【論文紹介】治療効果のある抗体によるSARS-CoV-2とSARS-CoVの中和に関する構造的な基盤について
Structural basis for neutralization of SARS-CoV-2 and SARS-CoV by a potent therapeutic antibody
SARS-CoVとSARS-CoV-2の両者に中和活性を持つ抗体のエピトープ解析についての研究を紹介します。
論文内容
以前の研究から、SARS-CoV-2とレセプター(ACE2)との結合にはウイルスの構造タンパク質の一つであるスパイクタンパク質のレセプター結合領域(RDB)がUp型という開いた構造になる必要があることが判明しており、Up 型の時にだけ現れる隠れたエピトープがあることも確認されています。
今回、筆者らが新たに発見したCoV, CoV-2の両方に中和活性を持つ抗体のエピトープは、RBD中のレセプター結合モチーフ(RBM)に直接結合するものではなく、RBMの周辺の両者のウイルスで比較的保存された領域に結合していることが判明しました。
記事作成者コメント
RBMのアミノ酸配列は両者のウイルスで大きく異なるため、そこを避けつつも付近の領域に結合することでCoVとCoV-2に交差的に中和できるというのではないかという考察が面白かったです。また、この抗体はウイルスと細胞が吸着した後からでもある程度の中和活性を持つという点も興味深かったので、ぜひ原文も読んでみてください!
(図)CoV-2のSタンパク質(赤と赤紫)がレセプターACE2(青)に結合しているイラスト
Molecule of the Month © David S. Goodsell and RCSB PDB
PDBj入門 | 今月の分子 | SARSコロナウイルス2型 スパイク
https://numon.pdbj.org/mom/246?l=en より
引用:Lv, Zhe, Yong-Qiang Deng, Qing Ye, Lei Cao, Chun-Yun Sun, Changfa Fan, Weijin Huang, et al. 2020. “Structural Basis for Neutralization of SARS-CoV-2 and SARS-CoV by a Potent Therapeutic Antibody.” Science 369 (6510): 1505–9.
http://doi.org/10.1126/science.abc5881
編集:ウイルス学若手ネットワーク 藤田滋
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