なぜ組織は「密室での決定」を好むのか?~意思決定プロセスの透明性を阻む5つの心理~
はじめに
「決まってから報告された」「いつの間にか方針が変わっていた」「誰がどこで決めたのかわからない」――。
このような経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。今回は、組織がしばしば「ひっそりと」重要な意思決定を行ってしまう背景について、心理的・組織的な視点から考えてみたいと思います。
「密室決定」が生まれる背景
まず、人間には本来、自分に関係する決定に参加したいという基本的な欲求があります。にもかかわらず、組織ではなぜ「密室での決定」が繰り返されるのでしょうか。
その主な理由は、決定者側の心理にあります。重要な意思決定を少人数で進めたがる背景には、まず「効率性」への過度な期待があります。多くの人を巻き込むと時間がかかり、議論が複雑化する。だから、少人数で素早く決めてしまおう――というわけです。
しかし、この「効率性」は往々にして幻想に終わります。なぜなら、決定後に関係者から反発や疑問が噴出し、かえって多くの時間と労力を要することになるからです。
決定者の隠れた不安
実は、密室決定の背景には決定者自身の不安も潜んでいます。「自分の判断が否定されるのではないか」「反対意見にうまく対応できないかもしれない」という恐れです。これは特に、経験の浅い管理職や、組織内での立場が不安定な人々に多く見られます。
また、組織の文化も大きな影響を与えています。「物事は上から下へ」「決定は静かに行うべき」という伝統的な組織文化が、オープンな議論を妨げているケースも少なくありません。
「密室決定」がもたらす弊害
このような意思決定プロセスは、組織に深刻な影響を及ぼします。まず、当事者意識の低下を招きます。自分たちの意見が聞かれないと感じる従業員は、次第にモチベーションを失っていきます。
さらに、決定の質自体も低下しがちです。多様な視点からの検討が行われないため、重要な観点が見落とされたり、現場の実態に即さない決定が行われたりすることがあります。
最も深刻なのは、組織への信頼感の低下です。「なぜあの時、私たちの意見を聞かなかったのか」という不信感は、長期にわたって組織の雰囲気を暗くしてしまいます。
より良い意思決定のために
では、どうすれば良いのでしょうか。重要なのは、意思決定プロセスの「透明性」と「参加性」を高めることです。
全員の意見を聞くことは、確かに時間がかかります。しかし、それは無駄な時間ではありません。むしろ、実行段階でのスムーズな協力を得るための「投資」だと考えるべきでしょう。
また、決定に至るプロセスを明確にし、可能な限り公開することも重要です。「なぜその決定に至ったのか」という説明責任を果たすことで、たとえ結果に不満を持つ人がいても、一定の理解は得られるはずです。
まとめ:変化への一歩
組織の意思決定プロセスを変えることは、簡単ではありません。しかし、「なぜひっそりと決めたがるのか」という問いに向き合うことは、組織の健全性を高めるための重要な第一歩となります。
まずは小さな決定から、より開かれたプロセスを試してみてはいかがでしょうか。それは必ず、組織全体の成長につながるはずです。
重要なのは、効率性と透明性のバランスを取ることです。すべての決定に全員を巻き込む必要はありません。しかし、重要な決定ほど、より多くの知恵と視点を集めることが、結果として組織の力となるのです。
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