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選手達の挙動から約束事を想像する~声の重要性~
スロットリヴァプールの約束事であろうものを選手達の挙動から想像していこうと思います。
想像というよりかは、起きている現象から選手達が互いにしている要求や挙動から確信に変わった事みたいな感じですね。
ビルドアップ
リヴァプールはアルネ・スロットが監督に就任して以降、距離感がコンパクトな4バック(両SBが絞った)でビルドアップする形が基本です。
おそらく多くあるパターンの中の一つなのでしょうけど、そのコンパクトな4バックが原則の1つであるという事が分かるシーンを2つピックアップしたいです。
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24/25 AWAYクリスタルパレス戦 9分20秒~
先制直後のシーンでした。
クリスタルパレスがクリアをしたボールをファンダイクがアリソンにヘディングで返し、それをキャッチしたアリソンがそのボールを素早くファンダイクへ返す。
そして、ここからビルドアップを開始するぞとファンダイクがゆっくり持ち上がりながらツィミカスへ「開きすぎてるから、絞ってこい」と指示しています。
これはスロットがリヴァプールに就任したからこそ起きた現象でしょう。
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24/25 HOMEリール戦 70分10秒~
これもビルドアップの局面
状況が落ち着いた所でファンダイクがDFライン全体に「もっと距離感をコンパクトにするぞ!!」と指示を飛ばしています
クオンサーは素早く2,3歩調節しブラッドリーに同様に声を掛けますが、ブラッドリーは「何で俺やねん」という様な反応をしています
注目すべきはツィミカスです、おそらく勘違いで「上がれ」と指示したのだと思ったのか、上がって行ってしまいます。
その際、ファンダイクは若干呆れ気味に「絞って来いよ!!」と最初よりもより圧のある指示を出していました。
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前プレ
この前プレもスロット就任により変化がありました。(ゾーンから人への意識が強くなった)
マクアリスターもクロップは人よりもスペースを埋めて1人で3人抑える守備をしていると言っています。
そのプレスの形の中の一つを選手の挙動から紹介します。
スロットリヴァプールの前プレの1つの型は1トップとトップ下が2トップの様な形になり、どちらかのサイドに追い込むという流れです。
その際トップ、若しくはトップ下がプレスをかけるのですが、その2トップのプレスに行ってない方の選手はプレスを掛けにいった選手の背中まで絞る、ボールサイドのボランチを抑えに行きます。
分かりやすいシーン AWAYイプスウィッチ戦 54分55秒~
サラーがイプスウィッチのGKにコースカットプレスを掛け、左サイドへ誘導、左CBに出るとディアスがそこへプレスを掛けに出ます。
そうするとディアスが元々抑えていたボランチが空き、普通はマクアリスターが縦ズレする場面ですが、リヴァプールの原則ではソボスライが絞って来ます。
そうする事のメリットはボランチが縦ズレしなくてよいため、その分DFライン前の厚みが増しますし、今回のシーンの様にトップ下からガクポの背中へ流れてきたハッチンソンをマクアリスターが見ることが出来るため、ロバートソンは左WGをマークしたままで良くなり、最終ラインがリスクをかけなくて済みます。
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マクアリスターが縦ズレする形も良いのですが(普通はこっちの形の方が多い)、それだと前述したものに比べDFライン全体がスライドしなければならなくなる為、最終ラインが3枚になってしまいます。
その為、最終ラインに4枚残せる、カバーに入れる、DFライン前にいるボランチの枚数が多くなる前者の方がよりリスクを抑えたプレスになります。
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※正直ボールサイドを抑える守備を仕込めない監督も全然いるのでこの形でも全然良い、素晴らしい守備です。
24/25 HOMEリール戦 20分50秒~
相手のビルドアップの場面、リヴァプールはサイドに追い込んでプレスを嵌めようとする場面ですが、その時カーティスが後ろを気にして何かやり取りをしながらプレスを掛けていました。
リヴァプールのハイプレスによって相手はロングボールを蹴るのですが、その時映ったファンダイクが前線の誰かを怒っています。
流れからして、カーティスとファンダイクがやり取りをしていたのでしょう。
先程の原則からすると、トップの選手(ヌニェス)が右CBへプレスを掛けているのでソボスライが絞ってくる場面ですが、リヴァプールはトップ下が絞れない時は2ボランチのどちらかが縦ズレをするという様になっています。
それを考慮すると、カーティスとしてはソボスライが絞ってない為自分が縦ズレしたい、ですが、ファンダイクとしてはそこはソボスライに絞らせDFライン前にいる選手を抑えておいて欲しかった、という感じなのでしょう。
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この様にスロットリヴァプールはパターンが多いが故に認識の齟齬が生まれるという事が見られる瞬間があるのですが、まだ1年目なのでここから練度を上げて行って欲しいですね。
24/25レアルマドリード戦 49分47秒~
このシーンはレアルマドリードが自陣ペナルティエリア前辺りでボール保持をし始める場面です。
右CB(アセンシオ)へボールが渡るのですが、ここでヌニェスはボランチも抑えない、左CB若しくはボランチへのパスコースを切りながらプレスを掛けるわけでもないという、言い方が悪いですが最悪な守備対応をしてしまいます。
また、ヌニェスが前へ出ている場面ですが、カーティスは自分事ではないかの様に相手のボランチ(ギュレル)を抑えに行かず歩いています。
ここは、ヌニェスは左CBへのパスコースを切りながらしっかりプレスを掛けきってカーティスが絞ってボランチを抑える、また、後ろがついて来れないのであればヌニェスはボランチを抑え、プレスをかける機会を伺うという様にするべきでした。
ですが、この場面はプレスの肝となる2トップ(前線)が両者共に曖昧な行動をとった為ボランチの位置にいるギュレルがドフリーで前を向けるという状況を作ってしまいました。
まだ成長過程にいるギュレルだったから良かったですが、もしここで受けた選手がロドリやもう引退してしまいましたがクロースであったら一発裏に高精度のパスを通されてしまい失点してしまってもおかしくないです。
なのでこの前線の守備は後ろの選手(マクアリスター)はキレて当然の場面でしょう。
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声の重要性
この上げた場面4つの内3つにファンダイクが関わっています。
これから分かる事はリヴァプールにおけるファンダイク、そして声の重要性が分かってと思います。
この声が無ければツィミカスはサイドの低い位置に居てプレスに嵌りやすいままですし、後ろからマークの指示も無いのでプレスの嵌りやすさ、強度も落ちていくと思います。
そして前が原則通りに動けなかった時に後ろの注意がなければ監督が干渉出来るタイミング(ハーフタイム)までは修正出来ないみたいな事も起こってしまいます。
また、監督がピッチサイドからいくら声を出したとしても、全て行き届くわけでは無いです。
だからこそピッチ内での声が重要なのです。
その声もただ出しとけば良い、なんちゃってコマンダーでは無く、チームの原則に則した声、チームや味方が有利になるような声が良い声掛けになります。
そして、この声を出せる選手も後ろだけでなく、全ポジションに居るのが理想です。