国プロのメリット・デメリット! 〜大学発ベンチャーのための国プロ講座〜
皆さんは「委託費」や「補助金」といった言葉をご存知でしょうか。
最近、これらのワードを耳にする機会が増えたのではないでしょうか。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大やエネルギー価格の高騰対策として、国や地方公共団体から様々な補助金が支給されているといったニュースは記憶に新しいと思います。
このように「委託費」や「補助金」は特別な事例において国から支給されるものと認識されている方が多いと思いますが、実は、スタートアップにとっても「委託費」や「補助金」を受けられるチャンスは多くあります!
この記事では、金融機関からの融資、ベンチャーキャピタル等からの出資に次ぐ、第3の資金調達方法である「国プロ」について紹介したいと思います。
1.国プロ(政府研究開発プロジェクト)とは?
まず、国プロ(政府研究開発プロジェクト)について、説明したいと思います。
「国プロ(政府研究開発プロジェクト)」とは、国民の税金を原資として国や地方公共団体が主導で実施する事業等のうち、研究開発事業等に特化した事業のことをいいます。
これだけを聞いて、「委託費」や「補助金」と何が関係あるんだろうと思いますよね。
もう少し、噛み砕いてみましょう。
国民の税金を原資として国や地方公共団体から特定の事業等に支給される資金を「委託費」や「補助金」などと呼びます。これらのうち、研究開発事業等に特化した事業のことを「国プロ」と呼び、この国プロで支給される資金を「公的研究費」と呼びます。
つまり、国プロで支給される資金(公的研究費)は、「研究開発に関する委託費」や「研究開発事業向け補助金」といった資金になります。
日本では、毎年約1兆4000億円の公的研究費が様々な企業・研究機関に配分されています。これらの中には、シード期の研究開発に関する国プロや、PoC(Proof of Concept)に関する国プロなど、スタートアップ向けの国プロも数多く存在しています。さらに、日本政府は、2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付けていることから、今後益々スタートアップ向けの国プロが増えていくことが予想されています。
このように、国プロは、スタートアップ(特に、Tech系スタートアップ)にとって、研究開発費やPoCを実施するための資金調達手段の一つとも言える事業なのです!
では、スタートアップが国プロを受けるメリットはどういったところにあるのでしょうか?
2.国プロを受けるメリットは?
(1)資金調達
まずは、なんといっても、政府や地方自治体から研究開発等の資金提供を受けられる点がメリットの1つになります。もちろん様々な制約はありますが(ここについては後述します。)、基本的に国プロで支給された公的研究費は返済義務はありませんので、その点もスタートアップにとっては有難いポイントになると思います。
(2)企業ブランドの向上
次に、企業ブランドが向上する点がメリットとして挙げられます。国プロは政府や地方自治体が主導で実施する事業であるため、当然ながら、採択されるまでに様々な審査がされます。逆に言えば、国プロに採択されたということは、政府や地方自治体の厳しい審査を通過したということであり、国プロに採択されるだけの技術力を有しているという証明になります。
さらに、殆どの場合、国プロに採択されると、担当官庁のHPなどで採択企業一覧が発表されるため、一定のPR効果も期待できます。
(3)ネットワークの拡大
次に、国プロを受けることで、ネットワークの拡大に繋がる点もメリットとして挙げられます。国プロに採択されると、当然のことながら、政府や地方自治体の担当者と密にコミュニケーションを取ることとなり、担当者との関係を構築することができます。
また、スタートアップ向けの国プロなどでは、デモデイなどの企画が用意されていることもあり、その様な企画が開催された場合は、同じ国プロに採択された他のスタートアップと繋がるチャンスもあります。この様に、国プロに採択されることによって、様々な人と関係を構築し、ネットワークを拡大させることができます。
このように、国プロを受けるメリットは様々挙げられますが、次は、逆にデメリットについて、考えていきたいと思います。
3.国プロを受けるデメリットは?
(1)資金の使用用途の制限
国プロのデメリットの1つ目は、公的研究費の使用用途が制限される点が挙げられます。先ほど、国プロで提供された資金には様々な制約があると話しましたが、一番大きな制約は、この資金の使用用途の制限ではないでしょうか。
国プロは、あくまで国民の税金を原資として国や地方公共団体が主導で実施する事業であり、公的研究費はその事業の目的に準じて使用しなければなりません。なので、例えば、研究開発を目的とした国プロを受託した場合、その国プロの公的研究費で会社設立に関する費用を支出することはできないということになります。
さらに、国プロごとに経理処理ルールが定められており、その事業の目的に準じた使用であっても、費用として認められない支出が定められていたりするケースがあるので、公的研究費の使用用途には十分に注意を払う必要があります。
(2)事業柔軟性の喪失
国プロのデメリットの2つ目は、事業の柔軟性が喪失してしまう点が挙げられます。
先ほどもお話ししましたが、国プロはあくまで国民の税金を原資として国や地方公共団体が主導で実施する事業になります。そのため、国プロを実施する際は、予め実施計画を提出し、その実施計画に沿って研究開発を進める必要があり、事業途中での大幅な事業変更は原則認められていません。
なので、国プロの採択中では、スタートアップでよくあるピボット(事業の方針転換)などは行うことができないので、国プロを受ける際にはこの点にも注意する必要があります。
(3)事務管理負担の増加
国プロのデメリットの3つ目は、国プロ特有の事務管理負担が増加する点があります。国プロでは、申請段階で様々な書類を作成しなければなりませんが、採択された後も、様々な事務手続きがあり、その都度、各種資料を作成する必要があります。
一例でいうと、以下のような手続きがあります。
事業実施前:実施計画書(経費の使用計画を含む)の作成、委託契約書の締結など
事業実施中:事業内容が変更した際にする手続き、高額な備品を調達した際の取得財産の手続き、知的財産関連の手続きなど
事業終了時:実績報告書の作成、成果報告書の作成など
また、これ以外にも、事業実施中に使用した経費の適正性をチェックする「経理検査」という検査を受験する必要もあります。この「経理検査」については、また別の機会に詳しくご紹介したいと思いますが、「経理検査」に向けて、備品調達の証憑書類(見積書や請求書など)を準備しなければならず、国プロを受けた際にはかなりの事務負担があると覚悟する必要があります。
4.国プロの採択に向けて
このように、国プロのメリット・デメリットを説明してきましたが、どの資金調達方法でも、メリット・デメリットはあります。
しかし、このメリット・デメリットをしっかり理解することで、デメリットを極力軽減し、メリットを最大化させられることは可能であるとも思います。
本日ご説明した国プロのメリット・デメリットを理解した上で、「やっぱり国プロを受けてみたい!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ、弊社までご連絡ください。
弊社では、国プロに関する豊富な知見を持った担当者が、貴社の事業内容に合わせて、上述したデメリットを極力軽減し、メリットを最大化させられる方法をご提案させていただきます。
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ここまで、読んでいただき、有難うございました。
今後も、〜大学発ベンチャーのための国プロ講座〜として、様々な角度からスタートアップ×国プロの説明をしていければと思いますので、次回もぜひ読んでみてください。