それって本当に大丈夫??スタートアップが国プロを受託する前に検討すべきポイント!〜スタートアップのための国プロ講座〜
その公募、本当に応募して大丈夫?
日本政府は、2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付けていることから、今後益々スタートアップ向けの国プロ(政府研究開発プロジェクト(補助事業や委託事業等))が増えていくことが予想されています。
国プロで支出される公的研究費(補助金や委託費等)は、金融機関の融資と違い、返済義務がありません。そのため、資金が乏しいスタートアップにとって、重宝される資金調達の1つであり、これから国プロを受ける、もしくは受けていきたいと考えているスタートアップは少なくないかと思います。
しかし、国プロは、返済義務がないかわりに、様々な制約や事務手続きが発生します。また、これらの制約や事務手続きに違反すると、最悪、国プロで支出される公的研究費を受け取ることができないといった事態に発展する可能性があります。
この記事では、そのような最悪な事態が起こらないようにするために、国プロを受託する前に検討すべきポイントについて説明したいと思います。
検討ポイント1:研究開発資金は手元にあるか?
まずはじめに、事前に検討すべき1つ目のポイントは、直近の研究開発資金が手元にあるかという点です。これについて、手元に研究開発資金がないから、国プロで資金調達をしようとしているんじゃないかと疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。
確かに、研究開発資金を調達したいために国プロを受けるというスタートアップが大半だと思いますが、実は、直近の研究開発資金が手元にない場合、基本的には、国プロを受けることはできません。
理由としては、国プロを受けた場合、資金が振り込まれるのは、原則、事業終了後になるからです。具体的には、1年間の委託研究開発事業を受託した場合、委託費が振り込まれるのは1年後になり、1年間の研究開発にかかる費用は自社で立て替えなければなりません。
一部の国プロでは、事業実施の期間中(期中)に、一部資金が振り込まれるという制度(概算払い制度)を採用している事業もありますが、それでも全額前払いというケースはほとんどありません。なので、国プロを採択される前に、国プロの事業期間中の研究開発資金が手元にあるか確認する必要があります。
検討ポイント2:事業内容がマッチしているか?
事前に検討すべき2つ目のポイントは、国プロの事業内容と、自社で実施したい研究開発内容が一致しているかという点です。
国プロで支給される資金は、何に使っていいわけではなく、それぞれの国プロで定められた目的(研究開発目的等)に関連する経費にしか使用することができません。従って、国プロの事業内容と、自社で実施したい研究開発内容が一致しなければ、自社が使用したい資金も調達できないことになってしまうので、事業内容がマッチしているか確認する必要があります。
検討ポイント3:研究費の管理・監査体制が整備されている?
事前に検討すべき3つ目のポイントは、各国プロが定める研究費の管理・監査体制が整備されているかという点です。国プロの募集要項には、原則、研究費の管理・監査体制が整備されていることが条件となっています。
研究費の管理・監査体制の整備としては、例えば、社内規程が漏れなく整備されているかなどが挙げられます。具体的には、就業規則、給与規程等の労務に関する規程は勿論のこと、物品購買規程や旅費規程、さらに、情報セキュリティに関する規程や研究費不正に係る調査手続きに関する規程など多くの規程類を整備する必要があります。
また、その他に、職務発明規程が整備されているかも重要なポイントになります。研究開発に関する委託事業を受託する場合、職務発明規程が整備されていないと、当該委託事業で開発した発明を、自社の権利として主張できなくなる可能性があります。
このように、国プロの受託を検討する際は、研究費の管理・監査体制が自社に整備されているかを確認する必要があります。
検討ポイント4:研究開発以外にかけるリソースがあるか?
事前に検討すべき4つ目のポイントは、研究開発以外の事務手続きに割けるリソースが社内に存在するかという点です。国プロは、返済義務がないかわりに、様々な事務手続きを必要とします。さらに、その事務手続きのボリュームは膨大であるため、ある程度、事務手続きに割けるリソースを確保しておく必要があります。
事務手続きの具体例としては、
契約(交付決定)前では、研究開発の実施計画書や実施期間中における予算計画書の作成、情報セキュリティ管理体制に関する書類の作成など。
実施期間中では、研究開発にかかる経費執行の書類(見積書、請求書等)の収集、毎月の予算執行状況の報告、取得資産や知的財産権取得等に関する報告、経理検査対応など。
事業終了時は、研究開発の成果をまとめた実績報告書の作成などがあります。また、中には事業終了後5年間にわたって継続的な報告を求めるものもあります。
さらに、これらの事務手続きの方法は、数十ページにもおよぶマニュアルに記載されており、社内の国プロ担当者が自ら学び、手続きを実施しなければなりません。
このように、国プロは、採択されてから終了するまで(時には終了した後も)様々な手続きを行う必要があり、それに割けるリソースが確保できるか確認する必要があります。
最後に
いかがだったでしょうか?
ここまで読んでいただいて、「国プロを受託するのは難しそうかな...」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、国プロを受託できればメリットが多いのも事実です。
もし、国プロを受けたいけど何を準備すればいいかわからないや、すでに国プロの採択が決まったけれど上手く運営できるか不安だ、といったお困りごとがあれば、ぜひ弊社までご連絡ください。国プロに関する豊富な知見を持った担当者が皆様のお困りごとをサポートいたします。
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ここまで、読んでいただき、有難うございました。
今後も、〜スタートアップのための国プロ講座〜として、様々な角度からスタートアップ×国プロの説明をしていければと思いますので、次回もぜひ読んでみてください。