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よう実2-12.5巻 まとめ


全体評価
 

 発売前から尺が足りないことは明らかだったし、作者も認めていた。その中で話を清隆学年に絞って描いたのは英断だと思う。でもその中で森下のどうでもいい観察日記に2〜3ページ丸々使っていたのはもう一周まわって面白い。
 ただ南雲学年の消化不良感、せっかくの政治的展開がある今巻で石上、七瀬ら1年生達の出番なし。物足りなさを感じる人も多いと思います。この辺は3年生編で挽回して貰うしかないですね。

残された謎

①坂柳が作り出す綾小路清隆の弱点

 予想する上での要素は
・完全無欠の綾小路だからこそ生まれる弱点
・綾小路への仕返しがしたい
・退学前正門で坂柳が綾小路にしたお願い

この3つくらいしか思いつきません。弱点を作るとは即ち綾小路の思考・言動を操るということ。
 これまで綾小路を意図的に動かすことができたのは、石上京ただ1人。椿や宇都宮を使い八神拓也を退学に追い込むように誘導した。ではなぜこの誘導にハマったのか、それは綾小路が「八神はいつでも対処できる」と考えていたからである。その結果1年Cクラスから退学者が出てしまった。つまり綾小路が八神との実力差を考慮し殆ど重要視していないが為
「完全無欠であるが故に出た犠牲者」である。
つまり綾小路の弱点とは《脅威感じない生徒への対応が遅い》ということになるます。
 ここで坂柳の最後のお願いが出てきます。1つ目の外での再会。は学校外のことなので除外。重要なのは2つ目。「橋本の裁定役を綾小路に託す」これです。

つまり『坂柳は退学までの時間で橋本に何かしら罠を仕掛けた』ということです。
 
この橋本という生徒は優秀ではあるが能力が絶妙で
・「完全無欠」の綾小路にとって脅威ではない
・橋本を使って綾小路を困らせることで坂柳なりの「仕返し」になる
・綾小路への最後の「願い」に橋本をいれたこと

初めに挙げた3つの条件を満たす存在であり、龍園とのパイプもあります。橋本本人も自覚していない可能性が高いですが、綾小路VS龍園戦のキーマンになりそう。

②坂柳が理事長にした困った願い

予想する要素としては
・坂柳理事長の力を使う必要があるということ
・綾小路なら止める判断をするだろうということ
 
これにはざっくりと2つの予想ができます。
・ホワイトルーム関係者への接触
・高育に何かしらの形で携わる
個人的には前者の可能性が高いと思います。後者であれば綾小路が止める判断はしないと思うので。
ホワイトルーム関係者とは篤臣や教育者、現ホワイトルーム生、脱落者(雪や志朗)、月城など広い意味で考えています。この坂柳の行動は綾小路を自由にする為のもの。誰よりも綾小路との再会を願っている坂柳が自分に課した試練のようなものでしょう。

坂柳有栖
「⋯挑発がお上手ですね、理事長代行。しかしーー この代償は高くつきますよ?」
月城
「たかだか高校1年生の子供が、随分と面白いことを口にしますね。お山の大将をしているから、気まで大きくなってしまいましたか」

この1年生編11巻での掛け合いの回収もふくめて、
坂柳の理事長へのお願いは『月城との接触』

③坂柳の退学後の役割

『綾小路清隆が自由に生きられる道を作る』
ということでしょう。ですが、綾小路の中では1つの可能性に過ぎないものと考えられます。坂柳が言うように10も20も先を読む綾小路はあらゆる可能性に対応する為の準備を進めている。その1つに坂柳の存在が重要になって来るのでしょう。
あえてもう1つ挙げるならば
『天沢一夏が自由に生きられる道を作る』
天沢と坂柳には因縁もありますし、坂柳が自らの実力を示すという意味ではこの成果が一番わかりやすいでしょうし、少しエモい。

④一之瀬との契約

本来綾小路が用意していた2つの選択肢
・一之瀬が退学し、Dクラスに移籍
→Cクラス(元坂柳クラス)には別の策を与えなんとか4クラス均衡を維持する

・一之瀬が退学を拒否し、Cクラスに移籍
→Dクラスを完全に見限る決断。3クラスでの均衡を目指し、Dクラスはある種の観察材料にする

そして一之瀬の示した3つ目の選択肢は
「自身は退学せず、綾小路の力を借りる」という一見矛盾にしか思えないもの。

この矛盾は簡単に言ってしまうなら
D(一之瀬)クラスとC(綾小路)クラスの完全な連携。
一之瀬の強みは大衆を味方につけ扇動できること、簡単に言えば大抵のことは従わせることができる。
そして一之瀬に指示を出すのは綾小路。
これが示す答えは『綾小路が2クラスを支配する』
というものである。綾小路の言葉を一之瀬が伝えることでDクラスを支配し、Cクラスは直接支配する。
Dクラスを0の状態から立て直し、Cクラスと共に底上げする。イメージとしては綾小路が神で一之瀬が伝道師、一之瀬が綾小路のクローンになった。
4クラス均衡へ完璧な準備が整ったといえる。

⑤高円寺が望む本当の自由とは

高円寺社長の発言から六助が何かに囚われていることが確定しました。私は過去の考察から高円寺六助は鬼島総理が作ったホワイトルームに類似する施設の出身であると考えています。そしてこの施設の最高出資者が高円寺社長であると考えられます。
 ホワイトルームの最高顧問・綾小路篤臣の息子である綾小路清隆。類似施設の最高出資者・高円寺社長の息子である高円寺六助。清隆と六助はかなり似た境遇で育てられたと考えられます。違いは持たざる者(綾小路)か持っている者(高円寺)か。
 清隆がホワイトルームに囚われ未来を決められないように、六助も施設に囚われているのではないか。
 六助は過去の発言から高育に来たのは自分の意思ではないことが確定しています。つまり、「高育に入学する」これが元々自由になるための条件だったのでないか。しかし、この条件は最新巻で「Aクラスで卒業すること」が追加されてしまいました。ではなぜ条件が追加されてしまったのか、篤臣が高円寺パパを焚き付けたからです。ですが元はと言えば清隆が前園を退学させ、一之瀬を潰し、下のクラスに移籍したことによって鬼島と高円寺社長に目をつけられたことに原因があります。
 六助はこの展開を予測していたのではないか。

高円寺六助
「少し釘を刺しておこうと思ってね。ここ最近の君は、少々目に余る行動が増えてきている」


この忠告はこの先の展開を危惧した上の発言だったのでは無いか。結果としては本当の自由を得るための条件は追加されてしまっています。

持たざる者の最高傑作・綾小路清隆
持って生まれた者の最高傑作・高円寺六助

最強VS最強。裏で大人たちの陰謀が渦巻くこの2人の勝敗は3年生編の最重要ポイントになるでしょう。

今後の展開

ここからは根拠が薄く考察とは呼べないので私の妄想だと思って軽く読んでください。

鬼島総理の余裕の理由と堀北クラス

 高円寺社長と綾小路篤臣の賭けが行われてる中で鬼島の態度に違和感を覚えた人もいるのではないでしょうか。いくらなんでも「余裕すぎる」んです。
確かに鬼島は現内閣総理大臣。対して篤臣は共栄党の一議員。立場の差は明らかであり、高円寺社長とは懇意の仲であることが伺えます。これだけ見ると余裕なのは当然であると思えるかも知れません。

しかし、鬼島は篤臣の存在を知っていました。それは一議員としてではなく、市民党の前時代を支えた
「直江仁之助の隠し刀」としての認知です。篤臣は直江にあと10年もしたら押さえきれなくなるという評価を得ていて、それを邪魔だと感じた鬼島・直江によって一度政界を追放されました。つまり篤臣は鬼島が警戒するに値する人物なんです。にも関わらず鬼島の態度は「余裕すぎる」んです。

ここで篤臣と高円寺の賭けの内容を振り返ります。

篤臣
「ここで1つ賭けを提案してもよろしいでしょうか?もし、清隆があなたのご子息の所属するクラスがAで卒業することを阻止した場合、また私と会ってもらいたい。それも、今度は誰の邪魔も入らない1体1の状況で」

ザックリ言ってしまうと
堀北クラスと綾小路(旧坂柳)クラスどちらが勝つか。

篤臣、高円寺社長はそれぞれ自身の息子の能力に絶対の自信を持っているた余裕なことを分かります。
しかし本来鬼島にはその余裕も自信もないはず、では何故その傍観者とも取れる余裕が生まれるのか。

「堀北クラスが負けるはずがない」

鬼島がそう考えているからです。もっと言えば

「堀北クラスは元々高円寺六助の為に集められた」

堀北クラスはハッキリ言ってしまえば優秀すぎる。スタートこそクラスポイントを全て失う目も当てられないようなクラスでしたが、個々の能力を見るとDクラスに振り分けられたことに疑問を持つような生徒が多く在籍しています。

綾小路清隆
「オレをどう評価しているのかは知りませんが、2年Dクラスにも十分優秀な生徒はいると思います。それに1年Dクラスを見ても優秀な生徒は沢山いると思うですが?」
星ノ宮
「うーんそうだけどさぁ⋯⋯やっぱり去年からちょっと学校の方針変わったよね?」

この星ノ宮の発言から分かるように綾小路の学年は学校側から今までにないアプローチを受けている。
堀北クラスは問題はあれど現在はAクラスの位置に付けています。それは綾小路清隆というジョーカーの存在が大きい。つまり完全無欠なジョーカーが1人いればAクラスに上がれるクラスということである。
 このジョーカーとは本来高円寺六助の役割だったのではないか。

鬼島は高円寺六助を利用して
自身が設立した施設の最高傑作が史上初めてDクラスからAクラスに上がって卒業する」
この状況を作り出したかったのではないか。

この前提があれば、堀北クラスがAクラスに昇格し、高円寺六助が本気をだすことで相手が誰であれ負けるはずがないと確信している。
これが「余裕すぎる」鬼島の態度の正体である。

石上世代(新2年生)の今後について


今巻では名前のみで石上、八神、天沢が登場しただけ。衣笠先生のあとがきを見ても描ききれなかった新2年生達。また3年生編は1年生編のように綾小路学年をメインに描くことが明言されており、大した見所もなく終わってしまうのではないかとかなり不安です。

結論を言うと重要な出番が必ずある。無いと困る。あって欲しい。石上を出せ。内山昂輝の無駄遣いをするな。という感じです。さすがにあるでしょう。

実際の所3年生の争いをメインする、と言っても介入する余地は十分にあると思います。その余裕とは、
綾小路篤臣と高円寺社長の賭け である。

財閥関係の石上、椿。出自不明の七瀬、宇都宮
この4人が綾小路と高円寺どちら側につくかがかなりポイントになりそう。

石上、椿、宇都宮、七瀬

あれ、天沢は?と思う方も多いと思いますが、この4人と天沢では立場がかなり違います。天沢は現状後ろ盾がなく、限りなく一般生徒に近い状態にあります。もちろんストーリーには関わってくるとは思いますが基本綾小路の味方をするでしょう。

天沢

この新2年生たちの考察は過去のnoteでも行っていますが簡単にまとめます。

石上京
・篤臣を支援する石上グループ会長の一人息子
・政治家に興味をもっている
・坂柳と一之瀬のいい所を足したような存在

椿桜子
・元WR生、椿雪を姉にもつ
・OAAは高くないが高い指揮能力をもつ
・清隆を本気で退学にしようとしていた

宇都宮陸
・敬語が苦手だが仲間思い
・身体能力が高い→喧嘩なら宝泉に対抗できる?
・石上から一定の信頼を得ている

七瀬翼
・清隆の元執事松雄の息子と幼なじみ
・頭脳、身体能力ともに高水準
・清隆を守るような行動をとっていた

綾小路達が熾烈なAクラス争いを演じる中で、政治・派閥争いの核となるのがこの学年だと思います。
まず、12.5巻の篤臣の発言から清隆は同じ生徒に負けることなど絶対に有り得ないと確信しています。
つまり、天沢・八神は清隆への試練の一環として高育に送り込まれたに過ぎないのです。

月城
「任せていただけるなら結構。承知しました。そちらの計画を実行される際にはご協力しましょう。後々、幾つか不足しそうな駒を用意する必要もありますね。」

このことを前提に置いた場合、椿、宇都宮、七瀬を入学させたのは篤臣ではないと考えられます。
この3人の後ろにいるのは恐らく月城であり、独自に清隆と因縁のある人選をした可能性が高いです(宇都宮は一般生徒の可能性あり)。

月城の言う通り入学はしたが、高育にそこまでの関心はなく、クラスに2000万Pを残して綾小路と共に学校を去ろうと考えていた。しかし綾小路の行動を見ている中で悪い人間ではないと判断を下し、学校に面白味を感じたこともあり、残ることを決める。

椿の行動はこれで説明が着きます。宇都宮が関係者であれば似たような理由でしょう。

七瀬翼の正体

 この生徒は言動に不可思議な点が多すぎます。篤臣が高育に清隆を意図的に送り込んだのなら松雄親子の復讐ために入学してきたという七瀬とは一体なんなんでしょうか。もちろん真実を知らない可能性もありますが、無人島後清隆がホワイトルーム生や関係者に襲われる心配はないと確信している様子でした。つまり七瀬は知っている側の人間であるということです。更に七瀬は一般生徒にしては総合力は高すぎるんです。全体の能力が高い、まるでホワイトルーム生みたいですよね。そして2年最初の特別試験で高円寺が七瀬と組むことをあっさりと承諾し、七瀬も高円寺の身体能力の高さに興味を示していた。ここから考えられるのは

七瀬翼は高円寺六助と同じ、鬼島が設立した施設の出身者である

根拠はかなり薄いので妄想の域をでません。ここから更に妄想を拡大させて、七瀬の目的は

高円寺六助をAクラスで卒業させる

七瀬翼という生徒は1年間六助が何もせず、Dクラスのままだったことを見兼ねて鬼島側の人間がアシストとして送り込んだ人材であると予想します。事実として七瀬は入学して直ぐに堀北クラスに接触しています。この時は宝泉主導ではありましたが、目的は違えど同じDクラスに着目する宝泉に敢えて乗っかったという行動になります。

七瀬
「堀北先輩と手を取り合い互いのクラスを支え合いたいと考えていたことは本当です。ただ⋯綾小路先輩を狙うという戦略が最優先だっただけです。」
「ボクには⋯綾小路先輩がこの学校に相応しい人だとは思えなかったからです。」

この通り、七瀬が高円寺の所属する堀北クラスと協力関係を作ろうとしていたことは事実。しかし綾小路は退学するべきだと考えていた。この「相応しい」という発言、少し違和感があり生徒と言うよりは学校関係者の発言のように思います。つまり七瀬が言いたかったのは、
「鬼島先生が推奨するこの学校に相応しくない」
月城から松雄の情報を聞いていた七瀬は綾小路を堀北クラスの癌と判断し排除を目論みます。しかし、無人島試験内で綾小路自身も父親の被害者であると判断し排除ではなくAクラスへ上げるために利用する方向に変更。ホワイトルーム生から守るような行動をとり八神が退学した現在、目立った動きは無い。
しかし綾小路が堀北クラスを離れた今、七瀬はどんな判断を下し、行動を起こすのか。

石上京の目的

七瀬と同様、この生徒もまた言動に謎が多い。中学3年時に高育に訪れており清隆に電話をかけている。篤臣に心酔しているという割には清隆には興味が無く、敵でも味方でもないと発言。暴走したホワイトルーム生の排除など行動に一貫性がないようにも思える。間違いなく言えるのは「天才」であるということ。身体能力は低そうだが頭脳面では坂柳と同等もしくは上回るほどであり仲間からの信頼も厚い。
本人曰く「篤臣に勧められて普通の学校生活を楽しむために高育にきた」といっているが、メタ的にそれはないでしょう。

綾小路篤臣
信頼の置けぬ月城には清隆の未来に関することだけを話しておく。しかし狙いはそれだけではない。いずれ潰さねばならぬ敵、鬼島と高育の弱みも握っておきたいところだ。

清隆への試練を与える生徒の中に敵の弱みを握る篤臣の本命の生徒が存在する。その生徒こそ石上京。

つまり石上の目的は清隆ではなく、高育の弱みを握ることにあると考えられます。これで清隆や坂柳に興味がないとこも頷ける。更に石上の行動に支障をきたす可能性のあるホワイトルーム生八神を排除する行動にも当てはまります。
 篤臣は清隆と同様に様々なことへの対策をするタイプなので敵の弱点も見つかればラッキーぐらいの感覚かも知れません。その上で実力を試す意味で石上を派遣したと考えられます。以上のことから石上の行動は高育を探ることに繋がっている。そうなると一つの疑問が出てきます。

石上京は堀北鈴音に興味を持っている

神崎
「あの男は敵か味方か、そのどちらかにしか興味を示さないのは事実だ。つまり、すでに石上の中で堀北がそのどちらかに分類されていることになる」



石上が堀北を敵か味方かで認識している。堀北は高育の弱みを握ることと関係があるのか。

①堀北鈴音が生徒会の人間だから
②堀北学と面識があるから
③堀北鈴音のクラスに高円寺が在籍しているから
④堀北鈴音の出身中学が関係している

現時点ではこの4つぐらいしか思い浮かびません。
 まず①。これが最も簡単で単純な答えです。ですが、石上は鈴音からの生徒会入りの提案を拒否しています。高育を調べるなら生徒会はもってこいだと思うのですが、石上的には違うようです。

 次に②ですが、鈴音と初対面であるならば兄の学と面識があったんじゃないか。という説です。学の実力は綾小路も認めているので石上にも何らかの影響を残している可能性があります。しかし石上と学は3歳差、中学ですら接点を持つのは難しいため可能性は低いです。

 そして③、これは①同様シンプルな答えで敵対派閥の高円寺が属するクラスのリーダーとはいずれ敵対するだろうと言うのを見越した発言。

 最後に④は鈴音、櫛田、学の出身である中学校、これが関係しているのではないかという説。この学校は鈴音曰く「特殊なマンモス校」。この特殊が何を意味するかによって話の信ぴょう性が出てきます。
 もし高円寺や七瀬が出身の鬼島の施設の前段階、モデルケースのようなカリキュラムを組んでいる学校とかなら面白くなりそうですね。

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