「隻眼の紅蓮丸〜りたあんずの章〜」を振り返って①脚本・キャスティング
○脚本について
今回の「りたあんずの章」はタイトルが先に決まっていて、そこから構想を練った感じです。
実は「隻眼の紅蓮丸」のシリーズ二作目は「隻眼の紅蓮丸~乱舞の章~」と言う作品があるんですが、時系列的に「りたあんずの章」は「隻眼の紅蓮丸」直後の話なので、「りたあんずの章」→「乱舞の章」になりますね。
で、今回は『紅蓮丸』の方向音痴を使ってもう一度、と言うか前作でカッコよく旅に出たのに実は旅立っていなかった(戻ってきちゃった)らどうなるかなと思って、これまでシリーズで同じ場所を舞台にしなかったのですが、前作同様の「カナイ村」を舞台に選びました。
これは前作を見て頂いた方には分かりやすいし、親しみやすいと言うメリットがある反面、前作を観てない方は観劇を躊躇ったり、わからない部分が出てきてしまうのではないかと言うデメリットもあったので、そこは意識して執筆しましたね。と、同時に広報活動で前作のあらすじをしっかりと書いたり、動画を無料で観れるようにしたり作品作りだけではない部分でも工夫をしました。
脚本に関しては前作の雰囲気を少しでも思い出してもらったり、触れてもらおうと思い前作ラストシーンから始まると言う手法を使い、アニメなどによくある「前回までのあらすじ」を再現。
そして道に迷い、戻ってきたところから本編が始まる作りにしました。
物語の軸は「シュウのかつての兄貴分」をテーマに考え構成していきました。
昔の兄貴分と新しい兄貴分が揃って喜びや優越感を感じると言うのは僕の人生でも何回も味わったことがあります。そんな誇らしい状況を本作では壊していく、と言うのを目標に書きました。
「隻眼の紅蓮丸」シリーズの主人公でもある『シュウ』に今まで以上に焦点を当てた作品になったと思います。また同時にカナイ村の『ヒヤ』『ロロ』たちとの正式な別れを経験させることで、これまで以上に前向きに旅立つ少年を描けたのかなと。
全体的にシリアスな展開になりそうだったので、クライマックスだろうがなんだろうがコミカルなパートを入れていきました。このバランスの取り方は難しかったかなと思いますが、紅蓮丸ならではの遊び方ができたと思っています。
ちなみに僕は役者に対しての当て書きは滅多にしません。今回も基本的には誰が演じるか意識せずに執筆しています。もちろん影響がゼロではないと思いますが、書くときは基本全部自分もしくは自分が好きなプロの俳優さんが演じる前提で書いているので役者さんは稽古中常にそのレベルの要求を求められることになります。ので、当然上達しやすいですね。
全体的にはなんとかまとめることができた、と言った感じですがもっと悪役を掘り下げて書きたかった面はありますね。またネタバラシのシーンももう少し伏線などを用意したかったなと言うのが反省点ですね。全体的に好きな作品に仕上がったので、再演することもあるでしょうし、その時はさらにパワーアップした作品にしていきたいですね。
○キャスティングについて
キャスティングについては、基本前作のメンバーはそのまま続投していただきました。
その中で『ヒヤ』を「粥川」、『シュウ』を「小塩」に演じてもらうことになりましたね。
ヒヤに関しては、前作で「長谷川」が演じるまでは粥川がヒヤを長年演じてきたので特に問題は感じませんでした。むしろ安心感の方が強かったですね。
逆にシュウに関しては、前作で演じた「藤森」さんが今回スケジュールの都合で26日しか出演できないと言うことで11日のシュウを小塩に任せることにしました。
長年客席でも観てきているし、前作でも共演しているので雰囲気は掴みやすかったのではないかと思いますし、何より本人の意欲は本物なので任せてもいいかなと思いお願いしました。
『バン』に関しては大いに悩みました。今回の軸となる役であり、二面性を持つ人物です。
当初から「大川」さんに挑戦させてみたいとは思っていましたが、何回か読み稽古をしていく中で大分イメージに追いつけないと感じ、一度は別の配役にしようとも思いましたが、どうにも適任が見つからず最後の最後まで悩みましたね。
紅蓮丸シリーズは分かりやすい人物が多いのでそれほど苦労することはないのですが、それでもまだ演劇の経験の浅い役者さんには難しい面もあるのかなと。それでも真摯に役と向き合いなんとか形にしてくれましたね。本番前にだいぶ集中して稽古ができ伸びた感じがありました。
『スティーブ』『ボブ』も比較的すぐに決まりました。ヘンテコな悪役としてコミカルに演じてもらえたと思います。
基本的にキャスティングで芝居の出来が8割決まると思っているので、今回も大いに悩みはしましたが、現状集まったメンバーでベストな布陣を組むことができたとは思っています。