ビタミンゼミ第20回33,000サイトのデータから導き出したCVR改善の「必勝パターン」|垣内 勇威教授
今回は、株式会社WACULの垣内 勇威 (かきうち ゆうい) さんを教授として迎え、CVR改善の必勝パターンを中心にサイトづくりを幅広く教えていただきました!
「デジタルマーケティングにはやらなくていいことが多すぎる」と語る垣内教授。30,000サイトの分析データから導き出された、デジタルマーケティングの定石とは…
ビタミンゼミってなに?
ビタミンゼミについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
株式会社WACUL 取締役CIO 垣内 勇威教授
東京大学卒後、株式会社ビービットから、2013年に株式会社WACULに入社。Google Analyticsから自動でデータを取得し、人工知能が勝手に分析してくれるお手軽さだけでなく、現状評価から課題まで報告してくれるマーケティングのPDCAをサポートしてくれる「AIアナリスト」を立ち上げ。現在、33,000サイト以上に導入いただいているようです。さらに、「AIアナリスト」の分析結果をもとにした施策の成功率は73%を超え、そのうち65%以上が1.5倍以上のCVR改善が見られるようです。
2019年に産学連携型の研究所「WACULテクノロジー&マーケティングラボ」を設立し、所長に就任。
現在、 研究所所長および取締役CIO(Cheif Incubation Officer)として、新規事業や新機能の企画・開発およびDXコンサルティング、大企業とのPoCなど、社内外問わず長期目線での事業開発の責任者を務められています。
デジタルマーケティング業界の悪しき慣習
Q.どちらの「人材紹介」サイトがCVRが高いでしょうか。
①会員登録型
✔リンクは「会員登録」のみ
✔ほかページへのリンクは一切削除する
②求人検索型
✔「求人検索」導線が中心
✔職種、勤務地、キーワードなどで選べる
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正解は、①会員登録型です。
垣内さんがコンサルティングをはじめた15年前から変わらず会員登録型のほうが高いようで、その理由として上げているのが「自力で希望する求人を見つける難しさ」です。
求人を検索するコストも高いですし、転職を考えている人がどんなメンタル状況であったとしても会員登録型であれば、迷うことがないのでCVRは会員登録型のほうが高くなる傾向があります。
ただ、人材紹介業界としてみなさん営業力も強く求人をどんどん露出させていきたいという求人検索型のニーズも高いため、結果的にCVRの高い会員登録型ではなく求人検索型のサイトのほうがサイト数としては多くなっています。
CVRという観点で言えば、会員登録型が望ましいのに業界としては求人検索型が多くなってしまっている矛盾を垣内さんは指摘します。
デジタルマーケティング業界では「車輪の再発明」がいつまでも続いている
「車輪の再発明」とは、広く受け入れられ確立されている技術や解決方法を知らずに、同様のものを再び1から作ることを意味しており、それがデジタルマーケティング業界でいつまでも続いているということです。
「車輪の再発明」が起こってしまう要因として、大きく2つの要因があるとおっしゃいます。
「永遠の初心者」と「バズワードの横行」が、車輪の再発明を助長していると思います。
大企業であれば、異動のたびに知見がゼロクリアされ、何も知らないWeb初心者が生まれます。デジタルマーケティングの領域では、なにか夢のようなことができそうな「バズワード」が度々流行します。
初心者ほど、この流行に飛びついてしまいます。そして、その流行ツールはだいたい、使いこなせず大失敗します。結果的に地道なPDCAを回し、もとの数値に戻ってきたと思えば、また異動のタイミングになり再び初心者が生まれるという繰り返しが発生します。
WACULが目指すのは誰でも80点が取れる世界
株式会社WACULでは、今まで大量のWebサービスをコンサルティングしてきた実績から80点までであれば正解をわかっているとおっしゃいます。そのレールに沿ってまずは80点のクオリティを最短で出すことを目指したほうが良いですよね。
デジタルマーケティングの「勝ちパターンは」18種類に絞られます。大きく2つに分けて、「Web完結型」なのか「Web to 営業担当型」によって別れます。普段やっている手法は、「ベンチマーク」と呼ばれる手法で今までコンサルティングしてきたデータをもとに同サイトタイプで最も成績の良いサイトの主要KPIを比較し、伸びしろを測ります。そこから、最も成績の良いサイトのベストプラクティスを抽出し、80点を目指していこうという提案です。
今回は、18種類ある勝ちパターンの中から多くの方が取り扱っている法人向けソリューションについて詳しく教えていただきました。
法人向けソリューションで、最も大事なことはCV設計
ここでクイズです。
Q.営業担当に渡す前に、Web上でしっかりサービスを理解させるべきでしょうか?
①サービス理解よりも、CV数を優先
✔Web上でサービスを理解させられなくても、少しでも興味を持ったユーザをCVさせる。
✔理解が足りない部分は営業担当が口頭で補う
②CV数よりも、サービス理解を優先
✔Web上でしっかりサービスを理解させてから、本当に興味のあるユーザだけCVしてもらう
✔リードの質が高まり、営業担当の工数減に貢献する
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正解は、①サービス理解よりも、CV数優先型です。
マーケターからすると①が優先で、営業担当からすれば②が優先されることが多く、社内でもよく揉めるテーマ。実際、営業が強いことが多いですが、正解は①になります。
では、なぜ質の低いリードだったとしても数を重視してCVさせたほうが良いのでしょうか。
はっきり言って、Web上で複雑なBtoB商品を理解してもらうことは難しいです。Web上でユーザーに対してなにか強制力を持ったコミュニケーションを取ることは難しいからです。
Webだと1秒で興味がない情報があれば、すぐに離脱してしまいます。ユーザは興味あるものしか見ないという観点で考えると、説得して理解してもらうことを優先して本当に欲しかった人が離脱してしまうなんてことを避けるために、まずはCV数を取ることをおすすめします。
そのうえで、質を確かめたいのなら「5分の営業を事前に挟む」「フォームで確度を確認できるような情報を取得する」などの方法が存在します。
では、実際にCV数が取れるようなサイトとはどんなサイトなのでしょうか。CV数が取れるサイトの特徴を教えていただきました。
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全てのページ、全てのエリアからフォーム直行を狙うべき
✔入口ページでは一番目立つメインビジュアル下にCVボタンを設置
✔コンテンツ別に文脈を揃えてフォーム誘導
例えば…
料金:料金表ダウンロード / 見積もり
機能:3分で機能がわかる資料ダウンロード
事例:事例集ダウンロード
✔「もっと見たい」「楽しみたい」「あとで見たい」などのニーズを喚起してCVに誘導する
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上記を踏まえるとLP設計も簡単になります。縦長の説明がたくさん詰まったLPを作っても読まれないので必要なのは、ファーストビューのみのLPで十分です。
ファーストビューにフォームもしくはCVボタンを設置し、流入別のCVポイントの障壁を調整します。
例えば、氏名検索であれば「資料請求」や「無料トライアル」など。リターゲティングなら「期間限定キャンペーン」など。薄い広告なら「ノウハウ冊子ダウンロード」などになります。
それぞれで、CV設計することが"最大数を取る"ために必要なことです。
結果的に、薄いリードをたくさんとってくると、失注率が高まったり営業できていないリストのようなものが増えてきます。
その場合、多くの方が用いるのがメールという手法です。
ここでクイズです。
Q.ユーザ別のメール(毎月)と、全員に同じメール(毎週)のどちらがCVするでしょうか?
①ユーザ別のメール(毎月)
✔ユーザセグメント別に、訴求内容やデザインを変更したメールを配信する
✔工数がかかるため、配信頻度は毎月程度とする
②全員に同じメール(毎週)
✔全員に同じメールを配信する。訴求内容はこらず、他メディアで露出した情報の寄せ集め程度とする
✔工数がかからないため、配信頻度は毎週とする
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正解は②全員に同じメールで頻度重視型です。
はっきり言って、リスト数がよほど多い場合ではない限り、ユーザ別に送っても工数に見合いません。
メールはそもそも読まれません。2秒しか読まれないのに、ナーチャリングをするなんてもってのほか。メールを通じてできることは大きく分けて2つで、「リマインド」と「架電のシグナル」です。
「リマインド」とは、外部要因によってその商品が必要になったときの思い出すきっかけです。
「架電のシグナル」とは、例えば毎週送っているメールを毎回開いてくれているユーザは相当なファンなので、架電対象と捉えることができます。
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工数をかけずに毎週メールを来る。タイトルに製品名を入れる。
✔工数をできる限りかけず、毎週メールを送り続ける
✔見た目はテキストメールで良い(計測のためHTMLで送る)
✔中身はブログやニュースなど社内コンテンツの使いまわしで良い
✔リマインド効果を狙い、タイトルに製品名等を入れる
✔架電シグナルとなるように、リンク文言を工夫する(インサイドセールスの優先度付に用いる)
※ファンの多いBtoCサイトでは、内容も重要なため注意。ECなら新着商品を贈り続けるだけでも良い。
理性型ECで大事なことは「論理的」に選べる導線づくり
Web完結のECサイトでも、服など感性的に選ぶサイトと、本やPCなどを取り扱っている理性的なサイトの2つがあります。今回はその中でも、理性的なサイトで重要なポイントを教えていただきました。
ECの中でも、本やPCなど性能の差から理性的に選ばれる商品を扱っているECサイトにおいて売るために重要なことは4つあります。
✔他社による評価(ランキング、口コミ評価)
✔感覚的に選べる絞り込み(デモグラ検索、診断)
✔表示する商品点数をそもそも減らす
✔選び方の解説記事(どのスペックを見ればよいか理解させる)
商品の選択導線上において、商品点数をなるべく減らして感覚的に選べるようにすることで初心者からのCVRが高まるようになります。
垣内教授によるライブクリニック
ライブクリニックは、ビタミンゼミの特徴。講義中に自社の課題と改善点をマーケティングの教授が教えてくれます。
企業①個人にあった食品を販売してくれるサブスクリプション型ECサイト
個人の趣味趣向にあった食品を紹介してくれるECサイトの課題に、垣内教授がアドバイスをしてくれました。サイトのトップには診断ボタンがあり、簡単に診断にいけるようになっています。
Q1. ブランドサイトとLPは分けたほうが良いでしょうか。
ブランドサイトとLPは分けなくていいです。特に、ドメインを分けるとSEOが弱くなるので避けたほうが良いです。基本的にはサービスサイトに寄せて作成し、コーポレート機能としてのリンクを設置すれば十分だと思います。今後、上場を目指すタイミングでコーポレートメッセージを変えたいとなった場合は、ブランドサイトとLPを分けるのも良いでしょう。
また、ブランドサイトと分けるのではなく、LPを複数作るという意味なら、期待値調整する受け皿としてやっておいたほうが良い場合もあります。例えば指名検索で流入したユーザーが申し込み意欲が高い人が多いであれば、申し込み動線を設定したほうが良いです。逆に、「まずは試してみたい」みたいな潜在層の場合であれば公式サイトで見せていないようなコンバージョンポイントの障壁がより低いお試し用のLPを用意するなどといったイメージになります。
Q2.会員登録までの流れを「診断→診断結果表示→会員登録」としていますが、コンバージョン率をより向上させる改善ポイントはあるでしょうか。
例えば、「診断する」をクリックしてから診断を開始するのではなく、最初の質問と選択肢をLPの冒頭に載せてみるのはどうでしょう。「診断する」ボタンを押してから診断がはじまるのは少しハードルが高いからです。
また、「診断結果→会員登録」の動線では診断結果がわかった段階で、離脱する可能性が高いので、診断結果は表示せずにメールでお送りするようにして、名前やメールアドレス、住所などの情報を取得するようにすると良いのではないでしょうか。
Q.コンバージョン率は何%くらいを目指せば良いでしょうか。
サブスクリプションの場合はコンバージョン率より、サービスをどれだけ続けてくれたのかというLTVのほうが重要だと思います。無料でお試しできるならコンバージョン率は5%くらいまでいくでしょうし、有料の定期便なら1%を切ると思います。コンバージョン率にはこだわらず、目的から逆算して適切な数値を判断するのが良いでしょう。
とはいえ、LTVのみを追うのは長期で図らないと見えないし大変なので、LTVに関連する会員登録などの導線上のKPIもしっかり確認しつつ2段階の粒度で分析するのが良いでしょう。
企業②toB向けオンライン専門サービス
企業なら一度は困ったことがある大変な作業を、オンラインから簡単に依頼できるサービスです。トップページには検索窓があり、ワードを入れると検索結果がすべて表示されるようになっています。
Q1.LPの改善ポイントを教えて下さい。
検索後、検索結果がすべて表示されていますが、一部だけ表示したりモザイクをかけたりして、「もっと見る(会員登録無料)」というCTAを設置すると会員登録のコンバージョン率はあがると思います。
また、『お申込みは「アカウント登録」』ボタンを『お申込みは「アカウント登録(無料)」』と「(無料)」を付けるだけで、クリック率が変わるはずです。
Q2.記事ページからのアカウント登録のコンバージョン率はまずまず良い状態ですが、さらに向上させるにホワイトペーパーなどの施策は実施すべきでしょうか。
記事の目的に合わせて、コンバージョンポイントを調整することが大切です。ユーザーが検索したキーワードに沿った内容のホワイトペーパーをダウンロードできるようにすれば、コンバージョン率も上がるでしょう。
今すぐ登録してもらえそうなユーザーは、会員登録の直コンバージョンを優先したほうが良いです。また、ニーズの低いユーザーしか獲得できない記事の場合は、コンバージョン障壁を下げて薄いリードの数を稼げるようにしていくのが良いでしょう。
流入してくるユーザーの期待値に合わせて、コンバージョンの仕方を調整することで獲得できるリードを最大化することができます。
最後に
ライブクリニックではメンバー内から垣内教授のアドバイスが欲しい企業が講義中に、アドバイスをもらうことができます。ビタミンゼミならではのクリニックなのでぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
今回の講義では、18種類ある「勝ちパターン」の中から一部をご紹介いただきましたがより詳しい方はぜひ垣内教授へご相談ください。
また、今回の講義内容に関してより詳しく知りたい方は9月10日発売予定の垣内教授の本 "デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?"をご覧ください!
・マーケティングDXのプラットフォームを提供 株式会社WACUL
・アクセス解析データなどから自動で改善ポイントの指摘や改善幅の予測、改善施策の成果測定までワンストップで行うデジタルマーケティングのPDCA高速化ツール AIアナリスト
・垣内勇威|AIアナリスト(@yuikakiuchi)
▼垣内教授のTwitter
https://twitter.com/yuikakiuchi
■ライター まっちゃ(@kuppaoishii)