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子どもの手続代理人による合意形成支援

(一社)びじっと・離婚と子ども問題支援センター代表理事の古市理奈と申します。普段は大法寺の副住職を務める身であります。

びじっとは、面会交流支援を行う民間のボランタリー団体になります。

表題にあります、子どもの手続代理人とは、平成25(2013)年から始まった制度です。

どのような制度かといいますと、調停又は審判において、子どもの代理人となる弁護士が裁判官により選任されることがあり、この、子どものための代理人を「子どもの手続代理人」と呼ばれます。

以下、厚生労働省の研究結果から抜粋してみます。

【子どもの手続代理人の役割】

① 子どものための主張及び立証活動
② 情報提供や相談に乗ることを通じて、子どもの手続に関する意思形成を援助すること
③ 子どもの利益に適う合意による解決の促進
④ 不適切な養育等に関する対応


【子どもの手続代理人制度の利用が有用な事案の類型】

① 事件を申し立て、又は手続に参加した子どもが、自ら手続行為をすることが実質的に困難であり、
その手続追行上の利益を実効的なものとする必要がある事案
② 子どもの言動が対応者や場面によって異なると思われる事案
③ 家裁調査官による調査の実施ができない事案
④ 子どもの意思に反した結論が見込まれるなど、子どもに対する踏み込んだ情報提供や相談に乗るこ
とが必要と思われる事案
⑤ 子どもの利益に適う合意による解決を促進するために、子どもの立場からの提案が有益であると思
われる事案
⑥ その他子どもの手続代理人を選任しなければ手続に関連した子どもの利益が十分確保されないおそ
れがある事案

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000183777.pdf
子どもの手続代理人による合意形成支援

ア 子どもの「真意」について

面会交流の事案においては、同居親は、子どもが別居親と会いたくないと言っていると主張し、別居
親は、それは同居親が子どもにそのように言わせているからだと主張することが多い。
こうした争いにおいては、子どもの「真意」がどこにあるのかが問題とされる。
そして、同居親は、どれだけ子どもが別居親と会いたくないと言っていると主張しても信じてもらえ
ないと感じ、子どもの手続代理人を通じて子どもの「真意」を主張してもらいたいと考える。
他方、別居親も、自ら子どもと会って確かめることができないため、子どもの手続代理人を通じて
子どもの「真意」を知りたいと考える。このようニーズのもとに子どもの手続代理人の選任が検討さ
れる。

しかし、「子どもの真意を聴き出す」というアプローチの仕方は、子どもの手続代理人の役割論から
すると、いささか疑問がある。
そもそも、子どもの手続代理人は子どもの代理人であって、子どもの手続行為を代理することが本質
的な役割である(「有用な類型」の役割1)。
その役割を果たすために、手続の進行に応じて子どもと打ち合わせをし、子どもが置かれている状況
について客観的に説明をしたうえで、依頼者である子どもの意思を正確に把握しなければならないこ
とは当然である。しかしそれは、偽りの言葉の裏に隠れた「真意」を聴き出そうとするような活動で
はない。あくまで主体は子どもであり、子どもの意思に寄り添うことが求められる。

また、子どもとの打合せは、継続的かつ相互的な関わりである。情報提供や相談に乗ることを通じて
意思形成を援助することもある(「有用な類型」の役割2)。
その意味では、子どもの「真意」といっても、その時々で変わり得るものであり、子どもの手続代理
人は、その都度それに応じた活動を展開することとなる。

さらに、子どもの手続代理人は、子どもの利益に適う合意による解決を促進するために、父母に対す
る働きかけをする場合もある(「有用な類型」の役割3)。たとえば、子どもが口には出せないが同
居親の強い影響下に置かれていることが分かれば、その心情に配慮しつつ、同居親に対して必要な働
きかけをするだろう。

また、別居親に改善してもらうべき点があるならば、別居親に改善を求めつつ、子どもに対しては
面会を後押しするような前向きな働きかけをするだろう。あるいは、子どもの状態が面会の実施に耐
えられないものであれば、面会の制限について提案することもある。
このように、子どもの手続代理人の関わりは、ある意味で創造的な作業であり、どこかにあるはずの
子どもの「真意」を探求するというものではない。
    
こうした子どもの手続代理人の活動のスタンスは、必ずしも、子どもの「真意」を知りたいという当
初の父母のニーズに応えるものではないかもしれない。しかし、それとは位相の異なるニーズ、つま
り子どもの利益に適う合意による紛争解決というニーズに応えるべく、子どもの手続代理人は尽力し
ているといえるだろう。

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000183777.pdf

平成25(2013)年に『子どもの手続代理人制度』がスタートしたことは、知っておりましたが、実際にはどのように運用されているのかが分かりませんでした。

本日の面会交流支援勉強会(主催:二宮周平立命館大学教授)において、子どもの手続代理人制度について学ぶことが出来ましたので、早速、こうしてnoteにしたためてみました。

この制度、スタートしてから今年の令和3(2021)年で8年目を迎えますが、家庭裁判所での実用は浸透していないようです。厚生労働省の研究結果にも以下のように書かれています。

面会交流の調停や審判で、子どもの手続代理人が選任されたケースは未だ少ないようだ。
もっとも、離婚調停で親権が争われているケースや、監護者指定の調停などで、面会交流の条件につ
いて話し合うことも多く行われている。むしろ、別居親からすれば、子どもとの面会交流が確保でき
るからこそ、同居親に親権・監護権を譲る余地もあるのであって、面会交流に関する合意の必要性は
高い。
そこで、離婚調停や監護者指定の調停において選任された子どもの手続代理人が、面会交流の合意支
援も行っているというケースは多いように思われる。
    
守秘義務の関係上、具体的事例が公表されることは少ないが、子どもの手続代理人が子どもの声を聴
き、それらを父母に伝えることにより、面会交流の実施又は制限に関して、あるいは実施する場合の
条件等について、父母間の合意形成を支援したとの報告もなされている。
    
なお、監護親の変更及び面会交流条件の調整を申立て内容とする ADR 事例では、子ども2人にそれ
ぞれ別の子ども代理人が就き、子どもの意見や監護の状況を関係者に伝え、一定の合意形成に貢献し
た【ADR 事例2】。

​厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000183777.pdf

なるほど。家庭裁判所では子どもの手続代理人に関して、選任されたケースは少ないようですね。ここで注目すべきは、ADRの文字があること。家庭裁判所において実務運用がされていないのであれば、裁判外紛争解決ADRにおいて、活用していけばいいのですね。

びじっとも、法務省から認証を受けたADR機関を持っています。ADRくりあについては、HPをご参照ください。

また、今日は子どものアドボケイトについても学びました。

ADRくりあを利用して、子どもの手続代理人制度を使い、子どもアドボケイトが行われていくことを目指します。

本日の研究会については、アメブロにて簡単に書かせて頂きました。

本日もお疲れさまでした。有難うございました。




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