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目の前にある“本”から「自己紹介」を創り、アイディア発想の方法論を学ぶ――Vlagアイディエーション・ナイト

11月29日(金)、共創パートナーである株式会社ひらく様をお招きし、アイディア発想における方法論のインプットと実践を楽しく行う「Vlagアイディエーション・ナイト」を開催しました。

アイディエーションとは、新しいアイディアを生み出すためのプロセスのことを指します。

ワークショップのテーマとなったのは「自己紹介」。自己紹介は相手や場面によっていくつもあっていいですし、どんどん更新をするものです。今回、Vlag yokohamaにある約2,000冊の蔵書を使い、その中にある言葉から自己紹介をたくさん創ることで、アイディア発想に使える方法論を学びました。

本レポートでは、当日のワークショップの様子を紹介できればと思います。

“言葉と出会う”という前提で、本と向き合う

「“本棚”って読んでいますか?」

ワークショップの冒頭、ひらくプロデューサーの深井航さんは、参加者にこう語りかけます。ブックホテル「箱根本箱」や温泉旅館発の文学賞「三服文学賞」など、本と文化の新しい動きを手掛ける同社。最初に、アイディア発想のためのショートレクチャーを実施いただきました。

アイディアの多くは、「既存価値と既存価値(フレーム)」の掛け合わせによって生まれていくもの。しかし、このフレームを見つけるのが難しく、なかなか簡単には生み出すことができません。

深井さん「そこで活用してほしいのが本の空間です。本のある空間は、坪単位の情報密度がとても高い場所。インターネットの言葉は、トレンドやアルゴリズムによってどうしても偏ります。本のある空間で多様な言葉のシャワーを浴びることで、自分の枠を外して発想ができると考えています。

今回の開催場所であるVlag yokohamaには、約2,000冊の蔵書があります。このワークショップでは、本に書いている言葉をただ読むだけでなく、配置されている意図や偶然生まれる言葉のつながりなどに注目し、“本棚”を読んでもらいながら、ふとした出会いを大事にしてもらいたいと思っています」

ふとした出会いを大事にするためには、本や読書に関する偏見を取り払うことが必要と、深井さんは次に説明します。

本は訓練をすることで読む速さや効率もあがりますが、最初にハードルをあげてしまうと、気持ちよく進められなくなることがあります。例えば、「本の内容を理解しなければ次へ進めない」という考えが当たり前のようにあり、途中で挫折してしまった経験のある人は多いのではないでしょうか。

深井さん「私の場合、リズムが出ないと思うところがあったら読み飛ばしていいルールにしていますし、逆に『本に書いてあるから内容は忘れてもいい』という考え方があっていいかもしれません。このように、ふとした出会いを大切にするためには、本との向き合い方を変える実践も必要です。

今日のワークショップでは、本にあるフレーズから色んな自己紹介を創ることで、アイディアの発想法を体験します。“言葉と出会う”という前提での本の向き合い方を楽しみながらやってみましょう」

本のフレーズから、「自己紹介」をたくさん創ってみる

続いて、同社ブックディレクターの有地和毅さん、ワークショップデザイナーの三上京香さんがファシリテーターとなり、「自己紹介」をテーマにしたワークショップが行われました。

今回取り組んだのは、“大喜利”的に自分というアイディアを大量生成すること。自分が気になった本のフレーズを「フレーム」にし、その「フレーム」を使い、自己紹介をたくさん創ってみます。その自己紹介をワークショップ用のカードに記し、参加者同士で名刺交換をするのがゴールとなります。

有地さんは、アイディエーションを加速する要素に「集合知(掛け合わせ)」「大量生成(量から質が生まれる)」「心理的安全性(何でも言える)」の3つを挙げます。これらを満たすのが“大喜利"とし、まず参加者の方々は3人1組のグループをつくり、本棚を読んでみることから始めました。

気になる本を選んでみた後は、タイトルやサブタイトル、帯のあおり文など、本の中で気になったフレーズを探します。フレーズを見つけるときは、言葉を入れ替えても成立すること、なぜか気になってしまう、本屋で見かけたら「買うかも」と思った本を探すのがコツ、と有地さんは説明しました。

次はワークシートにそのフレーズをメモし、言い換えができそうな場所を探すことで、「フレーム」にする作業を進めていきます。フレームにするときは、言い換えする場所によって、一つのフレーズから複数作成ができること、言い換えする単語の性質も考えることがポイントといいます。

参加者の方々はグループの皆さんと時折会話をしながら、真剣にワークに取り組まれていました。中には、気になる本の一冊に漫画『Dr.STONE』(Vlag yokohamaに全巻置いています)をピックアップし、最初に開いたページから印象的なフレーズを見つけ、盛り上がっているグループもありました。

いよいよ、次はフレームをもとに自己紹介を創ってみます。

お題は、仕事用に10個、プライベート用に10個。ワークシートと一緒に配布された名刺カードに記載し、他グループの皆さんと名刺交換をしながら交流を深めていきました。すらすらと自己紹介をまとめていく方が多く見受けられましたが、筆者は頭が固いせいか、なかなか進められません。

「他の方のフレームを借りてみる」「気になるフレーズを他で探してみる」など、ひらく様にアドバイスをいただきながら、何とか自己紹介を生み出せましたが(それでも20個には到達せず)、アイディア発想の難しさを身に染みて感じました。交流会では、名刺カードの内容を説明することをきっかけに、初対面の方とでも盛り上がる様子が多く見受けられたのが印象的です。

ワークショップの最後、三上さんは「自己紹介はさまざまなところで活用ができると思います。例えば、『ブランド』の自己紹介を考え直すことは『リブランディング』となりますし、会社の説明や何かについて説明するときも、対象が自分ではないだけで、“紹介”と言えるのではないでしょうか。今日、短時間でたくさんのアイディアを出すことは大変だったかもしれませんが、よい筋トレになったと思います。この調子でアイディア発想体質に変わっていきましょう!」と語り、イベントは締めくくられました。

Vlag yokohamaでは、今回のようなアイディエーションに関するワークショップをはじめ、さまざまなイベントを開催しています。ご関心のある方は、下記のPeatixをぜひフォローください!

登壇者プロフィール

有地和毅(あるち かずき)

株式会社ひらく ブックディレクター/コミュニケーションデザイナー
広島県出身。本と人との関係をリデザインする人。2018年、本と出会うための本屋「文喫」の立ち上げに携わり、コンセプトデザイン、選書、企画展示を手がける。2020年から本を使って企業の文化的課題と向き合うコミュニケーション創出をスタート。2023年には、本の持つ価値を形を変えて届ける実験プロジェクト「文喫の実験室」を立ち上げ、本の文化的価値を新たに社会実装するネットワークの構築を目指している。

深井航 (ふかい わたる)

株式会社ひらくプロデューサー/ブックディレクター
2017年、出版取次大手の日本出版販売株式会社に入社。2019年より現職。ブックホテル「箱根本箱」や温泉旅館発の文学賞「三服文学賞」など本を起点とした場所づくり・企画作りを行う。小学館『美的』の選書、CCCメディアハウス『Pen』兵庫テロワール旅 旅人などブックディレクターとしても活動。好きなレーベルは医学書院の「シリーズ ケアをひらく」

三上京香(みかみ きょうか)

株式会社ひらく ワークショップデザイナー/プロダクトプランナー
福井県出身。2020年日本出版販売株式会社に入社。大型チェーン店の書店営業として運営サポートを実施。複数の新規店舗の立ち上げを経験し、店頭イベントや文具雑貨の新規導入を行う。現在は本と出会うための本屋「文喫」での企画展示のディレクションや国内外さまざまな雑貨のセレクトを行う他、文学作品をモチーフにしたプロダクト開発に取り組んでいる。ワークショップデザイナーとして、本とモノを使ってコミュニティの空気をやわらかくするワークショップを数多く手掛ける。

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