Iceman♡愛すまん -ver. GATE II-
Iceman連載、本筋に戻りましてここからはGATEシリーズ。まずは赤いアルバム GATE IIからです。
始まってしまったカウントダウン
このアルバム通称 赤盤、GATE三部作の1枚目なんですけど、タイトルは見てのとおりII (=2)なんです。つまりGATEシリーズは2→1→0と、カウントダウンしていく仕組み。
最初の赤盤が出た時点でアルバム3枚のカウントダウン形式になることは知らされていて、ただそのカウントダウンの意味をそのままこれでIM終わりなんじゃ、っていうふうには(少なくとも個人的には)結び付けなかったような気がしてる。単にそういう試みなんだと、額面通り受け止めたように記憶しています。(知能が足りなかっただけかもしれません!)
今はもう3枚出揃っていて、その後 IMのたどった道も皆さん知ってらっしゃるわけですから、これは3人の終わりに向かっているのだ、と考えながら聴いても間違いとは誰も言えない。でも初めて聴く方なら、本当になんの前知識もなく、いったい何へのカウントダウンなんだろうって探しながらで全然いいわけです。
というわけで、ドデカイ終局のビッグバンか、ミュータントが襲ってくるのか、隕石か世界滅亡なのか、とにかくもうあたふたしてる間もなく何かへのカウントダウンが始まっちゃったわけです。この赤いアルバムをもって。じゃあ聴くしかない。
また、GATEシリーズは、Icemanなりの"世紀末"の音を命題に掲げていることも、念頭に置いてみていただきたい。世界観からポコッとはみ出るシングル曲は1曲も入っていない、純粋なコンセプトアルバム。
その世紀末コンセプトの中に、赤、黒、白という色テーマを別軸で抱える構成になっていて、赤盤なら赤、黒盤なら黒にまつわる単語が全曲の歌詞に組み込まれている。えっ探してみたいな〜〜!こりゃ聴くしかない。
ノストラダムスとか1ミリも信じてない、はずなのに、でもなんかがあったりするんじゃねえかって脳の端っこがちょっとドキドキうずいちゃう感じ?もう世紀末から経って久しいけども、2020年が遠い未来だったころの自分を思い出しながら、まずは赤盤から聴いてみてください。
惜しみない飛び道具
GATE IIの楽しいところは、俺は何をおいてもまず、曲順だと思ってる。
RED gate open というタイトルの神秘的オープニングがしずしずと終わり、続く PERFECT FUTURE? はカオスな世紀末へ丸腰ダッシュでぶつかり稽古に飛び出す、ド直球ド王道 IMロックな鉄砲玉の一発。コンセプトとか言っちゃって、なんかすげえ小難しいもんが来ちゃうんじゃないの?っていう不安は、そのイントロが終わるまでにすべて吹き飛ばされる。
そしてやれ爽快っ、世紀末意外と楽しいな、と思い始めてるところに現れるのが、こちら ExpanderDriveMachine~発展途上人型アンドロイドの見た夢~ さんだ。
え、それがなにかって?何を隠そう ITOである。
歌始まって2曲目にしての ITOである。
確信犯&愉快犯でしょこれ。何のか知らんけど。だって楽しすぎじゃん。
IcemanにおいてITO曲はいわば飛び道具で、ライブでもアルバムでも、スパイス効きすぎのアクセント、ひときわ異彩を放つファンタジーでサイケデリックな切り札的存在だ。それがド王道のあとの2曲目にもう来るんである。
この時点ですでに、あ、IMの世界でこれからもみくちゃのブンブンに振り回されるんだなという予感が走る。そしてその予感は的中し、アルバム一枚終わるころには見事遠心分離機にかかったカッスとなり、うへ〜Icemanやべえ〜という感想のほかなんにも残らない。
ちなみにエクスパンダーの次は何かって?Wish Matrixである。知ってる方も多いであろう、名曲中の名曲である。あっもうそう来ちゃう?って思ったでしょう。殴る速度が速すぎるでしょう。ITOですっからかんになった脳髄に注入されるのは、おくすりかと思ったら致死量の濃厚Icemanである。
まだ知らない方がいたら本当に、処女のような気持ちで聴いていただきたい。この曲を初めて知る喜びは、たぶん人生でそうは味わえない。
Wishはちょっと特別すぎるんで細かに書くけど、歌詞が本当にいい。まこっちゃん信者であるわたくしをもってして、とてもいい。誰かを想うことの強さ尊さと脆さが、黒田の絞り吐き出す声の上で永遠に反射しあって、きらめき輝いている。想いが誰かに伝わり、想い返し、また誰かが受け取る。そういう輪廻転生、巡り巡る想いや願いや祈りの輪、ちっぽけな人々が営む大きなこの世が、美しく力強く波打ち繰り返される。
それを支える何層も何層もの音が、想いをとりまく森羅万象のように紡がれ流れ続けていて、キラキラと祝福するかと思えば人の鼓動、血脈、そして大地の地脈、空間の振動までも表現するかのようにうごめく。
Wishを聴くたび、誰かを想うことの苦しさや尊さに心馳せずにおられず、命を見つめる大スペクタクル絵巻を宇宙視点で眺めている気持ちになる。Icemanが好きでよかったと泣きたくなる。
美しいだけじゃなく、とても熱い血が根底に通っているのだ。
ただし、Wishで召されている暇はない。FATE WEATHERにShining Collectionといった神曲もこのあとにどんどん続く。世紀末の Icemanにも出し惜しみの言葉はない。DAの語りが楽しめる GATE II -sensitive gate あたりは、いかにもコンセプトアルバム的。
CAUTION!という生命体
そして最後にもうひとつ、Icemanを考えるうえで重要な曲が赤盤にある。
CAUTION! だ。
DAのソロライブや部活で最近も演奏されているので、聞き覚えのある方もおられよう。この時代にしてはめちゃくちゃ前衛的なとんがったアレンジの曲で、ボーカルパートが容赦なく切り刻まれているのが特徴。周りはDAの意図を最初理解できなかったというエピソードも納得である。
本当にDAが思い浮かべていたこの曲の完成形は、赤盤に入っているそのままのものではなかったかもしれない。さまたげ、と言ってしまうが、となっていたのは当時の機材であり技術でありCDという媒体であり時間であり、ここ20年で進化を遂げた様々な外的要素である。
DAは CAUTION!を眠らせておくことをしなかった。
ときに新しい声の持ち主を召喚し、ときにオリジナルとは違うリズムを与え、音を歪ませ、あの頃できなかった手段で今の時代に今の CAUTION! を、荒ぶる警告の息遣いが生き続けていることを証明した。
Icemanがもし型にはまったユニットで、ただのレガシーで、終わったものだったら、きっと新しい CAUTION!が披露されたところで、ただのライブ用リアレンジの域を出なかっただろう。
Icemanを始めたときにDAが語っていたよう、Icemanはなにも決めずに限定せずに、変幻自在に実験のごとく楽しむもの、というあり方そのものをそのDNAにもつ、CAUTION! はそんなIMの根源を象徴する曲ではないだろうか。
GATE II そのこころは…
曲順をただ書くだけで、その道の方なら イイもん取り揃えてますなぁ…と舌なめずりであろう。曲順だけで一晩酒が飲める、美しいだけでなく熱い血も流れる、それが赤盤 GATE II。