Xデザイン学校 ビギナーコース#02

「自分事」として捉えた創りたい未来と「実際の市場規模」のバランスは、スタートアップにとって、一番難しいところだと考えている。

授業の中で例として挙げられたNetflixの韓国ドラマ「スタートアップ:夢の扉」の中で、主人公が目の見えない人たちのために、読み上げアプリを開発しようとした際、周りから同じような疑問をされたことある:「アイデアは確かに社会貢献につながるが、実際に目の見えない人の市場はどれだけあるのか?」

よく考えると、確かにそうだ。

我々がよく知っている有名なサービスは、大体市場の母数が元々大きい。さらに、母数が大きすぎて、ターゲット像のイメージがぼやけている気味(むしろ使っていないユーザーの方が特定しやすい):Google、Yahoo、facebook、twitter、Line、Netflix、Amazon

このようなファクトから、スタートアップには2つの壁があると考えている。

1 巨大プラットフォームの「インフラ化」


Google、facebook、twitterのようなサービスは、プラットフォームより、実は社会のインフラに近い。

何かを調べるときは「Google」。買い物するときは「Amazon」。私たち毎日当たり前のように使っているプラットフォームの本質は、「ビジネス」だと考えている。とはいえ、私たちはもうこういったプラットフォームがない生活を想像できないため、社会の存在意義でいうと、インフラの方が正しい。

「インフラ化のプラットフォーム」の特徴は、そのプラットフォームを使用することが「社会的慣習」になっていること。例えば、今よく「もし有名人になりたいなら、Youtuberになろう」のような話を耳にするが、これはまさに「Youtube」というプラットフォームが社会のインフラになった証拠ではないかと思う。

では、このような「インフラ化のプラットフォーム」の存在はスタートアップにとって、なぜ壁になるのか?

先ほどの例の続きだが、例えば今日あるスタートアップは「料理動画のLiveプラットフォーム」を作る、ということにしよう。その時、真っ先にぶつかる壁は、恐らく「Youtubeには既に何千万人のユーザー(もっと多いと思うが)がいるのに、誰があなたのプラットフォームを使うのか?」という疑問だと考えられる。

この例では、「料理が好きな人」「料理が得意な人」といった特徴のユーザーがターゲットになるため、市場の規模もそこそこあるではないか。とはいえ、「既存の『インフラ』と競争する」ことは、ほとんど「『社会的慣習』と戦う」ことに近いため、誰が勝つのかはもういうまでもなく。

2 市場が思ったよりニッチ


インフラと戦えない結果、スタートアップは二つの道しかない:
① インフラの足りないところを補うプラットフォームやサービスを作る
② 今までないプラットフォームを作る(ブルーオーション戦略)→次のインフラになる可能性ある

インフラと戦わない結果、目覚ましいプラットフォームやサービスを世に出せるかもしれないが、他の競合との競争はもちろん、「社会的慣習」ではないため、市場が思ったよりニッチだったり、サービス自体がなかなかビジネスにならなかったり、といったリスクも考えられる。

これは本文の冒頭に、
「『自分事』として捉えた創りたい未来と『実際の市場規模』のバランスは、スタートアップにとって、一番難しいところだと考えている。」
と書いた理由。

「自分事」でないサービスやプラットフォームは、ユーザーを感動することはできない。なぜなら、自分さえニーズを感じれないなら、ユーザーのイメージは絶対想像できない。小説のように、主人公に自己投影しにくいものは、決して読者にとって優れた小説とはいえないのだ。

一方、熱狂的なファンはいるが、なかなか売れない小説はどうなのか?最終的に絶版になってしまうのではないだろうか。

よく優れたプロダクト(本文ではサービスやプラットフォームを指す)は最初に熱狂的なファンを作る、そしてだんだんファンを増やしていく、というのだ。とはいえ、やはり分野によって市場の大きさは最初からある程度決まっているのではないかと思う。さらに、分野によって、ビジネスの特徴も変わってくる。

例えば、ある葬儀業者が葬儀アプリを開発することにしよう。そのアプリでは葬儀に関連する煩雑な手続きを楽にできるので、ユーザーにとって大変便利だし、今までなかったクリエティブなサービスとも言えるのだ。とはいえ、利用されるシーンがごく限られているため、ニッチ市場で苦戦することも想像できるのではないだろうか。

まとめ

巨大プラットフォームの「インフラ化」が進んでいる中、スタートアップの生存戦略は、まさに『自分事』として捉えた創りたい未来と『実際の市場規模』との間の絶妙なバランスを取ることだと考えている。

そして、最小限のコストで早めにそのバランス感覚を掴むため、「スモールスタート」やMVPをよく薦められるのだと、今振り返ってふと思った。

#Xデザイン学校2022年ビギナーコース
#02エスノグラフィ


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