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建築設計にかかる期間

設計の依頼や相談があるときによく聞かれること


「設計にどれくらい時間がかかるのか」という質問をよくいただきます。
建物の規模や用途によって差がありますが、今回は戸建て住宅についてお話しします。

戸建て住宅を建てる方法は大きく3つ

1. 注文住宅で建てる
クライアントの要望を聞き、1から設計する方法です。家族構成や要望などをヒアリングし、それをもとに設計を行います(詳しくは後述します)。
当方の設計事務所もこのカテゴリーに入ります。
 
2. ハウスメーカーの住宅で建てる
住宅の設計、建築、販売を一貫して行う企業が提供する方法です。多くの場合、工業化されたプロセスや標準化された材料を使用します。
メリットは、住宅展示場で実物を見られる点です。どんな家ができるのかが具体的にわかるため、注文住宅との大きな違いです。
 
3. 建売住宅を買う
すでに建てられている住宅を購入する方法です。住みたいエリアが決まっている場合、探しやすいのがメリットです。
仕様は一般的なものが多く、こだわりのある方には不向きですが、1や2に比べて価格が手頃な場合が多いです。
 
それぞれの方法にはさらに細かい長所短所がありますが、それは別の記事でまとめようと思います。
ここからは「1.注文住宅で建てる」方法について詳しく説明します。

設計の始まり

家を建てるには、まず土地が必要です。これは当然のことですが…
というのも、クライアントさまの中には、土地を探している段階で「要望を伝えれば設計が進み、図面が完成したあとで土地が決まれば、その土地に合わせて仕上げてくれる」とイメージされる方もいます。
ハウスメーカーではこの手順でも問題ありませんが、注文住宅ではそうはいきません。
 
注文住宅の設計には、周囲の環境(日当たり、眺望、風通しなど)が大きく影響します。
そのため、土地が決まるまでは住まいへの想いをお聞きし、ご家族の考えを吸収することに集中します。本格的な設計は、土地が見つかってから始まります。

工事着手までの3ステップ

1. 基本設計
この段階では、クライアントさまと楽しくミーティングを重ねます。
- ヒアリング:住まいへの想い、部屋数、日々の過ごし方などをお聞きします。
- 予算の確認:設計契約時に伺った内容を改めて確認します。
- 提案:クライアントさまが具体的なイメージを持っていない場合が多いため、こちらから提案し、それをまとめていきます。
期間目安:決断が早い場合で3ヶ月、悩む場合は6ヶ月ほどかかります。
 
2. 実施設計
基本設計で決まった内容をもとに、工務店や現場向けの詳細な図面を作成します。
この段階では、決めるべきことはほぼ終わっているため、クライアントさまとのミーティングは少なくなります。
期間目安:1~1.5ヶ月。

 
3. 見積り・申請期間
- 工務店へ見積り依頼を行い、内容を精査します。間違いや誤解による見積りのズレを調整する「VE(Value Engineering)」も行います。
- 建築確認申請は、見積り期間中に進めます。
期間目安:見積り1ヶ月+精査・調整0.5ヶ月=約1.5ヶ月。

設計依頼から工事着工までの期間

見積りに納得いただけたら工事契約を結びます。
ただし、契約後すぐに工事が始まるわけではなく、職人や材料の手配に0.5ヶ月ほどかかります。
3ステップの期間を合わせると、
設計開始から工事着工までの目安:6~9.5ヶ月。
 となります。

工期を短縮する方法

事情があって期間を短縮したい場合、以下の方法があります
()内はその方法に伴うデメリットです。

1. 設計事務所からの提案に早く回答する(検討時間を短縮)
2. 図面作成の担当者を増やす(設計料が少し増加)
3. 見積り期間を短縮する(見積り精度が低下する可能性あり)

 ただし、これらを駆使しても最短で4.5~5ヶ月が限度です。
短期間の設計ではミスが起きやすく、後悔が生じる可能性もあり、あまりおすすめできません。
 

時間にゆとりを持たせて住まいを考える

家づくりは人生の大きなプロジェクトです。
注文住宅の魅力は、家族のライフスタイルや価値観を反映した「世界にひとつだけの住まい」を実現できるところですが、その分、設計事務所としっかりと対話することが大切です。
設計を急ぎすぎると、後から「こうしておけばよかった」と後悔することもあります。一方、時間をかければ、細部までこだわった設計が可能になり、住んでからの満足感が格段に高まります。

まずは気になる設計事務所を探して相談してみてください。多くは設計者として、建築の話をするのは大歓迎です。 住まいに対する想いや希望を少しずつ整理していくことが大切だと思います。

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