【鉄道バス共通パス実証実験体験レポート】路線バスと鉄道を両方使えたら通勤に使えるかどうか試してみた。
先日、JR因美線と若桜鉄道、日本交通路線バス若桜線の共通パスの実証実験についてnote記事を書きました。
その実証実験が2022年10月10日〜12月30日の期間で実施されました。
私はこの期間にこの実証実験を成功させるためのイベント「鳥取の公共交通存続アクション2022」を開催することを決めたこともあって早めに一度は体験しておこうと最初のイベント直前の11月14日(月)から5日間のパスを購入して「路線バスと鉄道を両方使えたら通勤に使えるのか?」について確認するために公共交通通勤を体験してみました。
その後、忘年会で公共交通を使うタイミングで12月11日(日)から5日間と、2回目のイベントの取材に合わせた公共交通通勤の取材のために12月19日(月)から5日間、合計15日間のパスを購入してしっかりと体験しました。
その体験レポートを書いておきます。
僕が体験した結論は「僕の場合は通勤に使える」
この結論に至ったのは、私の住む場所が比較的バスと鉄道の両方を使いやすい条件であったことと、今回実証実験に参加して体験した気づきからでした。
若桜鉄道の隼駅までと国道29号線の日本交通のバス停までのどちらも1キロ以内で徒歩10分以内という場所に住んでいるのは立地的には恵まれていると思います。この実証実験の効果が得られるのはこのエリアの中でどの程度かは分析しておく必要があると思います。
今回の実証実験での気づきについては、ここで実証実験を成功させるためのイベント「鳥取の公共交通存続アクション2022」用に作成した資料のスライドを使って説明します。
気づきポイント(よかったこと)
歩くスピードで景色を楽しむことができる
・毎日違う朝の風景をゆっくり見ることができる
・夜空のキレイさに気づくことができる
歩数が増えて運動になる
・時間はかかるけど歩いてるので運動になる
公共交通での通勤はバス停から徒歩となるため効率が悪いように思えます。ただ、歩くことは自動車だけでの移動ではわざわざ意識して行わないとできませんが、公共交通での通勤ではいつもの通勤の中で十分な歩く時間が確保できます。
iPhoneのフィットネスアプリに残っている歩数のデータでは、
自動車通勤の日の歩数は3,000〜7,000歩
公共交通通勤の日の歩数は10,000〜16,000歩
と2倍以上でした。(ランニングした日のデータは除く)
公共交通での通勤は健康にも効果があると思います。
結果的に財政の改善にも効果があるはずです。
運転しないのでお酒を飲んで帰れる
・運動量が増えることで罪悪感も減る
仕事の後に布勢まで走って行って駅まで走って戻ることもありました。隙間時間が運動時間になって走ったら罪悪感がない分、飲んで帰る気持ちにもなりやすいです。結局モニター返金分の何倍もまちに落として帰ることになりました。
学びの時間が増える
・本は意外と読み進めることができる
・夜のバスの中は意外と明るくて本が読める
バスに乗っている時はいつも本を読んでいました。夜のバスの中はけっこう明るいので帰りも本を読み進めることができて、5日間で1.5冊読むことができました。
早起きはしましたが、学びのために早起きしたと思えば時間の有効利用ですね。
最初に読んだのは「車を捨ててこそ地方は蘇る」
データを元に車社会の影響について以下のようなことが書かれていました。
・まちに車がいると緊張感や恐怖感で楽しさや笑顔が減ってしまう。
・車で移動することでおしゃれをしない人が増えている
・車で移動することが多いと子どもの社会性が育たない
公共交通移動では人に会うことが増える
・登校中の小学生やまちの人とあいさつできる
バス停から勤務先までの細い道は小学生の通学路です。小学生や見守りの警察の方にあいさつすることもありました。
・駅を利用している人や駅で活動している人に会える
駅そ利用していると同じように利用されている人や駅で活動される人に会うこともあります。最終日の帰りには隼駅の照明のテストをしていた隼駅を守る会のメンバーに会いました。最終のひとつ前が着いてから最終が車でいろいろな話をすることができました。楽しいひとときでした。偶然の出会いもいいものです。
時間の使い方が上手になる
・朝型の生活になる
朝型の生活にして朝の学びを取り入れようと考えていましたが、全然できていませんでした。
それとは関係なく公共交通での通勤を試してみたところ、朝早く起きる必要があることと通勤中に本を読むことができることで結果的に朝型の生活になって学ぶこともできていました。
・残業をキリよくやめられるようになる
車で通勤をしていると残業を止める時間をあまり考えていませんでした。バスの時間があるとそこまでにキリよく終われるように考えるようになりました。
・寄り道をしなくなる(無駄遣いも減る)
バスに乗る時間に合わせて仕事を終えると、そのままバスに乗って帰ります。
買い物などに寄り道できないというデメリットも聞きますが、僕の場合は寄り道せずに帰ることができることはメリットと感じました。車通勤の場合はついコンビニに寄って何か買って帰ることも多いですが、どこかに寄ることがないと最小限の時間で帰れますし、無駄遣いすることもありません。
運転しないとストレスがかなり減る
・常に集中する必要がない
車通勤で運転している場合は安全のために常に集中している必要があります。
雨が降っている時や夜はとくにそうですし、雪道では更に神経を使います。
公共交通での通勤の場合は、窓の外の風景を見ることができますし、疲れて目を閉じても大丈夫なので、ストレスがとても少ないです。
・逆に車を見てストレスを感じるようになる
車に乗らずに歩いていると自動車の存在によってストレスや恐怖を感じることがありました。バス停から勤務先への小学生も歩いている細い道では車がいいスピードで走っています。ぶつからなきゃいいと思っているようで身体すれすれを通過数ることも多いです。大人の僕でも怖いので小学生は慣れているか我慢していると思います。通学時間帯は通行止めにするのが正常な判断だと思います。
・久しぶりに通勤時間に運転すると少し怖い
公共交通通勤をした次の週に通勤で車に乗ると少し怖さを感じました。運転に慣れて感じなくなっていたと思われます。本来自動車は危険な乗り物です。デジタルデトックスではありませんが、それを思い出すことができるように一定期間離れることを義務づけるのもいいと思います。
気づきポイント(気になったこと)
バスネットのサイトは使いにくい
バス停に貼られているステッカーには「バスが今どこを走っているかわかる」と一番大きい文字で書かれているので、このQRコードを読めばすぐにわかるのだろうと思って接続しましたが、最初に出てきた画面からバスの走っている場所を見るにはどうしたらいいかとてもわかりにくかったです。なんとかバスの現在位置を表示しても最初に中部が表示されるので、わざわざ二本指を駆使して東部の自分のいる場所に移動させないといけません。できれば各バス停のQRコードを読めばそのままそのバス停付近の運行中のバスを表示できるようにして欲しいですね。
朝のバスの時刻表は当てにならない
会社の最寄りのバス停には7時40分に着く予定でしたが、初日のその時間にはバスはまだまだ手前にいました。遅刻するんじゃないかとビクビクしていましたが、結局10分遅れの7時50分頃に到着しました。遅れることなく会社に到着することができましたが、バスは日常的に遅れがあるのが最大のハードルだと思いました。
アプリでパスを表示するのに時間がかかる
アプリでパスを表示するのに約30秒かかります。その間に操作が5〜6回あります。降りる直前で気づいて降りようとした時は間に合わない可能性があると思いました。実際に間に合わなかったと知人は言っていました。利用期間中のパスがあれば起動時にパスを表示して欲しいと思いました。
気づきポイント(考えたこと)
服を選ぶのを少し考える
自動車通勤の場合は家からすぐに車に乗って会社に行って
会社についたらすぐに更衣室で制服に着替えるので服に気を遣いません。
公共交通に乗ることは身なりに気をつけることにつながると思います。
荷物を最小限にするのも考える
持ち歩けるバッグに入るものを選ぶのがたいへんでした。そのために使ってなかった小さな財布を使い始めました。本は文庫本をひとつだけ選んでバッグに入れるようにしました。
車で出勤する時はあまり考えずに車に持ち込んで出かけています。車の中に載せっぱなしのものもたくさんあることに気づきました。
人の増減がわからないので座ってていいか考える
普段から乗っているわけではないので乗客がどこで増えてどこで減るかがわからず、とりあえず座って様子を見ました。徐々に乗る人が増えますが、郡家駅以外で降りる人はあまりいません。若葉台に入ってぎりぎり立つ人がいるかいないかになって、環境大学のところで何名か降りて少し席が空くって感じでした。
毎日乗ってると乗車客の増減がわかってきました。その後もほぼ毎日同じような感じで、満員になったのは一回、席を譲ったのは一回でした。どのバス停でいつもどんな年齢層が乗ってくるかわかる仕組みがあったら面白いと思いました。
バスの下⾞予約ができたらいいなと思う
本を読んでいて最寄りのバス停で降りるのを忘れたことがありました。次のバス停は信号のある交差点の近くなので、降りるために時間がかかることがあります。
バスの下車を事前に予約できて降りるバス停の前に通知してくれるサービスかアプリがあればいいなと思いました。
視覚障害者にとってバスは必須
視覚障害のある知人から「視覚障害者にとってバスは必須です」というコメントをいただきました。
運転できない人として子供やお年寄りを想定していましたが、それ以外にも運転できない人がいます。運転できない人、運転しないことを選択したい人のために公共交通が選択肢となる状態にしておくことは福祉的、人権的な観点で必要なことだと改めて思いました。
環境という観点でも考えてみる
自動車通勤よりは公共交通での通勤方がCO2排出量を減らすことができます。企業のカーボンニュートラルへの取り組みとして公共交通での通勤を推奨する企業の価値が上がる仕組みをつくることで公共交通で通勤する人を増やせるんじゃないかと思っています。
昨年知り合った高砂市職員さんが考えられた仕組みを教えてもらったのですが、天才だと思いました。市民の脱炭素行動をブロックチェーンの仕組みで地域内通過として使えるポイントという形で可視化することで行動変容を起こそうというもの。これに企業の行動もポイント化して流通させることで社会への貢献度を可視化することで、企業の行動変容も起こすことができる。夢のような仕組みですが、まずは高砂市さんにがんばってもらいましょう。
実証実験に参加して感じた質問
今回鉄道バス共通パス実証実験に参加して以下の質問が出てきました。
・実証実験の主体は県ですか?市や町との関係は?
・想定しているターゲットは?
・広報はどの範囲に行われたのでしょうか?
・県としての成功の基準は?
・実現したら使いたいが、その可能性は?
・乗り継ぎ割引、運行間隔調整の実現可能性は?
この質問については実証実験を成功させるためのイベント「鳥取の公共交通存続アクション2022」で主催屋の一人でもある実証実験の県の担当者の山根さんから回答をいただきました。このイベントのレポートはこの後noteにまとめる予定ですので少しお待ちください。2回のイベントを開催しましたが、かなり価値のあるものになったと思っています。
このまちの未来を生きることもたちのために今年も引き続き動きます❗