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<vol.5> 最新の暗号資産流出事件から学ぶ、社員権限管理の重要性

近年、暗号資産(仮想通貨)業界では、数百億円規模にも及ぶ大規模な流出事件が相次ぎ、ニュースを賑わせてきました。これまでは「取引所の外部ハッキング」や「ウォレットの脆弱性」が主な原因と見られていましたが、最近の事件では社員権限の乗っ取りによる内部不正・ソーシャルエンジニアリングが大きく注目されています。

本記事では、そんな「最新の暗号資産流出事件」を事例として取り上げながら、なぜ社員権限管理がこれほど重要なのかをわかりやすく解説します。最後には、私たちが提供する「TRUSTAUTHY」という位置情報認証技術が、どのように社員権限の適切な管理に寄与できるのかについてもご紹介します。



1. 流出事件の新しい傾向:外部ハッキングから“内部乗っ取り”へ

■ 従来イメージ:外部からのハッキング

暗号資産の流出事件と聞くと、多くの人が「取引所のセキュリティに穴があって、外部からハッカーが侵入した」というシナリオを思い浮かべるでしょう。たしかに過去には、ウォレットの秘密鍵が流出したり、メインサーバーが直接ハッキングされたりして、巨額のビットコインやイーサリアムが盗まれた事例がありました。

■ ソーシャルエンジニアリングで社員権限を奪う

ところが最近の事件を見ると、ハッカーが直接システムの脆弱性を突くのではなく、社員や管理者を騙すという手段が多用されているのが分かります。具体的には、LinkedInなどのSNSで“採用担当者”を装い、ターゲット社員にマルウェアを実行させたり、社内のアクセス権限を盗み出したりするケースがあります。ハッカーは企業の人員構成やシステム構造を事前にリサーチし、まるで「内部の人」のように行動できるようになってしまうのです。


2. 社員権限が狙われる理由

■ 従業員アカウントは“最高の裏口”

取引所やウォレット事業者の内部には、暗号資産の送金や資産管理を行う権限をもつ社員アカウントが必ず存在します。これは一種の“マスタキー”とも言える存在で、

  • 送金先や金額の書き換え

  • 新しい秘密鍵の発行

  • ログやアクセス権限の改ざん
    などを行いやすくなるため、外部攻撃よりもはるかに強力な操作が可能となります。ハッカーがこの権限を奪ってしまえば、ほぼ制限なく資金を動かせてしまうわけです。

■ 内部監査や多重化だけでは不十分

多くの企業は、社員が不正を行わないように複数人の承認を必要とするフローを整備しています。しかし、“ソーシャルエンジニアリング”によって複数の社員が同時に騙されてしまう場合や、そもそも技術的に権限の多重化が進んでいない企業だと簡単に突破される可能性があります。「うちの会社は大丈夫」と油断していると、いつの間にか社内IDが抜き取られ、巨額の流出事件へとつながってしまう恐れがあるのです。


3. 社員権限管理の盲点

■ 人事異動・退職後の権限整理

暗号資産業界の企業は急成長しているところが多く、人事異動や離職・転職が活発です。すると、権限管理が追いつかず、退職したはずの社員アカウントが残ったまま…というケースがあります。そこを突かれれば、外部攻撃よりも簡単に不正アクセスが成立してしまいます。

■ リモートワーク環境でのセキュリティ

コロナ禍以降、在宅や海外リモートなど、社員がどこから働くか分からないという状況が増えています。VPNや二段階認証は一般的に導入されてきましたが、それでも社員が端末を紛失したり、公共Wi-Fiから社内ネットワークに接続するケースも。ハッカーが巧妙に社員マシンに侵入すれば、権限を丸ごと持ち去られるリスクは高まります。


4. 社員権限管理を強化するポイント

(1) ログイン・操作履歴の監視

まずは「いつ、誰が、どのIPから、どんな操作をしたか」を常時ロギングし、分析できる体制を整備します。不審なアクセスや連続的な操作があれば即座にアラートが出るようにしておけば、被害拡大を未然に防ぎやすくなります。

(2) 最小権限の原則

暗号資産を扱う部署では、社員の役割に応じて必要最低限の権限だけを割り当てる原則(Least Privilege)を徹底します。全員が「送金権限」を持っているような状況を避け、承認フローも複数段階でチェックする形にすれば、万が一1人が騙されても資産流出を簡単には起こさない体制が作れます。

(3) 定期的なパスワード変更&二段階認証

これは基本中の基本ですが、依然として二段階認証(2FA)をしない企業アカウントや、数年間同じパスワードを使い続けているケースが存在します。パスワードの使い回しや単純な文字列はご法度ですし、2FAを導入していれば、一度パスワードが漏れても追加確認で防げる可能性があります。


5. それでも防ぎきれないケース:位置情報認証の重要性

これらの対策をしても、ハッカーは社員を標的にしたソーシャルエンジニアリングの手口を常にアップデートしています。そこで私たちが提案しているのが、“位置情報を活用した認証” という新たなセキュリティレイヤーです。

■ 位置情報がもたらすメリット

  1. 異常なアクセス元を簡単に検知
    普段は東京本社にいるはずの社員が、突然海外から高額送金の承認を行おうとしている——こうした明確な不整合をリアルタイムで弾くことが可能です。

  2. アクセス権限の“物理的”な制約
    「高額送金はオフィス内のネットワークと位置情報が一致している場合だけ可能」というふうにルール化すれば、社員が騙されてもVPN経由の遠隔操作では実行できません。

  3. ZKやMPCでプライバシー保護
    「位置情報」というと監視をイメージされるかもしれませんが、ゼロ知識証明(ZK)などを使えば“特定エリアにいること”だけを証明し、細かい座標は公開せずに済みます。

■ TRUSTAUTHYの位置情報認証

私たちTRUSTAUTHYは、GPS/GNSSなど複数の衛星測位や端末情報を暗号技術(ZK証明やマルチパーティ計算など)と組み合わせることで、

  • 「実際にその場にいる社員しか認証できない」

  • 「端末やセッションを盗まれても、物理的に離れた場所では承認が無効」

といった仕組みを提供しています。これにより、ソーシャルエンジニアリングでパスワードや2FAコードを奪われたとしても、社員が普段業務を行う場所とは違う地理的エリアからの操作をブロックできるわけです。


6. 社員権限管理の未来:保険・規制対応との連携

暗号資産業界では、社員権限管理が不十分なまま巨大な損失を出すケースが後を絶たず、保険会社や規制当局も強い関心を寄せています。

  • 保険料の軽減
    取引所が「社員権限の多重化+位置情報認証+ログイン監視」を導入していれば、保険会社はリスクが下がると見なし、保険料を割引することが考えられます。

  • AML/CFT対応
    国際的にマネーロンダリング対策(AML/CFT)が強化される中、「社員を通じた内部不正や資金流出」を防げる証明を行うと、金融当局からの評価が向上する可能性があります。

こうした動向がある以上、社員権限管理をないがしろにしている企業は、いずれ保険加入が難しくなったり、ライセンス更新が認められなくなったりするかもしれません。


7. まとめ:内部対策こそ最大の防御

最新の暗号資産流出事件が示すように、「社内システムだから安全」という時代は終わりました。ソーシャルエンジニアリングで社員自体を攻略すれば、二段階認証やコールドウォレット運用よりも強力なアクセスが可能になってしまうのです。
だからこそ、社員権限の管理には外部ハッキング対策と同等以上の配慮が求められます。パスワードポリシーの徹底やアクセス権限の細分化、ログ監視といった基本施策に加え、物理的な場所を認証要素に取り込むことで、新たな段階のセキュリティを確立できるでしょう。

TRUSTAUTHYは、位置情報を活用した暗号技術によって「社員が実際にどこで操作しているか」を暗号的に検証し、リモートワークや海外出張の多い環境でも使いやすいソリューションを目指しています。社員権限管理に疑問や不安をお持ちの企業様は、ぜひご相談ください。内部からの流出リスクこそ、最も大きな損害を出すリスクです。今こそ、抜本的な対策を検討してみませんか?


これからの暗号資産業界は、取り扱う資産規模が拡大し、サービスの多様化が進む一方で、その分ハッカーや詐欺グループの標的にもなりやすいと言えます。社内の社員権限を徹底管理するという意識を高めることが、企業とユーザーの資産を守るうえでの最優先事項になっていくでしょう。

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Webサイト https://trustauthy.jp/

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