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尾道・ひこうき・船、経営、そして漁師のおじさん達

ある経営者との対話と尾道

先日、エネルギー関連の事業を進めている経営者の方と経営戦略について議論する機会を得た。その方は尾道の隣町に住んでおり、話は仕事だけにとどまらず、尾道のことにも及んだ。私自身もかつて尾道に縁があったことを思い出し、私と尾道の間にどんな意味があったのか思ってみた。尾道の風景、食べ物、文化の事は皆さんよくご存じなので少し別視点で書いてみます。

まだ子供心が抜けない大学1年生の確信

私が大学に入学し、一人暮らしを始めたころ、毎日寂しさと開放感の中でさまざまなことを考えていた。その時、なぜか明確な革新的なイメージを持っていた。それはまるで子供の夢のような話だが、「飛行機と船の免許を取る」「アメリカに留学する」「いつか飛行機と船を所有する」というものだった。お金のことも深く考えずに飛行機の練習を始め、時間ができたときに尾道の海技学校への入学手続きを進めていた。尾道がどこにあるのかもよく知らないままだった。

京都から快速で尾道へ向かい、山の上にある学校へ行くためにロープウェイに乗った。自分がどこにいるのかも分からずに進んでいたが、ふと振り返ると、そこにある海、点在する島、そして静かに進む船があった。その景色に驚き、ひとりとぼとぼと歩きながら、胸が高鳴った。

寮生活と漁師のおじさん達

学校の寮に入り、約20人の仲間たちと共同生活を始めた。そのほとんどが先輩で、海の仕事に従事する人々だった。五島列島や北海道の漁師のおじさんたちも居て、私は最年少だったこともあり、ずいぶんかわいがってもらった。毎晩のように、違法操業ギリギリの話や海にまつわるさまざまな話を聞かせてもらった。時には坂を下りて商店街で飲み会を開き、ごちそうになることもあった。魚が嫌いだった私も、ほんとうに美味しい魚料理にびっくりし、「おいしい」と喜んでいると、みんなが嬉しそうに目を細め、大喜びして色々解説してくれ、さらに食べきれない程にどんどん頼んでくれた。

勉強が苦手

当然ながら学校なので試験があった。学科試験、口頭試験、実技試験とさまざまだったが、漁師のおじさんたちは勉強が苦手で、どうしても試験に合格できない人が多かった。試験中にはうなり声が響くこともあった。私は比較的早く回答を終えることができたため、なんとなく解答用紙を見えやすい位置に置いていた。すると、次第に急にみんなの点数が上がり、これはヤバいと思い、夜には「作戦会議」が開かれるようになった。いつの間にか「今度の休みにうまいものを食わせてやる」という話になり、結局、うまいもの談義で盛り上がってしまう。初めて接点のない人々と深く関わり、その時間がほんとうに楽しかった。

マネジメントサイエンス、統合技術

急に難しい話ですが、その後、私はマネジメントサイエンスという分野を深く学ぶことになった。統合技術の一環として、アメリカでは分野を横断して学ぶことの重要性を知った。日本のように文系・理系という区分をするのではなく、コンピューターサイエンスを学ぶ際にも心理学、脳科学、社会学といった異分野を併せて学ぶ必要があるという考え方だ。例えば、AIを開発するには、それ単体の知識だけではなく、人間の思考プロセスや社会システムを理解することが不可欠だ。人間の成長と同じように、脳のいろんな部分を鍛える必要がある。

尾道での経験や、さまざまな人々との出会いが、こうした学びや考え方に少なからず影響を与えているのだろうと思う。
結果として、当時抱いていた確信はある程度実現した。いま飛行機や船を所有しているわけではないが、それ以上にもしかしたら脳のいくつかの場所が鍛えられたかなぁと思うことが出来た。そんなことを考えながら経営の会話が出来た。

先端技術と生活者視点


今回の経営者との議論を通じて、新エネルギーや次世代の先端エネルギー技術について考えを巡らせた。発電、送電、蓄電の最適な運用を考える中で、技術面だけではなく、利用者の視点、生活者の視点を意識する重要性を改めて感じた。ビジネスを推進する上で、耳障りの良いメッセージに終始するのではなく、多角的な視点で議論を進めることが必要だなぁ。

せっかくなので、次回はちょっと難しめに、マネジメント技術やAIのシンボリックシステム、量子などの先端技術や、天才と言われる人たちとの接点について書いていこうかと思います。

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