーには、取引制限や追加KYCを発動。一方、普段同じ都市で行動するユーザーには、簡易KYCのみで済むといった差別化コンプライアンスが可能になる。
メリット:優良ユーザーへの対応を迅速化し、厳しいマネロン規制も満たす。
プライバシー:ユーザーはプライベートな移動履歴を提出しなくても「高スコア」を証明。
4. 従来手法との比較:なぜ“両立”が難しかったのか
4-1. 単なる生GPSデータの収集
問題:
取引所やサービスが大量の位置データを握り、漏えいや不正利用のリスク拡大
ユーザーの行動が丸見えで監視社会的になる
解決不可: データを暗号化するだけでは、演算(距離比較など)をどう行うか問題が残る。
4-2. 差し込みのKYC追加だけ
例: 「居住証明書」や「公共料金の支払い証明」を出す
これでは本人が定期的にその住所に本当にいるかは分からない(書類は偽装できる)。
さらに海外ユーザーも書類を簡単に偽造でき、AML/CFTの抑止になりにくい。
GeoScore × GeoMPC は、場所データを「暗号的に扱う」ことで、サービス提供者が生情報を集めずに「安定居住なのか」「危険地域が多いのか」といった信用評価ができる点が画期的といえる。
5. 事例:TRUSTAUTHYが解決する実際の課題
5-1. 出金限度額を“行動安定度”で自動調整
課題: 取引所が一律1,000ドル/日の出金制限を設定していると、優良ユーザーからは不満が出るし、不審ユーザーへのリスク管理も手薄。
GeoScore: 「普段から同都市で行動し、位置が安定している」→ スコアが高く、上限引き上げ。
GeoMPC: 位置履歴は秘匿計算で解析するため、運営が見なくても“高スコア”だけ判明する。
メリット: AML/CFTを強化しつつ、優良ユーザーの利便性を向上。
5-2. 海外からのアクセスをGeoAuthで原理的に阻止
課題: ハッカーが秘密鍵を盗んでVPN経由で取引所にログイン→ 大口送金。
GeoAuth: 「ログイン認証で国内拠点・オフィス周辺のみOK」という設定を暗号的に確認 → ハッカーが鍵を持っても物理的に指定場所へ行かない限り突破不能。
GeoMPC: 取引所はユーザーの座標を把握せずに“国内 or not”を検証。
メリット: 秘密鍵漏えい後の遠隔攻撃を断念させ、内部犯行や脅迫にも防御力。
6. 技術的実装ポイント:どう両立するか
6-1. GNSS署名・端末セキュリティ
GPS偽装対策は必須。端末が本物の衛星信号を受信し、ハードウェアレベルで署名を行う仕組みが必要。
ユーザー体験のバランス: 端末のルート化検出などを過度に行うと使い勝手が悪いが、リスクとの兼ね合いを検討。
6-2. 幾何学的MPCの高速化
(x, y) 分散 + 円・多角形内判定 は計算負荷が大きい。必要に応じてバッチ処理や近似アルゴリズムなど最適化が課題。
6-3. ノード運営モデル
複数ノードで分散管理するGeoMPCは、どの組織がノードを運営するのか? 取引所同士のコンソーシアム、あるいは公的機関が一部参加してマルチノードの信頼性を高めるかなど、運営設計が重要。
7. TRUSTAUTHYのソリューション
TRUSTAUTHYは、GeoScore・GeoMPC・GeoAuth を組み合わせ、以下のポイントで“確かな場所” と “プライバシー” の両立をサポートする:
GeoScoreエンジン
ユーザーの位置履歴を暗号的に分析し、安定度や地域属性を数値化。取引所は“ハイリスクかローリスクか”だけを知り、個々の座標を得ない。
GeoMPCプラットフォーム
複数ノード(取引所連合や外部監査ノードなど)で位置データを秘匿計算。
“このウォレットが制裁対象国から操作されていないか” “このユーザーの行動安定度が一定以上か” を結果だけ取得。
GeoAuth認証
マルチシグやログイン時に、物理的にその場所へ行かないと承認が進まない仕組みを提供。
ハッカーが秘密鍵を奪っても遠隔からは実行不可能に。
まとめ
「GeoScore × GeoMPCで実現する“確かな場所”と“プライバシー”の両立」 とは、一見相反する要素を技術的手法で融合する試みです。場所ベースの行動評価(GeoScore)を取り入れればAML/CFTやユーザー優遇策が格段に向上し、一方でGeoMPCによる分散秘匿計算を使えばユーザー座標を運営が直接見る必要はありません。この二つを組み合わせることで、暗号資産取引所やDeFiなどにおいて下記のメリットが得られます。
高リスク行動の排除と優良ユーザーの優遇
監視社会的リスクを下げつつAML/CFTを充実
ユーザーがデータ漏えいを恐れずに安心してサービスを利用
もちろん、GPS偽装やMPCの計算負荷など、まだまだ技術面や運用面の課題も存在します。しかし、暗号技術の進歩によって、暗号資産業界で「どこにいるか」を生で全部管理しなくても、不正を防ぎ信用を構築できる道筋が明確になりつつあります。TRUSTAUTHYをはじめとする関連ソリューションを活用すれば、「確かな場所」の力をフルに引き出しながら、ユーザーが求めるプライバシーも尊重できる未来が実現するでしょう。
Vlightup(ブライトアップ)株式会社
東京都千代田区丸の内1−11−1パシフィックセンチュリープレイス丸の内
公式X https://x.com/Vlightup_offl
Webサイト https://trustauthy.jp/