どこからDICOMの学習をはじめるか
DICOM規格は無償であり、アメリカ電機工業会(NEMA; National Electrical Manufacturers Association)が管理するDICOM公式サイトから誰でも確認することができます。
しかし、DICOMはあくまで規格ですから、実用的に用いるには、通常、DICOMに準拠して設計された機器やソフトウェアに触れる必要があります。
以上です(え、うそ~ん)。
実践的な内容を知りたい方はこの先はお読みいただかなくともよいかと存じます。以下、一般的なDICOMな価値についてのポエムです。
現在、数百種類のDICOM製品が市場に出回っており、常に変化を続けながら、ユーザーの関心を集めています。
しかし、DICOM規格の細部は非常に玄人が喜ぶほどに、一般的には難しいところもあるのは事実です。市場に出回っているDICOM製品はベンダーの努力によってDICOM対応が行われていますが、「完全にDICOMに対応していますか?」という質問には、ベンダーは単純に「はい」か「いいえ」で答えることはできません。
実際、この質問は不正確です。
すべてのDICOMデバイスとソフトウェアは、その機能に必要なDICOM標準の特定の部分のみをサポートしています。また、その一方で、DICOMに完全に(ガチガチに)対応したワークフローを、病院で最適化されたワークフローを好む医療現場へ導入することも困難を極めるでしょう。
では、どのようにDICOMを導入し、何を避けるべきなのでしょうか。
まず、基本的なことから説明しましょう。
DICOMとデジタル
私たち人間は、目で物を見るときに、周囲の景色をアナログ的に、つまり連続した形や色合いとして認識しています。一方、コンピュータはデジタルに機能しますから、景色は画像として認識され、画像はピクセル単位で保存、処理されます。
DICOMもその名の通り、デジタル画像のみを扱います。
画像を取得し、デジタル形式に変換することは、DICOMの実装に必要な最初のステップです。現代のすべての医用画像モダリティ(X線撮影、CT、MRI、超音波など)は、デジタル画像出力が可能です。これらの機器は、その性質上、常にデジタルで画像を取得しているものもあれば、技術の進歩に伴ってデジタル化回路が追加されていくものと考えてよいでしょう。
しかし、DICOMはデジタルであることを意味しますが、デジタルがDICOMを保証するわけではありません。例えば、DICOMに対応していないデジタル医用画像処理装置を購入することも十分にあり得るのです。
かといって、自前のカメラやスマホでDICOM画像を作っていると思っている人はいないと思います。
すでに本連載で解説したように、すべてのDICOM機器にはDICOM Conformance Statement(DICOM適合性宣言書)が付属しています。医療用画像処理装置でDICOMを使用できるかどうかは、これを見て知ることができます。
Conformance Statementは、多くの場合、機器のユーザーマニュアルよりも重要であり、機器がサポートするDICOM機能の概要を示すために機器メーカーから提供されるべきものです。このため、このステートメントには、デバイスの機能に関する誤りや誤った推測の余地を残さないことが期待されます(開発側には大変なプレッシャーです)。ステートメントを提供されたユーザーは、これを、かの神獣のように崇めることができるわけです。
DICOM関連のデバイスやソフトウェアのインストールを計画または実行するときは、常に神獣を呼び起こす必要があります。ない場合には、常にベンダーに要求し、自分の所望のワークフローを実現するための機能を持っていることを確認しなければなりません。
同じデバイスやソフトウェアであっても、さまざまなリビジョンがあります。バージョンごと神獣もアップデートされる必要があります(なにか買い替えるときなどに、賢くアップグレードしましょう)。
DICOMレディへの対価
医用画像処理に関するニーズを明らかにし、なんらかのDICOM製品を購入する準備が整ったとします。見積書にサインする前に知っておくべきことはあるでしょうか。
DICOM対応の機器やソフトウェアを購入することを、高級なレストランで夕食をいただくことに例えて考えてみたいと思います。
シェフ(機器ベンダー)は、私に素晴らしいメイン料理(機器)と、豪華なデザート(DICOM機能全体)を提供しようと提案してくれます。
このとき、ドケチな私は、予算の節約のために、デザートをパスすることを考え、メインのみを注文したとします。そして、最後に間違いに気が付くのでしょう。付き添いの女性から「女性の楽しみに気が付かないなんて最低な男ね。さようなら。」と指摘されて。
多くの人たちが、このような間違いを犯す可能性があります。可能性というのは、少しでも費用を節約するために、オプションとして提示されているものをスキップし、本当に必要なものを注文できず、結局は後悔することになる可能性です。
今となっては、DICOMを搭載していないDICOMデバイスはほとんど役割を果たせないでしょう(臨床ではどうしても非DICOMなデバイスが必要なこともありますが、それはそれとして)。しかし、あまりDICOMを知らない人からすれば、なぜDICOMデバイスの追加オプションとしてDICOM対応にお金を払わなければならないのかと疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしません。
しかし、無意味と感じる人にはそうかもしれませんが、機器メーカーにとっては無意味ではありません。このパラドックスを理解するために、前節の内容が役立ちます。
現在の医療用画像装置はすべてデジタルですが、必ずしも DICOMを備えているわけではありません。
メーカーは、デジタル画像の取得、保存、および表示用に独自のプロトコルを実装することができます。独自のプロトコルは、同じメーカーの他のユニットに接続することも可能でしょう。メーカーが独自のプロトコルを使用する場合、利便性と巧みなマーケティングが実現できそうでうよね(弊社にしかない技術です!と)。マーケティングも展開しやすいでしょう。独自規格の場合、メーカーに依存することになるため、他のベンダーの機器やソフトウェアに接続することはできなくすればいいわけです。
しかし、独自のプロトコルは、言い換えれば、メーカー依存のプロトコルともいえます。デバイスは期待通りに動作するでしょうが、その小さな独自の殻の中だけでしか動作しません。
これでは、医療現場は困りますよね。別のメーカーの装置とも通信できるようにしてほしい、相互に扱えるようにしてほしいと思うのは私だけでしょうか。
DICOMはその本質において、医用画像データやその通信のための標準です。DICOMにより、さまざまなデバイスが互いに接続できるようにもなります。これを企業側が実装してくれているというわけですね。
要するに、多くの場合、医用画像処理装置やソフトウェアの購入とは別に、デバイスのDICOM対応への企業努力には、オプションとして明示的に示される・示されないに関わらず、援助をした方がWin-Winということです。
前述の例でも、DICOMオプションを購入しておけば、医用画像データの変換、統一性、および標準フォーマットでのデータのI/Oやその他処理機能が利用できることになります。長い目でみてみようとすれば、対価を支払う価値は、ここにあるのではないでしょうか。
Stay Visionary
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