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「9 ナイン ~9番目の奇妙な人形~」の秘密にせまるインタビュー(その1)

2010年5月8日に日本公開された映画の当時のインタビューを翻訳して3回に分けてお送りします。翻訳の正確さにおいては、元記事を参照していただければと思います。映画はアマゾン・プライムでも視聴可能です。

シェーンが語る、偉大なアイデアとそのスクリーンまでの道のり

 長編映画バージョンの「9」は、縫い合わされ人形たちが活躍する、人類絶滅後の物語であるが、同じ世界観から作られた短編をさらに広げるものである。人形たちをやっつけようとする機械仕掛けのモンスターたちに包囲されているが、彼らはこの世界の中で生き残ろうとする。「つぎはぎパンク(stitch-punk)」な人形たちには番号がついているが名前はない。新しく登場する9は「古い教会に閉じこもっているよりはモンスターたちに抵抗するために皆で協力して立ち向かおう」と主張する。9は、いったい何が彼らをこの恐ろしい状況の中に陥れたのかを見つけ出すことになる。

(監督のシェーン・)アッカーが短編と同様にストーリーボードを作成する状況に戻ることになった。(製作のティム・)バートンが脚本家のパメラ・ペトラーを制作に招き入れた。ティム・バートンの作品「コープス・ブライド」(さらには「モンスターハウス」)はペトラーのペンによるものである。アッカーは語る。「ストーリーとキャラクターを何層にも分けて作成していきました。まず長い筋書きをつくり、スタジオとプロデューサに見せるために説明しました。」

「それにオーケーが出ると、もう少し内容を加えた概略をつくりました。パメラは興味深い方法で作業を行っていました。すべての構造を詳細に分割してそれぞれをポストイットに書いて、ボードの上で動かしていました。プロットの転換となる部分とキャラクターが活躍する部分の要所要所を動かしながら、物語がだんだん出来上がってくるようにしたのです。」その時点でペトラーは脚本の最初の草稿を書き始め、アッカーは細かい舞台設定を開始した。彼が言うには、脚本に行ったり舞台設定に行ったりの繰り返しだったそうだ。

 長編をつくることは、短編の中にあるほとんどすべてのものに注釈を加えていくことを意味する。アッカーは語る。「9は同じキャラクターですが、かなり洗練され細部まで加えられました。9は短編にできる限り近いものにするべきだと感じていましたが、その表情や感情にはもっと多くのことが可能でした。口の表現や眉毛の形をより多く付け加えました。キャラクター5は長編では2と5に分割されました。長編の中で最初に出会うモンスターは、短編で見ることができるものから直接つくられたものです。しかしそれ以外は、短編からはかなり離れて、長編はつくられたのです。」

ダークな映像

長編映画バージョンの最も際立っている部分のうちの一つは、そのダークかつドラマティックな見かけである。「この荒れ果て破壊し尽くされた世界の中で、その雰囲気を表す暗い予感を漂わせるパレットを作成しようとしました。陰鬱にはなりませんでしたが、この旅が困難かつより重要なものであるように見せています。さらにキャラクターと彼らが立ち向かって行く困難に感情移入する助けとなりました。(機械仕掛けの)モンスターはすべて赤みがかった色合いを持っていて、緑色の魂と対照を成しています。映画の中の数々の場面で赤と緑のが強烈な対照をつくり上げます。残りはキャラクターのいる環境に繋がる地球の色に繋がるような色味になっています。」

 短編ではすべてのものを暗闇の中でシルエットを見せることで、観客が世界の残りの部分を想像できるようにしていた。それは長編でも生かされている。「長編はかなり抑えた予算(約30億)で製作ししていたので、これを生かすようにしました。」短編から持って来たもう一つ見せ方の工夫には、光を動かすことが挙げられる。「世界は死に絶えていましたが、それを生き返らせる一つの方法は光を動かすことでした。」アッカーによると彼の長編映画へのインスピレーションは、ストップモーションの映像作家である、ブラザーズ・クエイやヤン・シュバンク・マイエルからも受けているそうだ。「9の光が動くところは場面の映像を興味深いものにしています。」

 アッカーが影響を受けたものには、2つの世界大戦の余波を受けたイメージ、とりわけ美しいアートと建築によりつくられたものがある。例えば破壊されたゴシックの大聖堂。さらに彼は物理学者のロバート・オッペンハイマーについての研究もかなり行った。「映画の中での役割は小さいけれでも、これらの生き物の創造主であり、この退廃の原因に繋がるのが科学者です。そのキャラクターは映画の中の世界における、人間の側の核を形成する部分にしたかった。この世界を恐怖に陥れたGeppetto(訳注: ジペットー、人形使いを指す)の姿をしているのです。」

 プロデューサであるバートンと(ティマー・)ベクマンべトフは、「9」の製作中もそれぞれのプロジェクトで忙しかったが、アッカーによると新しい映像を見せる時には駆けつけてくれたとう。「彼らは批評家として距離を置いて、新たな視点を持って映像を観てくれたのが最高でした。ティム(・バートン)は有り難いことに、台詞に頼らずにできるだけ映像で物語を語るように勧めてくれました。」その進言の成果は映画を見れば一目瞭然である。「新聞の切れ端、ホログラム、ニュース映像、キャラクターの目から発っせられる光の点滅に至るまで、背景にあるストーリーを語るのに興味を惹くような賢いやり方を見つけるという点で、数多くの発明を試みたのです。映像のセンスで映画を説明しようと常に心がけることで、私たちは本当にクリエイティブになることができました。」

共同作業をするアニメーションスタジオを見つけるにあたり、アッカーは公開オーディションを開いた。最終的に3つのスタジオに絞られた。ムンバイにあるPrana、バンクーバーにあるBardel Entertainment、そしてフランスの会社でルクセンブルグに撮影拠点を持つAttitude Studioである。「Attitudeが我々にとってベストな選択だと思いました。彼らは私たちが求めていた見かけと印象、演技といったものを理解することができたからです。」(その2へつづく)


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