子供のころ🚲③
🍺飲み屋街の近所で育つ🍶
私の家は豆菓子などのおつまみ屋だった。
うちから5分も歩くと、華やかなネオン街。
バーやスナック、料亭やキャバレーが並ぶ。
背中や腕、足に登り龍や牡丹の花などのきれいなタトゥーがびっしり入っているおじさん達の事務所も近くにあった。
この辺りは江戸時代から昭和30年頃まで遊郭だったらしい。
近所にはアパートや貸し間の建物が多くて、夜のお仕事をしている女の人達が暮らしていた。
時々夜中に近所から男の人の怒鳴り声とドアを無茶苦茶に叩く音が聞こえていた。
「開けろー!開けんかー!中におるのはわかっとるんぞ!」
「うるさい!帰れ!あんたにはカンケーないやろ!」
女の人も負けじと叫んでいる。
男の人がドアを壊しているのかドタンバタンと音がして、そのうちガシャーンとガラスの割れる音がする。
「お父さん、警察呼んだ方がいいよ。」と母。父は近くの交番に電話をする。
さすがに近所の人達も窓から顔を出し、野次馬も出て来て怒鳴り合っている建物の方を見ていた。
「またかー。」と思いながらも私はその男が今度は我が家へ走って来るんじゃないかと思い、怖くてドキドキしていた。
弟と妹は布団に潜り込んで耳をふさいでいる。
こんな事は日常茶飯事。
パトカーのサイレンが聞こえて来ると「あ、おまわりさんが来てくれた!」と思い、ホッとして眠りにつく。
こんな事がよくあっていた子供の頃。
おかげでいつもと違う異様な音に敏感な大人になってしまった。