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「聖なる堕天使-GODHELL-」Episde2脚本公開

Episode2 「折れた翼、堕ちる心」

   
   舞台明るくなると、そこはペペの自宅
      ぺぺが立っている
   椅子にゴッドヘルが座っている

ゴッドヘル 
「『折れた翼』、か・・・。」
ペペ    
「あの後、何故かこいつは俺の家についてきた。」
ゴッドヘル 
「『落ちる心』、か・・・。」
ペペ    
「そしてずっと独り言を喋っていた。てか何でタイトル知ってるの?」
ゴッドヘル 
「折れた翼、そう、まさに僕みたいだ。」
ペペ    
「早く帰ってほしい。」
ゴッドヘル 
「僕にはもう帰る所なんて無いんだ。」
ペペ    
「きっと凄い聞いて欲しいんだろう。だからここはあえてスルーだ。」
ゴッドヘル 
「何故かって?僕は居場所を捨ててきたんだから。」
ペペ    
「勝手に喋り出した。ああ、もうめんどくさい。」
ゴッドヘル 
「どうしたんだい、さっきから一人でブツブツと。」
ペペ    
「お前にだけは言われたくない一言だな。なあ、あんたゴッドヘルって言ったっけ。」
ゴッドヘル 
「そう、僕は堕ちた堕天使、ゴッドヘル。」
ペペ    
「うん。堕天使って時点で堕ちてるから、堕ちた堕天使だと、堕堕天使になるから。」
ゴッドヘル 
「僕は堕ちた天使、堕天使ゴッドヘル。」
ペペ    
「その天使ってのは本当なのか?さっきの馬頭と言い、俺には分からないことだらけなんだが。」
ゴッドヘル 
「僕が天使でなければ、何に見えるって言うんだい?」
ペペ    
「変なおじさん。」
ゴッドヘル 
「そうです、私が変なおじさんです。こんな変なおじさんがいるかい?」
ペペ    
「まさかのノリツッコミ。確かに、ただのおじさんは空から降りてこないか。」
ゴッドヘル 
「やっぱり君も僕の事を信じてくれないみたいだね。いいさ、慣れているから。でも、君には特別に見せてあげよう。僕の力を。」
ペペ    
「何をするつもりなんだ?」
ゴッドヘル 
「人あらざる者の力だ。そこのコップを見ていて。」
ペペ    
「コップ?」
ゴッドヘル 
「(コップに向かい手を翳す)ハア~ッ、ハッ!」

   次の瞬間、コップが宙に浮く

ペペ    
「う、浮いた。」

   次の瞬間、コップに水が注がれる

ペペ    
「さらには、水が。馬鹿な、誰が何といおうとも、俺の眼にはコップが宙に浮き、勝手に水が注がれたようにしか見えない。こんなこと、透明人間でもいない限り、出来ないぞ。あんた、まさか、本当に。」

   もちろん、一連の仕事は全て黒子が行う

ゴッドヘル 
「分かったかい?これが演劇の、いや天使の力だ。何度も言っているが、神々が人間に裁きを下すと決めた。僕はそんな神々に反旗を翻し者。あの馬頭は神が地上に使わせた兵士。これからもあんな奴らが現れるだろう。」
ペペ    
「何で、神様はそんなことをするんだ?それに何であんたは俺たちを助けてくれるんだ?」
ゴッドヘル 
「あれは少し前の事さ。と言っても地上と天界では時間の概念が違うから、君たちから見たら数年前かも知れない。僕はその日の用事を終え、天界にある自分の家へと帰った。」

   そこはゴッドヘルの自宅となる
   ゴッドヘル、自宅に舞い降りる

ゴッドヘル 
「シュタッ・・・。ただいま、帰って来たよ。マイホーム。カチャ。ふう、やっぱりここが一番落ち着くね。ここが僕の居場所なんだと感じるよ。
ペペ    
「一人でもこんな感じなんだね。」
ゴッドヘル 
「誰だ?」
ペペ    
「え?何?ビックリした。」
ゴッドヘル 
「僕の聖域に勝手に足を踏み込んでいるのは誰だい?出ておいで。」

   その声に、一人の男が出てくる
   彼もゴッドヘルと同じ天使であり、天使長『ミエール』

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ミエール  
「久しぶりだね。お邪魔しているよ。」
ペペ    
「誰?」
ゴッドヘル 
「ミエール兄様。」
ペペ    
「兄様?」
ミエール  
「我ら天使は、神によって作られた存在だからね、みんな兄弟のような物なのさ。」
ペペ    
「あれ?これ俺に説明してくれてる?」
ゴッドヘル 
「いつこちらへお戻りになられたんですか?」
ミエール  
「ついさきほどさ。君に大事な話があってね。」
ゴッドヘル 
「話?何でしょうか?」
ミエール  
「この度、我ら天界は人類に裁きを下すこととなった。」
ゴッドヘル 
「人類に・・・?何故?」
ミエール  
「それは、分かるだろう?彼らは信仰を無くし、増長した。地上を支配し、他の生命に決定的な打撃を与えている。このままだと、やがて彼らはこの星を食いつくしてしまうだろう。故に我らが神々は決断されたのだ。人類に裁きを下し、今一度神々の威光を知らしめるのだ!」
ゴッドヘル 
「つまり、それは・・・。」
ミエール  
「ああ。まずは先兵として使者を地上に送り込む。人類の力では使者を倒すことはできない。地上は使者によって蹂躙されるだろう。フハハハハ。想像してみるがいい、使者が行う聖なる裁きを。実に愉快じゃないか?人類は知らぬ間に、使者の手によって、醤油とソースを入れ替えられているんだ。」
ペペ    
「しょうもない!」
ミエール  
「それだけではないぞ。ナイフとフォークの位置も変えてやろう。自動販売機のホットとコールドを逆にしてやるのも良いな。」
ゴッドヘル 
「何て、恐ろしい事を・・・。兄様、そんなことをしたら人類は、困ります。」
ペペ    
「うん、困る。困るだけ。」
ミエール  
「極めつけはこれだ!世界中のケチャップをイチゴジャムと入れ替えてやろうじゃないか!ハッハッハッハッ!メリカンやタリアンどもの朽ちていく様が、眼に浮かぶようだ。」
ペペ    
「お兄様は、ケチャップに何か恨みがあるのか?」
ミエール  
「そして、この作戦の全指揮権を君に任せると神々は仰った。」
ゴッドヘル 
「ぼ、僕が・・・?」
ミエール  
「やってくれるね?この大役を。」
ゴッドヘル 
「でも、僕には・・・。」
ミエール  
「分かっているよ。君が人類に対して複雑な想いを抱いている事は。」
ゴッドヘル 
「確かに人類は救いようがない。それは分かっています、でも・・・。」
ミエール  
「思い出すんだ、かつて人類が君に何をしたのか。彼らは君の気持ちを踏みにじった。」
ゴッドヘル 
「僕は、僕は・・・。」

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ミエール  
「あれから君はずっと苦しんできた。でも、もういいじゃないか。どれだけ待っても彼等は変わらなかった。これは君のせいじゃない。それにね、神々のご意向でもあるんだよ。」
ゴッドヘル 
「僕に?」
ミエール  
「ああ。君の為に、と。」
ゴッドヘル 
「神々が、僕の為に・・・分かりました。やります。僕がやります。」
ミエール  
「そう言ってくれると信じていたよ。」
ペペ    
「ん?どういうこと?あんたが裁きを下すことになってるぞ?」
ミエール  
「これで私も肩の荷が下りたよ。神々に良い報告が出来る。そう言えば、家の鍵が開いていたよ。不用心だ。」
ゴッドヘル 
「ここは天界ですよ。盗みを働くものなんていません。」
ミエール  
「それもそうだね。これは一本取られたな。」

   (二人、笑う)

ミエール  
「しかし、待つのも暇だったから、勝手にお茶をいただいたよ。」
ゴッドヘル 
「気が付かず、すいません。」
ミエール  
「いいよ。気にしないでくれ。ああ、それと、冷蔵庫においしそうなプリンが入っていたから、一つ頂いたよ。」
ゴッドヘル 
「プ・・・リ・・・ン?」
ミエール  
「実においしいプリンだったよ。どこで手に入れたんだい?よければ私にも教えてくれるかな。」
ゴッドヘル 
「あのプリンを食べたのですか?」
ミエール  
「ああ、それが?」
ゴッドヘル 
「あの、プリンは・・・あのプリンは・・・今日の楽しみに取っておいた。僕の大切なプリンだったのに。兄様は、その僕の楽しみを踏みにじった。」
ミエール  
「おいおい、プリンくらいでそんなに。」
ゴッドヘル 
「プリンくらい?兄様にとってはただのプリンかも知れないけど。僕にとっては・・・プリンなんです。」
ペペ    
「結局プリン。」
ミエール  
「分かったよ、じゃあプリンは今度、代わりを買ってきてあげるよ。それでいいだろう?」
ゴッドヘル 
「兄様は何も分かっていない。」
ペペ    
「え?」
ゴッドヘル 
「僕にとってあの子の代わりなんていないんです。」
ペペ    
「たくさんあるよ、スーパーに。」
ミエール  
「まさか、君がそこまで、プリンの事を想っていたなんてね。とんだ計算違いだったようだね。」
ゴッドヘル 
「ミエール兄様!いや、天使長ミエール!僕はあなたを許さない。」
ミエール  
「ほう、許さなければどうすると言うのだね?」
ゴッドヘル 
「あなたが人類に罰を下すと言うのなら、僕はあなたに罰を下す。他人のプリンを勝手に食べた罪を償うと良い。」
ペペ    
「それほどたいした罪じゃないぞ。」
ミエール  
「残念だよ、実に残念だ。せっかく君には名誉ある大役を任せようとしたのに。」
ゴッドヘル 
「嘘つきの言葉には耳を貸さない。」
ミエール  
「嘘つき?」
ゴッドヘル 
「嘘つきは泥棒の始まりだ。つまり泥棒であるあなたは嘘つきだ。僕は騙されないぞ。あなたは嘘を付いている。」
ペペ    
「そうかな?」
ミエール  
「ならば仕方ない。私の命に背くと言うのならば、残念だがその命、ここで刈り取る事になる。謝るのなら今の内だよ。」
ペペ    
「いや、プリン食ったのあんただよね?」
ミエール  
「ならば抗ってみるがいい。この天使族最強の私の力に。」
ゴッドヘル 
「僕は負けられない。プリンの為にも、必ずあなたを倒してみせる。」
ミエール  
「見せてやろう。圧倒的な力の差と言うものを!」

   二人、向き合う
   緊張感
   次の瞬間ゴッドヘルが膝をつく

ゴッドヘル 
「ぐわっ!」
ペペ    
「ん?」
ゴッドヘル 
「み・・・見えなかった。何をされたのか、全く見えなかった・・・。これが天使長の力。」
ペペ    
「え?今何かされたの?お兄様、何も動いてなかったぞ。」
ゴッドヘル 
「ここまで力の差があるのか・・・勝てない・・・今のままじゃ勝てない。」
ミエール  
「フフフフフ。分かったかな?これが私と君の決して埋まらない力の差だ。そして君の名誉の為に教えておこう。」
ゴッドヘル 
「な、何を?」
ミエール  
「今、私は何もしていないよ。」
ペペ    
「えー!どういうこと?え?お兄様何もしてないのに、お前、勝手に一人でグワってやってたの?」
ゴッドヘル 
「ば、馬鹿な。」
ペペ    
「馬鹿はお前。」
ゴッドヘル 
「そうか、この痛み・・・これは筋肉痛だ。昨日久しぶりにフットサルやったから。勝てる、それなら勝てる。」
ミエール  
「残念だが、何も変わらないよ。何故なら。(指を差しながら、変な効果音を口で出す「シュバ」とか「ズバッ」とか)」
ゴッドヘル 
「(何かを喰らっている様子で、変な声を出しながら痛がる)」
ペペ    
「何これ?気持ち悪い。」
ミエール  
「どうしたどうした。私を倒すんじゃなかったのかい?」
ゴッドヘル 
「このままじゃ、勝てない・・・。どうしたら・・・。僕はこんなところで死ぬのか・・・。ごめんよ、約束守れそうにない。プリン。」
ミエール  
「せめてもの情けだ。愛するプリンの元に送ってやろう。」

   ミエールがゴッドヘルに止めを刺そうとする
   しかしその時、ミエールの動きが止まる

ミエール  
「何だ、これは・・・。」
ペペ    
「え?」
ミエール  
「馬鹿な、何故このような時に・・・。」
ペペ    
「どうした?何か様子がおかしいぞ?」
ゴッドヘル 
「ま、まさか・・・。」
ミエール  
「痛い・・・腹が、とてつもなく痛い。もしや、先ほどのプリンか?」
ゴッドヘル 
「そんな、食べられたはずの君が僕の為に・・・?」
ペペ    
「(プリンを持って)「『プルプルプル、プルプルプル』」
ゴッドヘル 
「ああ、プリン!」

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ペペ    
「『僕にできるのはあいつの動きを止める事だけプリ。だから、後は君があいつを倒すプリ。』」
ゴッドヘル 
「でも、僕にはもう。
ペペ    
「『出来るプリ。君は誰よりも優しい心の持ち主プリ。その優しさを武器にして戦うプリ』」
ゴッドヘル 
「優しさを、武器に?」
ペペ    
「『君と出会えてよかったプリ。いつまでも僕を冷蔵庫に置いてくれたプリ。こんなに誰かに優しくされたのは初めてだったから、嬉しかったプリ。あり  が・・・とう。』」
ゴッドヘル 
「プリーン!」
ミエール  
「く、こんなにも苦しむことになるとは。早く薬を飲まないと。薬を持っていないかい?」
ゴッドヘル 
「薬ならあります。」
ミエール  
「ならそれを譲ってくれるかい?譲ってくれたら、今回の件も不問にしてあげてもいい。」
ゴッドヘル 
「こんな言葉を知っていますか。バカにつける薬は無い、と。」
ミエール  
「何だ、と?」
ゴッドヘル 
「プリンが僕に教えてくれた。力の使い方を。怒りだけではなく、優しさを力に変えろと。怒りと優しさを融合させた僕だけの力。喰らうがいい、天使長ミエール。天界の奇跡『バファリーン』!!!」

   派手な演出
   悲鳴を上げ、倒れるミエール

ミエール  
「それは、頭痛薬だ・・・。」
ゴッドヘル 
「ミエール兄様。さようなら。――こうして僕は天界を離れ、地上に降りてきた。そして天界の野望を阻止してみせる。もうあんな想いは誰にもさせないと強く心に刻んだんだ。」

Episode2 「折れた翼、堕ちる心」 END

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ペペ    「え?これで終わり?」

   暗転
   音楽

ぺぺ   
「神々との確執によって地上に降りてきたゴッドヘル。今だ、奴の目的も、神々の本当の目的も謎に包まれたまま。しかし神々はそんな俺の不安をよそに、地上に使者を送りこんでくる。そんな時、俺たちの前に一人の女が現れた。次回『邪悪な笑顔』。」


Episode2いかがだったでしょうか?
個人的にはミエールとのやりとりはかなり好きですね
馬鹿馬鹿しくて、これは本当に声に出して味わってほしいですね、面白さを

明日はEpisode3を公開予定です
お楽しみに

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