竈炊飯治郎 第01話 富裕層という異界
このnoteは「竈炊飯治郎」こと赤尾拓哉さんの実話を基に、私こと「ぶにすけ」が面白おかしく盛って書いています。
現在、私(赤尾拓哉)は妻と2人で建築家として設計を生業にしています。独立する前は建築事務所や高級インテリアの店に勤めていたため、いろいろな芸能人やセレブの方々にお会いする機会がありました。特にインテリアのお店にいたときは、六本木という地の利もあって、お家賃が月500万円もするお宅にも伺う機会がありました。
そんなスゴい方のお宅を色々拝見した中で、ひときわ驚かされたのは、あるデザイナーさんのお宅でした。東京湾を展望できるタワーマンションの最上階に住むその方のお部屋は、アルマーニとアンティークの家具でコーディネートされていました。しかもアンティークの家具や絨毯は美術館や博物館にしかないようなものでした。椅子は「黄花梨」という中国では王族しか使うことを許されていなかった材質で、椅子一脚だいたい1000万円以上します。(以前クリスティーズのオークションでは明代の椅子一脚が6千万円で落札されたこともあります。)壁に掛けられてるシルクの絨毯は「ヘレケ」と言う絨毯で、ペルシャ絨毯よりもはるかに高級な、お城とか美術館にしかないものです。黄花梨の家具やヘレケの絨毯は買おうと思っても、買える品物ではありません。売ってないからです。
テーブルの上には200年ぐらい前のビクトリア時代の銀食器が並び、英国王室の金職人だった「ベイトマン」のティーセットが日常生活の一部として使われております。
もう、圧巻です!
今まで相当有名な方のお宅にも伺いましたが、美術館に展示されているような物を普通に使われている方は初めてです。
また食に対するこだわりが凄く、ミシュランの星付きシェフが食事を作りに来るぐらいです。食器もマイセンやヘレンドを普通に使われており、銀食器はフランスの迎賓館であるエリゼ宮で使われているピュイフォルカの「エリゼ」や欧州の王族がよく使われるという「ロワイヤル」でした。ピュイフォルカは現在、唯一フランスで手で作られているシルバーウエアで、フォーク一本でも10万ぐらいしますし、1セットなら1000万円はくだらないでしょう。
そんな食器で普通に毎日食べている方を私は「ダウントン・アビー」でしか見たことがありません!たぶんそれより高級でしょうw
ご自身でデザインされた物も見せていただきました。なかでも圧巻だったのは茶道具です。ティファニーのバッグを作られていた「渡辺竹清」先生とコラボで作られた茶籠はもう身震いしました。これはもう美術品以外ではありません。景徳鎮の香炉、宜興紫砂の急須、実用出来る美術品を富裕層の方のためにデザインされているそうです。
建築でもインテリアでも、日本では良いデザインの物がないと、私も薄々感じていました。職人さんの技術は確かに目を見張る物がありますが、デザイン性のあるものはほとんどありません。自分がサラリーマンの時感じていた不満がふつふつと湧いてきました。そうだ!私が求めていたのはこういう世界だったんだ!私は心の中でそう叫びました。
わたしはどんな下働きでもいいから、デザインのことを教えていただけないかお願いしたのですが・・・
「う〜ん、そういう人はいっぱい来るからなぁ〜」
そうですよね。さあこの続きは次に続きます。