1日20分7週間で親子関係を劇的に改善する!PRIDEコミュニケーション
子どもについつい厳しく当たってしまう、育児に対して喜びを感じられなくなってきた、そういった悩みを抱える方は少なくないと思います。今回はそんな悩みを解決できるかもしれない、1日20分から始められるある方法についてカルフォルニア大学の研究を参考に紹介していきます。
●PRIDEコミュニケーションって何?
PRIDEコミュニケーションとはカルフォルニア大学などで推奨されている対話のテクニックで、肯定評価(praise)、振り返り(reflect)、模倣(imitate)、描写(describe)、熱意(enthusiasm)の5つの要素から成り立っていて、その本質は相手を理解し尊重しようとする姿勢にあると言えます。なので親子間での対話は勿論、仕事関係や友人関係、恋愛関係にも実は応用の効く、非常に便利なものとなっています。
現役保育士の私も子どもと話す時にこのPRIDEコミュニケーションを意識しているのですが、子どもとの心理的な距離が近づきやすくなったり、子どもたちの方から嬉しそうに話しかけて来てくれたりと、かなり効果を実感できているので本当におすすめです!
・PRIDEコミュニケーションの凄さ
具体的なやり方の前に、このテクニックのメリットを挙げていきましょう。
まず冒頭でも触れたように、親子関係の改善が期待できます。カルフォルニア大学の研究によると、1日20分間子どもと遊ぶ時間を作りその間PRIDEコミュニケーションを実践したところ、7週間後には子どもの問題行動が改善され親子関係が良くなったそうです。
また、両親のコミュニケーション能力の改善も見られたそうです。PRIDEコミュニケーションを実践したことで相手を理解しようとすることが習慣付き、それを尊重できるようになったことが原因でしょう。
後述する具体的な褒め方を意識することも、コミュ力改善に一役買っていると言えますね。
更に凄いことに、PRIDEコミュニケーションを7週間続けたことで両親の育児ストレスが減ったということも確認されています。
1日20分間のPRIDEコミュニケーションを7週間続けるだけでこれだけのメリットがあるならやってみる価値がありますよね。
●PRIDEコミュニケーションの5つの柱
PRIDEコミュニケーションの概要とメリットが分かったところで、ここからはPRIDEコミュニケーションの5つの要素を詳しく見ていきましょう。
・肯定評価(praise)
まず1つ目の柱は肯定評価です。簡単に言うと、子どもの行動を肯定的に捉えて褒めましょうという事ですね。勿論ずっと肯定的に捉えるのは菩薩でもなければ難しいと思いますので、PRIDEコミュニケーションを意識する20分間だけは頑張ってみましょう。
ここでポイントになってくるのは、先程もちらっと話した具体的な褒め言葉です。例えば子どもがおもちゃの片付けをしている場面で、「偉いね!」「おもちゃを片付けられてかっこいいね!」といった言葉をかけるのは非具体的な褒め言葉になります。対して具体的な褒め言葉は、「きちんと元の場所に戻せたね!」「ママに言われる前に片付けしてくれたんだね!」など、子どもの行動を具体に褒めるという言葉がけになります。
非具体的な褒め言葉も勿論良いのですが、子どもは意外と物事の因果関係を理解しているので、「自分のこの行動を褒めてもらえたんだ。」と明確に分かる具体的な褒め言葉も、子どもの自信や自己肯定感につながるので重要なんですね。
具体的な褒め言葉をかけるには、子どもの行動をよく見て子どもにも伝わる言葉選びをする必要があるので、自然と親の観察力や語彙力も鍛えられます。子どもの語彙力向上にもなるので、まさに一石二鳥ですね。
また、結果や能力に焦点を当てた褒め方をすることも控えるのが無難です。というのも、結果ばかりに意識を向けると「固定マインドセット」と呼ばれる心理状態に陥り、努力をすることやチャレンジ精神が減り、挫折からも立ち直りにくくなるといった弊害が現れます。あくまでも過程や行動に対して褒めるのが大切だということを意識しましょう。
・振り返り(reflect)
2つ目の柱は振り返りです。これは子どもの発言を繰り返す、言うなればオウム返しですね。「今ね、ポケモンの絵を描いてるんだ。」と言われたら「そうなんだ、ポケモンの絵を描いてるんだね。」と返すといった感じです。ミミッキングとも言われるテクニックなのですが、これは相手に「自分の話をちゃんと聞いてくれている」という感覚を与え、安心感や共感を生み出してくれます。関係性の基盤を固めてくれるようなイメージですね。
また振り返りには相手の言葉や感情を理解して受け入れ、その感情を含めて子どもに返すという工程も重要になります。例えば子どもが「宿題なんてやりたくない!」と言った時に「宿題をやりたくないんだね。何か理由があるの?」と聞いてみると言った具合です。こうすることで子どもは、「親は自分の気持ちまで分かってくれている」という感覚を持つことができます。
更に振り返りには相手の自己理解を促進させる効果もあります。自分の言葉や気持ちを反射されたことで、自分の感情や考えをより明確に認識できるようになるんです。
・模倣(imitate)
3つ目の柱は模倣です。子どもの行動を真似するのも悪くはありませんが、ここでいう模倣とは子どもの行動や言葉から影響を受けた行動を親が取るというものです。例えば子どもが生き物図鑑を読んでいるのを見たら、団欒の際に「そういえば面白い動物がたくさん出てくるドキュメンタリー番組を見つけたんだ。一緒に見てみる?」と言ってみたり、子どもがおままごとでハンバーグを作っているのを見たら、「〇〇ちゃんが作ってるのを見て私もハンバーグ作ってみたくなっちゃった。」と言って夕食に出してみたりと、子どもからも影響を受けているよと行動をとることが重要です。
なぜ模倣が大事かというと、子どもは自分の行動が親に影響を与えたと分かると自己効力感(自分はこんなこともできるんだという感覚)をブーストすることができるからです。
それとシンプルに子どもからしたら親が自分の真似をしてくれたというのは喜びにも繋がります。大人でも、例えば自分がおすすめした本を読んでくれたり、自分の働き方を参考にされたりすると嬉しく感じると思いますが、それと同じような感覚ですね。
・描写(describe)
4つ目の柱は描写です。これは子どもの行動を実況するようなもので、reflectと違い客観的な事実のみを話します。「宿題をしているね。」「電車のおもちゃで遊んでいるんだね。」といった言葉がけです。ただ事実のみを伝えることが大事というのは意外ですよね。
これも子どもに意識を向けているということを表せるというメリットがありますが、更に子ども自身が自分の行動を見つめ直す、いわゆるメタ認知という能力を伸ばすことにも繋がります。メタ認知が高い人は、冷静な対応が得意、柔軟性がある、周りへの配慮ができるといった特徴を持ちますので、ハードスキル(目に見える学力などのスキル)からソフトスキル(コミュニケーション能力などの目に見えないスキル)に注目が集まっている現代だからこそ描写は意識的に取り入れたいですね。
ここで注意したいのは、決して親の主観的な評価を付け加えないことです。例えば、「読書をしていて偉いね。」ではなく「集中して読書をしているね。」、「なんで野菜だけ残してるの!だめじゃない!」ではなく「野菜が残ってるね。どうしたの?」といったように、プラスな評価もマイナスな評価もしないことが大事です。
これにはさまざまな理由がありまして、子どもの内発的動機付け(自身の好奇心や興味に従った行動)が阻害され常に親の評価を気にするようになる、親の期待に応えようとするストレスを生む、子ども自身の判断力や自己評価網力の発達を妨げる、失敗を恐れる心理を生むなど結構弊害が出るんですね。とはいえ褒めたい時も勿論あると思うので、そういう時は肯定評価を実践するなどして使い分けていきましょう。
・熱意(enthusiasm)
最後の柱は熱意です。これも当然のような話ですが、子どもへの愛情や情熱といった熱意を持ちながら育てましょうというものです。少し脱線しますが、セールスの成功要因の85%が熱意であるという研究があります。子育てにおいても通ずる部分はあると思っています。
ただ、気合いだけで熱意を持続させようという根性論でいくのは危険なので、熱意を持続させるコツを知っておくのも大切です。
今日はいつも嫌がる野菜を一口は食べたなといった日常の小さな成功体験の積み重ねに目を向けるのも良いですし、一緒に料理を作ってみたりちょっと遠出をして自然の中で一緒に遊んでみたりといった定期的な非日常体験を共有することも熱意の維持には有効です。
それから自分自身に対しても子どもに対しても完璧を求め過ぎず、セルフケアも重視すること。これが熱意の維持には最重要かなと思います。完璧を目指すと過度にプレッシャーがかかり苦しむことが増えますので、今日は仕事で疲れたからPRIDEコミュニケーションどころじゃないわという時にはがっつり自分のために時間を使うことも意識していただきたいです。
いかがでしたか?PRIDEコミュニケーションは特に2歳〜7歳頃の子どもに効果的とは言われていますが、それより上の子や大人相手にも非常に効果的なテクニックとなっています。
今の親子関係が良好な方も、そうでない方も、きっとPRIDEコミュニケーションを意識的に取り入れていくことで今よりももっと親子の仲が深まっていくと思います。
ではまた!