お盆に「仮面浪人がしたい」と言い出した息子との一年~希望を叶えた親子の記録~
プロローグ:
本記事は、実際のカウンセリングケースをもとに執筆していますが、個人情報保護の観点から詳細を一部変更して再構成しております。一つひとつの事例は固有の背景や状況を持っていますので、ここでご紹介する内容はあくまでも参考情報としてお受け取りください。今後も、プライバシーに十分配慮しながら脚色を加えた形で、同様の状況に直面されている方々の参考となるようなケーススタディを、シリーズとしてお届けしていく予定です。
夏の告白
蝉の声が響く8月半ば、お盆休みで帰省した息子が、夕涼みの縁側で切り出しました。「仮面浪人がしたい」と。
大学に入学して4ヶ月。やっと新しい環境に慣れ始め、サークルにも入り、友人関係も築き始めた矢先でした。最初の定期試験も何とか乗り越え、これから本格的な大学生活が始まろうというタイミング。その言葉に、私たち親は戸惑いを隠せませんでした。
心の内
息子の話を聞くと、入学当初から違和感を抱えていたようです。春学期の授業を受けるなかで、「自分が本当に学びたいことはこれではない」という思いが日に日に強くなっていったと言います。
新入生歓迎会やサークル活動、新しい友人との交流。表面的には順調に大学生活を送っているように見えましたが、心の中では常に迷いを抱えていました。そして、春学期の授業を通じて、自分が本当に追求したい学問分野が明確になってきたのだと。
夏休みという一区切りの時期に、じっくりと自分と向き合った結果の決断だったようです。
親としての迷い
正直に言えば、最初は戸惑いと不安でいっぱいでした。せっかく合格した大学。既に納入した学費のこと。何より、この先の一年をどう乗り越えていけるのか。様々な心配が頭をよぎりました。
しかし、息子の真剣な眼差しと、春学期の間じっと耐えながら自分と向き合ってきた姿勢に、次第に心が動かされていきました。夏休み期間中、何度も話し合いを重ねるうちに、この決断を支えることが親としての役割ではないかと考えるようになりました。
8月からの挑戦
8月半ばからのスタートは、決して遅くはありませんでした。むしろ、秋学期が始まる前の決断は、計画を立てる上で重要な意味を持ちました。
息子は夏休み中に具体的な学習計画を立て、予備校にも相談に行きました。秋学期の履修計画も、受験勉強と両立できるよう慎重に組み立てました。在学中の単位もしっかり取得しながら、平行して受験勉強を進める。その計画は現実的で、実現可能なものでした。
両立の日々
9月から始まった仮面浪人生活。朝は大学の授業、午後は図書館で自習、夜は予備校という生活が始まりました。平日は深夜まで勉強し、休日は朝から晩まで受験勉強に充てる。ハードなスケジュールでしたが、息子は黙々と努力を重ねていきました。
特に大変だったのは定期試験期間です。在学中の単位取得も重要でしたから、試験勉強と受験勉強の両立には相当な体力と精神力が必要でした。しかし、夏の決断が早かったことで、学期始めから計画的に学習を進められたのは大きなアドバンテージとなりました。
家族のサポート
私たち家族にできることは、静かな環境づくりと、日々の生活サポートでした。夜遅くまで勉強する息子のために、栄養バランスの取れた食事を用意し、睡眠時間を確保できるよう家事の音にも気を配りました。
そして何より心がけたのは、息子を信じ、見守る姿勢です。結果を急かしたり、過度な期待を口にしたりすることは避けました。代わりに、日々の努力を認め、体調を気遣うことを大切にしました。
合格への道のり
そして迎えた受験シーズン。息子は見事、志望校に合格を果たしました。発表の日、画面に番号を見つけた時の息子の満面の笑みは、今でも忘れられません。一年間の努力が実を結んだ瞬間でした。
現在、息子は大学2年生として、生き生きと学問に取り組んでいます。自分の選んだ道で、目を輝かせながら学ぶ姿を見ていると、あの夏の決断は確かに正しかったと感じます。
経験からの学び
この経験を通じて、私たち家族は大切なことを学びました。人生の選択に、完璧なタイミングはないということ。大切なのは、自分の心に正直に向き合い、決断する勇気を持つこと。そして、その決断に対して全力で取り組む覚悟を持つことなのだと思います。
8月という時期は、実は仮面浪人を始めるのに決して遅くないタイミングでした。秋学期の準備もできますし、心構えも新たに臨めます。むしろ、春学期の経験があったからこそ、より明確な目標と計画を立てることができたのかもしれません。
同じ選択に直面する方々へ
お盆休みは、多くの学生が自分の進路について深く考える時期かもしれません。もし今、同じような決断を考えている方がいらっしゃるなら、決して一人で抱え込まないでほしいと思います。
ご家族との対話を大切にし、具体的な計画を立て、そして何より、自分の決断を信じることが大切です。8月からのスタートでも、十分に夢は叶えられます。息子の経験がその証明になればと思います。
おわりに
今、大学で生き生きと学ぶ息子の姿を見るたびに思います。人生の選択に、絶対的な正解はないのかもしれません。でも、自分の心に正直に向き合い、決断した道を真摯に歩むことで、必ず道は開かるのだと。
この記事が、同じような状況で悩む学生やご家族の方々の参考になれば幸いです。どんな選択をするにせよ、その一歩を踏み出す勇気が、きっと素晴らしい未来につながることを願っています。
※この記事は、筆者がカウンセラーとしてかかわることになった実際のケースを基に、個人情報保護の観点から一部修正を加えて執筆しています。具体的な状況は個々のケースで異なりますので、あくまでも参考としてお読みいただければ幸いです。今後も、フェイクをまぶしながら、似たような状況におかれた皆様の参考となるようなミニレポートを複数シリーズでお伝えする予定です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?