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vol1 「生体 vs. 地理:二つのReal World Linkはどこが違う?」
~World IDが瞳の虹彩を使う理由と、TRUSTAUTHYが物理的な位置を重視する理由~
はじめに:リアルを活かすことが Web3 の次なる課題?
ブロックチェーンや暗号資産の分野では、ウォレットアドレスさえあれば誰でも自由に取引できる仕組みが歓迎されてきました。けれどもその自由さゆえに、詐欺やマネーロンダリングが横行するという問題も表面化しています。
こうした課題を乗り越えようとするとき、多くのプロジェクトが「リアル世界の要素を取り込む」ことを試みます。たとえばユーザーが物理的に存在することを証明する、あるいは人間が一人一アカウントしか持てないようにするといった方法です。その結果、いま注目されているのが World ID(瞳の虹彩)と TRUSTAUTHY(地理情報)という二つの取り組みです。
1. World ID:瞳の虹彩を使う「1人1アカウント」の仕組み
World ID は、専用デバイス「Orb」で虹彩をスキャンし、生体情報を暗号化・秘密分散して管理するサービスです。これによって「一人一アカウント」を保証し、BOTや多重アカウントを排除したいという狙いがあります。大きな意義は「Proof of Personhood(PoP)」とも呼ばれる考え方で、これが実現すると投票やユニバーサル・ベーシックインカムなど、個人単位の分配やガバナンスが正しく行われる可能性が高まります。
ただ、虹彩という生体情報を扱う点への抵抗感や、Orb デバイスをどのように普及させるかなど、実運用上の課題は少なくありません。とはいえ、生体認証だからこそ「人間であること」を厳密に証明できるのは World ID の大きな強みです。
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一方で、World ID が注力しているのは「一人が複数アカウントを持てないようにする」仕組みであり、遠隔攻撃や資金送金におけるリモートハッキングを直接防ぐわけではない、という点には注意が必要です。虹彩で人間性を保証しても、秘密鍵をリモートで盗まれればウォレットは動かされてしまう可能性があります。
2. TRUSTAUTHY:地理認証を軸とした安全設計
TRUSTAUTHY は、地理情報(GPS や衛星測位など)を使って「物理的にそこにいないと操作できない」仕組みを作ろうとするサービスです。マルチパーティ計算(MPC)と組み合わせることで「鍵を一度も集中させずに署名を完成させる」うえに、「特定エリアでないと署名できない」といったポリシーを追加できます。これによって、遠隔のハッカーがいくらパスワードや秘密鍵を奪っても無意味にし、また内部の単独犯が鍵を勝手に使うことも防ぎやすいのが特徴です。
ここで大切なのは、TRUSTAUTHY がただ単に「みんなが同じ会議室に来ないと署名できない」というスタイルだけを想定しているわけではない、という点です。むしろ、MPC による暗号通信と地理情報を組み合わせることで、たとえば「どこの国や地域なら送金を許可するか」「特定の高リスク場所で行われた操作は拒否するか」といった動的なポリシーも設計できるわけです。これは単なる生体認証では実現しづらい領域であり、詐欺やリモートハッキングを極力減らすうえで強力な武器になります。
不正があった際には「ある合意プロセスで地理ログを復元し、捜査する」といった活用が視野に入ってきます。
3. 生体と地理、どう違うのか
それでは、World ID と TRUSTAUTHY は同じ「Real World Link」の仲間のようでいて、何が違うのでしょうか。
World ID はまず「一人一票」「多重アカウント排除」を実現したいときに強く使えます。投票や UBI で重複を防ぐことが大切な場合、瞳の虹彩ほど個人差が顕著な生体情報は有効です。これを秘密分散などで守ることで、プライバシーをできるだけ尊重しながら人間性を証明できるわけです。
対して TRUSTAUTHY は、ユーザーの物理的行動にフォーカスしており、リモートハッキングや「どの国の管轄にあるか」といった面を強化する方向です。資金送金が行われるときに「指定エリア外からの操作は承認されない」とか、「社内ノードが暗号化された移動パターンを検証しており、不審があれば即ブロックする」など、遠隔攻撃を防いだり、捜査時に地理データが使えたりと、仕組みの狙いがまったく異なります。いわゆる「同じ人が複数アカウントを持つのを防ぐ」ことではなく、「遠隔で無断操作や巨大ハッキングをするのを困難にする」ことに重点があるのです。
4. TRSUTAUTHY が生み出す価値
以上を踏まえ、TRUSTAUTHY が勝る(あるいは補完的に優れる)ポイントとしては、遠隔攻撃や内部単独犯を抑止する仕組みを地理認証で実現できることが大きいでしょう。World ID は「人間かどうか」を証明する技術であって、秘密鍵をリモートで盗まれた際にはあまり対抗策を持ちません。けれども TRUSTAUTHY は「そもそも物理的に正しい場所へ行かなければ署名が発動しない」モードを作れるため、たとえユーザーのパスワードや鍵が漏れても、遠隔地のハッカーが操作するのは極めて困難になってきます。
また、多くのユーザーにとって、生体認証(虹彩や指紋)を預けることには心理的抵抗があるかもしれません。TRUSTAUTHY では地理情報を用いることで、そうしたハードルをやや下げられる利点が考えられます。たとえばスマホの GPS や準天頂衛星システム(みちびき)を活用しながら、分散署名(GeoMPC)との連携でプライバシーを保つ設計を採れば、みちびき衛星の正確な測位を暗号化し、外部に位置を晒すことなく「許容された範囲かどうか」だけを判定する、といった使い方も可能です。
何よりマルチパーティ計算(MPC)の本質は「誰も秘密全体を知ることなく、必要な計算結果だけを得る」点にあります。TRUSTAUTHY はこの仕組みに地理情報を組み込み、一部のノードが地理データのシェアを持ち、別のノードがポリシールールを持ち、最終的に合意の上で署名を完成させることができます。こうした複合的な演算のおかげで、分散ノードのうちの一部が悪意を持っても鍵を完成できない仕組みや、特定エリア外のアクセスを自動で遮断できる仕組みが実現しやすくなります。
結び:World ID と TRUSTAUTHY は対立ではなく、それぞれの領域を切り拓く
World ID が瞳の虹彩を使って「この人が唯一無二の人間である」と証明するのに対し、TRUSTAUTHY は地理情報や時間データで「この行為が物理的な安全性や管轄を満たすものか」を評価するという違いがあります。したがって、前者は一人一票の投票や多重アカウント問題に対して強い一方、後者はリモートハッキングや巨大資金流出を防ぐのに有効です。どちらもリアル世界を活かすという点で似ているように見えつつ、目的と手段が大きく違うのです。
なかでも TRUSTAUTHY は「人が同じ場所に集まる」という単純な話に留まらず、マルチパーティ計算(MPC)の深みを使って、地理情報を暗号的に評価するモジュールを組み合わせる道を探求しています。地理データを暗号化したままポリシーをチェックし、遠隔攻撃や内部単独犯を防いだり、必要なら法執行機関が合意を得て位置ログを部分開封できるようにするなど、多彩な応用が考えられるでしょう。ユーザーや企業は生体認証を提供する抵抗感が少なく、既存スマホと衛星測位を活用できるため、比較的スムーズに導入できる利点も期待されます。
これらの観点から、TRUSTAUTHY が「リモート攻撃抑止や大口送金管理の必須インフラ」となっていく可能性は非常に高いといえます。大規模金融機関や取引所、そして国際的な規制を遵守したウォレットの運営には、地理認証と分散署名の組み合わせが欠かせない時代が来るかもしれません。World ID と同様、TRUSTAUTHY もリアルな世界とブロックチェーン空間を結びつける仕組みですが、どちらかが優れる・劣るというより、両者はまったく別の機能を補完的に提供しているといえます。その中で TRUSTAUTHY は、セキュリティの根幹や法的管轄にかかわる部分を大きく革新する余地があるのです。
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