「Chromeのシェアが○○%伸びた」って本当? ブラウザシェアの数字をそのまま信じてはいけない理由
こんにちは、Vivaldiブラウザです。
毎月、世界・日本でのブラウザシェアに関するニュース・ブログ記事などが出ますよね!
あれ、実際のシェアと異なる場合があります。どう違うのか、なぜ違うのか、見てみましょう。
<この記事のポイント>
★「Chromeのシェアが○○%伸びた」は、本当とは限らない。
★ ブラウザは好きな名前(ユーザーエージェント)を名乗ってサイトにアクセスして良い。
★ マイナーブラウザは本名を名乗るとユーザーの不利益になることがある。
「ユーザーエージェント」とは
世の中にはいくつものブラウザがありますね。ウェブサイト側も、どのブラウザからアクセスされたか、概ね把握できるようになっています。
「どのブラウザからのアクセスか」の手っ取り早い情報源になるのが、「ユーザーエージェント」と呼ばれる、ブラウザが「自称」する自分の名前です。
例えば、masOS 10.15.6上の、(2020年8月12日現在)最新版のChromeであれば、ユーザーエージェントは次のようになっています。
Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_6) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/84.0.4147.125 Safari/537.36
ざっくり言うと、これは「私はね、macOS 10.15.6使っててね、Chromeのバージョン84からアクセスしてるよ」ということをウェブサイトに示しています。ウェブサイトからすれば、「あ、MacのChromeユーザーからアクセスが来た」となるわけです。
同じMacデバイスで、VivaldiブラウザやBraveブラウザのユーザーエージェントも見てみましょう。(確認方法は複数ありますが、例えばこちらのサイトにて:What's my user agent?)
Vivaldi
Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_6) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/84.0.4147.108 Safari/537.36
Brave
Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_6) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/84.0.4147.105 Safari/537.36
はい、どちらもChromeと同じですね(細かいChromeバージョンの違いはありますが、それ以外は同じです)。
このことから、ユーザーエージェントに基いてブラウザの市場シェアを見ようとすると、例えばVivaldiやBraveがシェアを伸ばしても、名義上Chromeのシェアに吸収されます。
では、Chrome以外を名乗っているブラウザは?あります。たとえば、以下の4つは、自分だと分かるようにしています。
Safari
Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_6) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/13.1.2 Safari/605.1.15
Firefox
Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10.15; rv:79.0) Gecko/20100101 Firefox/79.0
Opera
Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_6) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/84.0.4147.105 Safari/537.36 OPR/70.0.3728.106
Edge
Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_6) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/84.0.4147.125 Safari/537.36 Edg/84.0.522.59
Vivaldiもバージョン2.9まで「Vivaldi」と名乗っていたので、Vivaldiを2.10以降にアップデートする人が増えるにつれ、Vivaldiのシェアは減少しているように見えます。
「ほなちゃんと本名言うたらええがな!」と思われる方もおられるでしょう。マイナーブラウザあるあるを次にご紹介します。
「ご利用の環境では、映像を快適にご視聴できない可能性があります」と言われる等
ウェブアプリを使う際、シェアや知名度が高いブラウザは、通常サポートブラウザや推奨ブラウザに入っています。
ユーザーエージェントを元に、非推奨ブラウザであることが分かると、たとえサイトの使用に問題がなくても、サービスが利用できなかったり、推奨ブラウザのダウンロードを勧められることがあります。
さらに、インターネットの世界には、cookieを用いずに個々の人物・デバイスを特定・追跡する「フィンガープリンティング」という仕組みがあるのですが、そのフィンガープリンティングでもユーザーエージェントの情報が使用されることもあるのです。
ブラウザの使用人数が少なければ少ないほど、ユーザーエージェントの情報だけでも個人の特定は容易になりますね。逆に、多くの人が使うブラウザであれば、少なくともユーザーエージェントの情報だけでは個人の特定が難しくなります。
VivaldiがChromeを名乗るようになったのも、これらの問題を回避するためです。木は森の中。隠れ身の術。(VivaldiとChromeは同じベースを使用するブラウザなので、ウェブサイトからはChrome用の反応をしてもらうのが一番スムーズですね)
それ以前は、VivaldiでGoogle検索すると文字が検索ボックスの上に表示される、Yahoo!ニュース動画がVivaldiで見られないといった、ユーザーからすると不便で、Vivaldiの不具合に見える問題があったのです。
技術的には閲覧可能です。快適にご視聴いただけます。まさにユーザーエージェントでVivaldiを名乗ることが、このエラーやGoogle検索ワードが変に表示される理由でした。
サイト側としては、数多くあるブラウザを全てテストできないので、公式サポートを表明するのはメジャーなものに絞ろう、というスタンスなのでしょうね。
先ほど列挙した各ブラウザのユーザーエージェント内にも、「Mozilla」、「AppleWebKit」、「Safari」といった、複数のブラウザやレンダリングエンジンの名前が含まれていましたよね。各社、互換性対応に苦心した結果こうなっているのです。
ユーザーエージェントにどんな文字列を記載するかはブラウザ側の自由かつユーザー側でも調整可能なので、サイト側がブラウザを100%正確に判別してブロックすることはできません。それでも、ブラウザを判定するために、ユーザーエージェントは多用されてきたのです。
Vivaldiのシェア
Vivaldi開発陣は、Vivaldiブラウザのユーザー数をカウントしています。
ユーザー数のデータを見ると、バージョン2.9の頃よりユーザーは増えています。Android版デビューも果たしましたし😄
2020年8月12日現在、vivaldi.comの信念ページにて、150万人以上のアクティブユーザーがいると公表しています。以前より大きな数値です。
他のブラウザを使用するインターネット人口の増加具合次第では、Vivaldiユーザー数の絶対数増加をもってしてもVivaldiのシェアが落ちたと言える可能性はありますが、そうでない限りは、Vivaldiのシェアは伸びています。
これからChromeのシェア拡大報道を見た時は、「きっとVivaldiやBraveもがんばってるんだな」と呟いていただけると嬉しいです。
もっとも、Googleはユーザーエージェントの内容を凍結し、ブラウザの判別に別の仕組みをもたらそうしているようです。
Webブラウザーの種類やバージョン、プラットフォーム(OS)などを特定するために使われている“ユーザーエージェント(UA)文字列”。Web開発者にとっては馴染み深いものですが、これを使うのはもう時代遅れとなりそうです。「Google Chrome」の開発チームは1月14日、UA文字列を非推奨とし、“凍結”する計画を明らかにしました。
From: ユーザーエージェント(UA)文字列は時代遅れ? ~「Google Chrome」で凍結・非推奨に
ということで、ブラウザのシェアの話は今後も新展開が予想されます!古くて新しい話、それがブラウザシェア。
ではまた!Ha det!