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初めての海外旅行にひとりでインドに行った話 1/2 火事場の馬鹿力編

|初めての海外旅行にインドを選び、一人で降り立った結果、案の定打ちのめされたけど、行って良かったよっていうよくある旅記録|

2023年9月、21歳の私は人生で初めて羽田空港を歩き、(物心がついてから)初めて飛行機に乗った。行先はインド。

今回の旅の最大の目的はネパールでエベレスト街道を歩くこと。せっかくネパールまで行くならインドも行こう!というよくばりマインドだ。

インド・ネパールの後はイギリスでの留学が控えていて、日本に帰るのは半年後の予定。そのためか、初めての海外、大冒険に出かける気分で見送りに来てくれた母と別れた。

機内ではすこぶるご機嫌な私。JALの機内食に舌鼓を打ち、村上春樹の新作を読みふけった。9時間のフライトを経て、デリーに到着する。


1日目:私と「外国」の出会い


機内を出て、添乗員さんたちに見送られる。タラップへ出たところでJALのサービスは終わる。日本式の素晴らしいお見送りをされたおかげで、実はまだ日本にいるのではないかと錯覚していた。入国審査場までの通路をのんきに歩いていた私はベンチにだらりと座る空港スタッフを見て、ここは「外国」なんだと思った。
とりあえず、空港の清潔なトイレをしっかり堪能しておくことにした。

ミス①:事前の情報収集を怠った

最大最悪のミス、すべての元凶。宿への行き方から公共交通機関の乗り方、simカードの入手方法、ATMの位置まで、それら全て、空港に着いたらゆっくりベンチに座って、フリーWiFiでもろもろ確認すればいいやーと悠長に構えていた私。そもそもそんな便利なものが簡単に使えると思うこと自体が間違っていた。フリーWiFiには現地で使える電話番号かキオスクのコード?が必要らしかった。そもそもキオスクとは何ぞや。読者の感想を予想するならば、初めての海外なのだから、インターネットがなくても宿にたどり着けるくらいの準備をしておくか、事前にesimを買っておけという話に尽きる。

事前に集めるのに苦労する類の情報ではない。検索でいくらでもヒットする。私が泊まった日本人宿のブログにも丁寧にまとめられていた。私は国内でふらふら旅行するノリをそのままインドに直輸入していた。

いつでも簡単に情報へアクセスできる環境で生きてきたので、私は情報に対するリスペクトのようなものを失っていたのかもしれない。それは情報を集め、まとめてくれる人へのリスペクトであり、また、日常的に情報インフラを整備してくれている人へのリスペクトでもある。

ミス②:空港のsimカード屋、ATM、両替屋全スルー

simカード屋やATMを見つけられなかった。両替屋は見つけた。
外国を旅する者にとって「空港のレートは悪い」というのは一つの定石である。それを馬鹿の一つ覚えで、両替屋を無視して、インド・ルピーを手に入れることなく、空港の外に繰り出してしまった(しかも、インド・ルピーは日本で事前に入手できない)。クレジットカードで切符を買うくらいはできるだろうと思っていた。

今思い返せば、ネットがあればUberという選択が採れたし、現金があれば流しのタクシーに乗れた。どちらもなくても日本のカードで支払ってプリペイドタクシーにありつけたかもしれない。(後の祭)

宿に行くために「電車に乗る」という極めて根源的な情報は出国前に見た宿のブログからうろ覚えしていたので、空港の地下鉄駅を目指した。

とはいえ、路線図を見てもここがどの駅なのかさえ見当がつかなかった。近くにいたお兄さんに尋ねてみたが、彼も似たような悩みをもっていたらしいので、二人で路線図を眺めて、我々の現在位置を特定した。そして、私は彼の携帯からネットのテザリングを頼んだ。おかげで宿のおよそ正確な位置をGoogleMapにピン留めすることができた。それ以上のものを調べる時間を取るのは彼に申し訳なかったので、そこまでにした。

カードが使えそうな券売機はなんの躊躇もなく拒否反応を示したが、有人カウンターではカードが受け入れられた。もしここでカードが使えなかったら私の精神は持たなかったかもしれない。

電車を待つ間、ドコモの海外ローミングサービスを思い出す。高額なので短時間だけオンにした。けれどその時に一体どんな情報を得たのか全く思い出せない。

「空港特急」車内から とうとう来てしまった

ミス③:重すぎる荷物

私の精神が持たなかったかもしれないというのは、
100L級のカリマーのバックパック(15㎏)とスーツケース(26㎏)、機内持ち込み限界のリュック(8㎏)、総重量50㎏の荷物で移動していたからだ。中身にはその後ネパールでトレッキングをしたり、イギリスで生活をするための冬の衣類、PCなどが詰め込まれていた。勿論、後々必要なかった物だらけだ。
もし地下鉄が使えなかった時に引き返す心労たるや、張りつめていた根性の糸がぷつりと切れてしまっただろう。

大体、村上春樹の新作「街とその不確かな壁」のサイズ(14x3.5x19.8cm)、重さ(655g)は旅行に不向きすぎる。気付けば他に旅行・留学中に読もうとしていた本が10冊以上スーツケースに入っていた。(結局半分も読まなかった)

とにかく、この重量が精神と体力の消耗を速め、余裕を奪っていった。

参考:荷物のみなさん(カトマンドゥのホテルにて)
+スーツケース

ミス④:降りる駅を間違える

地図を見て(オフラインでもGPSで現在地は分かる)、どこで降りれば宿に最も近いのか考えていたが、やはり無意味に焦っていて、本来降りるべき駅の一つ前でそのことに気づかずに降りてしまった。

デリーメトロは駅、列車ともに清潔

駅や道路にもやけに人や車が少なかった。そういえば、空港もがらがらだった。どうやら、ちょうどデリーで開催されていたG20サミットの影響らしい。デリー首都圏政府(響きがかっこいい)は厳重な警備体制を敷いており、街からは人がごっそり消えていた。

駅を出て、目がうつろになりかけた時、おじさんがどうしたんだと声をかけてきた。ここに行きたいんだと地図を指差すと「案内してあげる」と一言。突然話しかけてきた知らない人に着いていったのは人生で初めてだ。余裕がなくなっていた私はこれまで日本で教えこまれた禁忌をあっさりと破ってしまった。

通りすがりのおじさんに命運を託す

最初はタクシーか悪質ツアー会社の客引きだと警戒していた。けれど、「そうではない人の雰囲気」を感じさせた。彼はすれ違う人々に道を聞きながら、野良犬に怯える私の先をマイペースに歩く。

歩きながらようやく、どうやら降りる駅を間違えたことに気付くが、引き返す気などせず、この気合で何としてでも宿へたどり着くことを決意した。

マイペースな一例
色々な道を歩いたが、スーツケースの車輪は壊れなかった。
おじさんとの距離ができつつある。(心の距離ではない)

あちこち曲がって、最短距離ではなくても、確実にゴールに近づいていた。

けれど、おじさんは歩くのが早い(私が遅い)。時々こちらを振り返って待っていてくれたが、付いていくのに必死だった。

結局、おじさんを見失ってしまった。

Googlemapが宿はもうすぐだと励ましてくれる。人通りも増えてきて、ゴールが近い。

ありがとう、おじさん
ここまで私を連れてきてくれて

いかにもな裏路地を歩いて

駅を出て40分、宿に着いた。 

汗が滴り落ちる。息が浅くて速い。
ベッドに横たわると、そこからしばらく動けなかった。交感神経を鎮めるために友達に軽く1時間も電話してしまった。ありがとう。

日本時間で言えば夜9時から40分以上も、初めての土地で、正しいのかよく分からない道を尋常でない量の荷物を抱えて、よく倒れなかったものだ。気合で耐えていたと言わなければ何で耐えていたというのだろう。これぞ火事場の馬鹿力。

ここまで情けない限りだが、良い出会いもあった。

自分を褒めたい選択:日本人宿に泊まった

準備不足とはいえ宿だけは確保してあった。
安宿街、バックパッカーの聖地などと呼ばれるパハールガンジに位置している日本人旅行者が集まる宿だ。

4Fに共有スペースがあって、大学のサークルの部室でたむろしているときを思い出させるリラックスした雰囲気だった。私は大学1年生がサークルの先輩たちの会話に混ざるようにいろんな人達と話をした。

宿のスタッフさんや手練れの旅人たちとの雑談の中から色々なことを教えて頂いた。腹を下さないお店の選び方からお得な精力剤のことまで(まだいらない)。
私はこの宿を安息地と呼び、計4泊した。

共有スペースにいた方たちとお話してご飯に連れていってもらった。
私が荷物を前抱えで歩く一方で、旅慣れた様子のふたりは後ろポケットに財布を突っ込んで歩いていた。

バターチキンカレー(うまい)

G20など露知らず、クラクションが響き渡り、車が人間のスレスレを通り抜けていくパハールガンジの街をおびえながら歩いていた。明日目を覚ましたら東京に戻っていてほしいと願った。

かなり、断片的な知識だけで旅をしていた。ミネラルウォーターはしっかり蓋が閉まっていたか確認しろ、空港のレートは悪い、など、どれも大事だけれど、自分は事前準備をしない海外旅行のいったいどこに自信を持っていたのか。ダニングもクルーガーもびっくりだ(それ以前の問題かもしれない)。

何はともあれ、道中でチカラ尽きることはなく、おいしい食事とベッドにありつけた。あの状況からすれば、今日はさしずめ充分すぎるくらいだろう。

そのようにして、長い一日が終わった。誰もが5歳の時に感じていた一日の長さだ。

長々とインド1日目だけで終えてしまいましたが、2/2に続きます!
最後までお読みいただきありがとうございました。

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