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雪じゃないもの(ナンセンス小説 2023/12/18)

目の前はずっと雪
歩いても歩いても雪
もう何時間さまよっているのだろうか
視界は全て雪
振り返っても雪
そろそろ、雪以外のものを目にしたい
歩けなくなる前に……

ん?今向こうに光るものが見えたぞ
雪じゃないかもしれない
あの辺りを目指すんだ
最後の力を振り絞って……

……

この辺りだろうか
光るものはどこだ?
確かそんなに大きくはなかった
形はどんなだったろうか
まさか気のせいじゃないよな……

……

あ、これだ!光ってるぞ!
調味料の容器に光り輝く粉末が入っている!
なんだこれは?
怪しい……危ないクスリじゃないよな……?
容器のラベルに何か書いてあるかな
ええと……

「この光る雪を容器ごと地面に埋めることで、宇宙パワーが地面を伝わってレスキューだるまに伝わります」

なんだこれは?中身は雪?宇宙パワー?レスキューだるま?
なにもかもが胡散臭い
しかし、もう歩く気力もない
藁にもすがる思いとはこのことだ
この容器を地面に埋めてみよう

……

こんなものだろうか
我ながら、なんて不毛なことしているのだろう
宇宙パワーなんてあるわけが……

(ズドドドドドドドドドド)

うお、なんだこの音は!?
何かが近づいている

(どうも~レスキューだるまで~す)

うわああ、なんだこの大男は!?
なんか脳に直接声が響いているような……

(あなたの脳に直接声を届けてます~宇宙パワーですので~)

話がよく分からない
しかしこれは助かるチャンスでは?
レスキューだるま、私をこの雪しか見えない世界から出してくれ!

(あ~それはすぐには難しいかも……
私にできるのはあなたの安全を確保するとこまでで~す)

んん、どういう意味だ?
安全を確保してくれればそれでいいんだが……

(あなたは自分が雪山で遭難している思っていますよね~
それ~大外れで~す
今のあなたは呪いにかかっているんですよ~
世界のほぼ全てものが雪に見える呪いで~す)

呪い?遭難してない?

(遭難する前の行動思い出して~)

ええと……私は夏季休暇に由比ガ浜のビーチで海水浴をしていたところ、光を99%吸収する体を持つ漆黒のシャークに嚙みつかれ、さらに光を99%反射する体を持つほぼ鏡面クラゲに刺されたんだ……そこからは記憶がない……

(思い出しましたね~
ほぼ鏡面クラゲの呪いなんですよ~
あなたは由比ガ浜のビーチを3時間うろうろしていただけです~
ちなみに、呪いはあと51時間ぐらい経ったら勝手に切れま~す)

おお、そうなのか!
まだ混乱しているが、どうやら助かるらしい?

(じゃ、私はあなたを宇宙パワーの結界の中に連れていきますね~
呪いが切れるまで安静にしててくださ~い)

ん、結界の中?
どんな場所だそれは?

(おおきな球体の中に雪がぎっちぎちに詰まってま~す)

結局雪だらけじゃないか!

(いや~こうしないと~
呪いの後遺症で別の呪いにかかることがあるんで~)

別の呪い……?

(あなたの半径20km範囲が常に熱帯の気候になる呪いで~す)

雪見なくていいじゃないか!


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