失うことと、失うことでしか手に入れることのできないもの。 - サウンド・オブ・メタル
驚くことに、聴覚を失うということを体験することができる映画だ。ダリウス・マーダー監督/共同脚本。
日常の外から聞こえる音と聴覚を失った主人公の聞こえる音が繰り返しカットされることで、聴覚を失うことが恐ろしいほどに見るものに迫ってくる。外音遮断性の高いヘッドホンをつけて見たい映画だ。
手話の会話は、会話もなく、音楽もなく、自然音と手や体の動きの音が聞こえる。
「このどうしようもなく平凡な世界が、突然輝くような素晴らしい場所になり、全ての怖れがなくなった時。そこは決して君を見捨てない。」
「朝早く起きて、一人でただ座ること。もしもただ座っていることができなくなったら言葉を紙に書くこと。何を書いても良い。誰も読まない。」
「静寂の瞬間を見つけることができたか。」
「ここにいるもの全ては一つの信念を共有している。耳が聞こえないということは障害ではなく、治すものではない。ということだ。」
デジタルではなく、35mmフィルムで撮影された映画。
最後のシーンは11分ただルービンが座っているところを撮影したものという。
最後の長い静寂が、失うことでしか手に入れることのできないものは何なのか考えさせられる。