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リアルタイム会議 メタバースの勃興 (その1) ~アニメーション制作ちょっといい話~

4月末に全世界をズームで結んで行われた「リアルタイム会議 2021年春」。今年はメタバースに使われる技術を広く紹介することが主な目的でした。

一口にメタバースといっても、その技術の多くが従来の3Dのアニメーションや映画で使われる視覚効果(ビジュアル・エフェクツ)にも応用されている(例えばヴァーチャル・リアリティ)。そのため非常に広範囲の技術について議論する有意義な3日間となりました。今回から数回に渡ってこの会議で興味を惹かれた講演について、ダイジェスト記事をお届けします。

アニメーション制作ちょっといい話

今日はアニメーション監督パトリック・オズボーン (Patrick Osborne)氏による「監督から見た制作の内側(Director's Insight)」と題された講演について少し掘り下げます。

まずオズボーン監督は、ディズニーの短編「紙ひこうき(原題"Paperman")」「愛犬とごちそう(原題"Feast"、アカデミー賞を授賞)」が有名です。グーグルと組んだ短編"Pearl"(原題)も、ヴァーチャル・リアリティ用のヘッドセットで視聴する作品として知られています。

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なお、ビジュアル・エフェクツ業界に多数の人材を送り出していることで有名な教育機関ノーモン(GNOMON)による"Pearl"のメイキング映像がここでご覧いただけます。(英語のみ。)

この"Pearl"は上記にも出てくる通り「お父さんとの思い出を成長した娘がフォーク・ソングとともにたどる」という内容です。すべてが車の中から見た視点から描かれます。それ故にヴァーチャル・リアリティで観ると、すべてが車の中からの風景のように感じられるという画期的な作品でした。また3Dにも関わらず、まるで絵画調に描かれているところは、上記のディズニー時代の作品とも共通する部分です。

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さて前置きが長くなりましたが、今回の講演では監督の最新作についてのお話でした。ネクサス・スタジオ(Nexus Studio)と共同制作した"Drawn Closer"(原題)という作品です。パンデミックのせいで作品を制作・発表したくても出来ない演劇部の子どもたちに、「だったらコンピュータで自分たちの演劇をアニメーションとして制作し発表しよう」と監督の発案で実現したものだそうです。

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監督はiPhoneを用いたフェイシャル・キャプチャ(カメラに映った話者の表情をキャラクターの表情として表現する技術)を利用して、コンピュータで出来たパペットの表情がどうなるか自分で試行錯誤するところから始めました。

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そして学校に集まることの出来ない子どもたちが、思い思いに家で自分たちに表情やセリフを録画・録音し、アニメーションのキャラクターに表情をつけたりセリフを言わせたりして制作されたそうです。

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最後に監督の次回作「テープ・デッキはタイム・マシン(原題: This Tape Deck is a Time Machine)」が紹介されました。この作品も監督が得意とする絵画調のキャラクターで制作されていることがわかります。公開が待ち遠しいですね。

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アニメーションの制作は直接はメタバースと結び使ないようにも思えます。しかしメタバースで自分の分身となるアバターを自由に操る場面において「演技をキャラクターに吹き込む技術」が利用できることが容易に理解できる講演でした。

(本日はここまでですが、リアルタイム会議の記事は今後も続きます。)

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