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防腐剤への考察

 防腐剤(殺菌剤)は医薬品、医薬部外品、化粧品、食品及びあらゆる生産物を菌(微生物)やカビかの影響から守り、その汚染された製品を使用することによって生じる害から消費者を守る目的で使用します。
 殺菌は菌を死滅させ、防腐は菌の増殖を防ぎます。その目的のために使用する製剤は同じ物質であり、濃度の高いものを殺菌剤、低いものを防腐剤として使用します。

●防腐剤の役割

 単純に考えれば菌(微生物)を殺す殺菌剤を選択し、製品に添加するだけのことですが、人体に対し使用する製品における防腐剤の選択ということになれば、やや複雑な考えが必要になってきます。というのも、菌(微生物)に対し高い殺菌能力を示す化学物質は、生体の細胞に対しても同様な効果を示すことから、菌(微生物)は不活性化、または殺菌するが皮膚のような生体細胞は侵さない。
 こういう相反する事象をクリアするため、立体的な微妙なバランスを考慮する必要があるからです。

●防腐剤無添加

 ならば、防腐剤を使わなければ良いと考えられますが、生活下の大気中には通常一立方メートルに数千から数万個というカビの胞子や細菌が浮遊している現実から、流通過程や消費者個々の様々な使用状況下では、防腐剤を添加しない化粧品を使用することにより後述するような恐ろしい結果を引き起こすことになりかねません。
 市場では「防腐剤フリー」「無添加」と表示された製品が見受けられますが、これらは法律上表示義務のある防腐剤や添加物を配合していないだけであり、何らかの防腐効果のある化学物資を添加しています。

●防腐剤が配合されなかったら

 一切防腐剤を添加していない化粧品も一定の条件下では可能ですが、それが果たして消費者に大して有益であるかというと疑問符が付くのではないでしょうか。
 まず一回ずつの使用量を完全な無菌状態で個包装を行い、かつ保存性が悪いため低温、遮光保管が必要になってきます。また内容物を加熱減菌、不活性化ガスの噴入、紫外線等光線の照射、ろ過などを行って減菌しますが、どの方法であっても、うるおい成分として通常は数種類から数十種類配合する原料の大半がその機能を失い、お肌に対し無意味な限られた原料の選択しか出来ないことになります。
 これだけの工程を踏まえて製造された製品であっても完全に菌がゼロであるとは断言できず、万一何らかの微生物に汚染されたとすれば、栄養源豊富な化粧品はたちまち皮膚障害を引き起こす毒物となる可能性があります。
 商品の腐敗や劣化は、微生物(細菌、カビ、酵母)の代謝活性により引き起こされ、防腐剤が添加されていないために微生物増殖をコントロールできず、異臭、変色、分離、変性の原因となります。恐ろしいことに一定の条件が揃うと毒素や薬理活性をもったへ変異物質を代謝精製し、お肌やバリア機能されには生命体に対しても危険な状態をつくりだします。
 このように、個包装による無駄なコストや資源の浪費、お肌に対し無意味な、逆に有害な可能性のある商品を防腐剤を使用していないというだけで使わされることになるのではないでしょうか。

●天然物は安全ではない

 話を防腐剤に戻しますが、一般的に天然の物質は無毒性または低毒性であると考えられがちですが、天然物が本質的に安全であるとは限りません。極端な例ですが、フグ、ハブ、トリカブトなどは天然物ですが猛毒ですし、ワサビやトウガラシも抗菌力は強いが皮膚刺激も高く、レモン油、テレピン油、ユーカリ油、ベルガモット油など天然精油は抗菌力とともに発がん性についても報告されています。したがって天然物であっても何らかの作用があると考えなければなりません。
 これらの天然物の抗菌、殺菌力のある物質の組成を調べると複雑な構造をしていますが、おおむねアルコール類、フェノール類、エステル、酸、アルデヒド、ケトン、オキサイド、アミンなどが検出されます。本来、自然界で生産される抗菌物質は固体の自己防衛としてつくられたものであり、生命維持のため必要不可欠な物質で有益なものが大半です。それらの科学的に安定させて製造したものが現在の化粧品などに使われている防腐剤というわけです。
 また保湿剤として素晴らしい性能をもった原料が、数種類の組み合わせにより菌(微生物)を不活性化するというものもあります。防腐剤のみならず、このような保湿剤や有効成分などを使用するに当たり重要なことは、バランスであり、過分に使用すれば刺激になり、ある処方上はその効力を喪失することもあります。

 化粧品はお肌の健康と美しさのため、生きる喜びを得るためのエッセンスとして素晴らしいものであり、必要なアイテムです。
 ゆえに、皮膚の生理、原料の物性、性質、安全性、科学的実証、自然界の摂理等々、すべてを考慮し、最適の使用量で最大の効果を発揮できるよう製品に配合し、ユーザーに正確な情報や説明とともに供給することが大切だと考えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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